デザイナーベビーとは何だろう?

 デザイナーベビー(Designer baby)とは、受精卵の段階で遺伝子操作を行うことによって、親が望む外見や体力・知力等を持たせた子供の総称。親がその子供の特徴をまるでデザインするかのようであるためそう呼ばれる。

 デザイナーベビーは、遺伝子を選択して目や髪の色といった、特定の身体的特徴を持つ子供の生まれる確率を上げる技術的アイデアである。1990年代から受精卵の遺伝子操作は遺伝的疾病を回避することを主目的に論じられてきたが、親の「より優れた子供を」「思いどおりの子供を」という欲求に従い、外見的特長や知力・体力に関する遺伝子操作も論じられるようになってきた。

 一方で、子どもが特定の性質を持つように事前に遺伝子を設計することは、技術的にも倫理的にも強く問題視されている。北里大学医学部臨床遺伝学教授の高田史男は「身長や知能など親の”パーフェクトベビー願望”をかなえる検査が、ビジネスの世界で歯止めなく広がるのは危険だ。生活習慣病やがんなどのリスクは確定的なものではなく、多数の遺伝と環境因子が関わるという理解が必要だ」と懸念を示している。

 デザイナーベビーの歴史

 遺伝子研究の進歩が目覚しい。今では遺伝子検査で唾液に含まれる遺伝情報を検査して、疾患リスクなどを評価する遺伝子キットは、さまざまなものが市販されている。2013年には母体の血液を使って、胎児の遺伝情報を知ることができるようになった。母子に危険性のある羊水検査をする必要もなくなりつつある。

 胎児の遺伝子を調べることによって、産まれてくる前の性別や、遺伝病を知ることができる。遺伝病は遺伝子に異常があると起きる病気である。色覚異常,血友病,フェニルケトン尿症、ダウン症などは遺伝病としてよく知られている。

 デザイナー・ベビーとは、望みどおりの特徴をもった子供を産み出そうとする生殖技術やそれによって産み出された子供のこと。将来は、親が望んだ外見・知力・体力などを備えた子供を得ることが可能になると言われている。

 これまでは、遺伝病を出産前に調査する程度のことしかできまなかったが、1978年に試験管ベビー(体外受精)が実現したことや、遺伝子の診断技術(着床前診断と出生前診断)が進歩したことで、状況は大きく変わった。

 試験管ベビーの例としては、2003年11月、タレント・向井亜紀と、元格闘家でタレントの高田延彦との間に試験管ベビーがつくられ、代理出産で双子の男児が産まれたことが話題になった。日本では代理母は認められていないので、認可されている米国に渡った。代理母は米ネバダ州の女性で、向井夫妻にとっては、3度目の代理母挑戦であった。

 今では体外で受精し母体に受精卵を入れる前に遺伝情報を検査する(着床前診断)ことも可能になっている。臓器移植のドナーを目的にした体外受精による、兄弟の出産(救世主兄弟)も実例がある。最近では「遺伝子編集」という方法が確立され、遺伝子を直接操作することで好みの特徴を持った子をつくることが可能になった。

 これまでは、遺伝子調査による遺伝病予防や男女の産み分けのためのデザイナーベビーだったが、青い目を持つ子、背の高い子、鼻の高い子、二重まぶたの子、運動能力や芸術的才能を持つ子など、文字通りのデザイナーベビーを誕生させることが可能になった。

 現に中国では2018年11月、南方科技大学はの賀準教授は、世界で初めてゲノムを編集した赤ちゃんを作り出したと主張し、世界に衝撃を与えた。賀准教授は、HIV(エイズウイルス)に感染しないよう遺伝情報を書き換えた双子の女の子が産まれたと主張している。

 賀准教授が主張するような遺伝子編集は、中国を含めてほとんどの国で禁止されているが、今後もこのような問題が出てくる可能性がある。

 デザイナーベビーのメリットは?

1.遺伝病をもって産まれてくるリスクを下げること。
2.姿や能力について、好みの特徴を持った子を得ることができる。
3.姿や能力について、嫌いな特徴を排除することができる。
4.兄弟間での臓器移植ドナーや特殊な血液型の輸血ができる。(救世主兄弟)
5.社会にとっても有能な資質や能力を持った子が産まれることは有益である。

 デザイナーベビーのデメリットは?

1.親の好みや都合で子供を選別することに問題がある。
2.そもそも遺伝子の改変はすべきでない。
3.障碍を持った子が差別されたり、デザイナー・ベビーが特別扱いされたり、社会のなかで差別が起きる。
4.高価な技術になると、これを利用できるものとできない者との間で格差が広がってしまう。
5.子供の意志や人権を無視しているのではないか。

 “デザイナーベビーを認めるか?“考えてみよう

1.デザイナーベビーに賛成か?また、賛成だとしたら遺伝子の改変をどこまで認めるか?
 次のA~Eから、現時点であてはまるものを選んでみよう。

A「賛成・遺伝子編集も遺伝子選択も制限なし」
B「賛成・遺伝子編集は一部に限定する」            
C「賛成・遺伝子編集は認めないが遺伝子選択は可」
D「反対・遺伝子編集も遺伝子選択も認めない」          
E「その他」

2.デザイナーベビーの問題は私たちがどんな未来社会を選択するかにかかわってくる。自分が望む未来の姿を考えよう。また、その理由は?

 デザイナーベビー、報道された事例

 2013年9月24日、アメリカ合衆国の個人向け遺伝子解析大手企業である「23アンドミー(英語版)」の「デザイナーベイビー」につながる自分と、精子や卵子の提供候補者ごとに遺伝情報を解析して、望み通りの子どもが生まれる確度を予測するシステムがアメリカ特許商標庁に認められた。

 同社はGoogleの共同設立者らが出資。2007年から、唾液に含まれるDNAの遺伝子配列のわずかな違いを分析して、アルツハイマー病や糖尿病など約120の病気のリスクのほか、目の色や筋肉のタイプなど計250項目を判定する事業を展開している。2013年時点で、価格は99ドル(約1万円)で、利用者は50ヵ国以上、日本人を含め40万人を超えている。

 2015年2月24日、イギリスの議会上院が、母系遺伝であるミトコンドリア遺伝子の異常による疾患であるMELASの治療のために、ミトコンドリアDNAに異常のある女性の受精卵から核を取り出し、正常なミトコンドリアDNAを持つ女性の脱核した卵子に移植するという手法で、3人の遺伝子をもつ受精卵を誕生させ、MELASの子供への遺伝を防止する技術を承認した。この治療法は、ミトコンドリア脳筋症の根治的治療法として期待される一方で、英国上院での審議では「デザイナーベビー」につながるとの倫理上の懸念から反対意見や慎重論が根強かった。

 2015年4月、中華人民共和国でゲノム編集を用いて世界初のヒト受精卵の遺伝子操作を行った研究が国際的に物議を醸した。2018年11月27日には中国の南方科技大学の賀建奎(英語版)副教授はゲノム編集によって双子の1人を1対の両方の遺伝子を改変し、もう1人は片方の遺伝子のみ操作して後天性免疫不全症候群(AIDS)に耐性を持たせた女児「露露と娜娜(ルルとナナ)(英語版)」の出産を発表した。

 中国当局の調査で事実と認定され、アメリカの著名な科学者や中国政府には賀に資金面や研究面で協力したとする疑惑も持ち上がった。さらに賀は同様の遺伝子操作が脳機能と認知能力の強化をもたらしたとする動物実験に言及していたことから人間強化の一種である知能増幅を行った可能性も懸念された。

 これを受けて世界保健機関(WHO)はゲノム編集の国際基準を作成するための専門家委員会設置に動き、日本医師会や日本医学会のような日本や各国の学会も非難するなど「世界初のデザイナーベビー」であるとして世界的な波紋を呼んだ。

参考 CNNnews: https://www.cnn.co.jp/photo/l/676122.html

   

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