体を守るしくみ「免疫」とは何か?

 体内に侵入した細菌やウイルス、それらに感染した細胞(抗原とはこれらすべての総称)と結合するものを抗体という。免疫グロブリンとも呼ばれるこの物質が抗原と結びつくと白血球やマクロファージが働き、免疫作用が生じる。

 例えば、不法侵入者についたマーキング(抗体)がガードマン(白血球やマクロファージ)によって排斥されるようなメカニズムである。

 リンパ球のB細胞から生産される抗体には数多くの種類がある。これはひとつの種類の抗体が、ひとつの抗原にしか対応できないためだ。

 人の抗体はの種類は個体差が多く、場合によっては数億種類に及ぶ、重鎖の定常領域の違いから、大きく5種類に分類される。いずれもタンパク質とアミノ酸が糖鎖で結合した糖タンパク質である。

 抗体の化学構造の解明が進み、それらのメカニズムが判明するにしたがい、大きな期待が高まっていく。特定の抗原を標的とした抗体を疾病の治療に使えば、十分な効果が期待できると同時に、副作用を減らすことが可能となるからだ。こうした抗体医薬の臨床実験も実施されるようになってきている。

 ちなみに、抗体という一般的な名称のほか、この物質は免疫グロブリンと称される。エデルマンは免疫グロブリン、つまり物質としての抗体構造を明らかにした。

 ポーターはパパインという酵素を使って免疫グロブリンを分割させることで、この分野の研究に貢献した。また、血液中の免疫グロブリンと細胞膜がどのように反応するかを解明した。

 ジェラルド・モーリス・エデルマン

 ジェラルド・モーリス・エデルマン(Gerald Maurice Edelman、1929年7月1日 - 2014年5月17日)は、ニューヨーククイーンズ出身のアメリカ合衆国の生物学者。抗体分子の一次構造及び二次構造の解明により、1972年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。 

 1954年ペンシルバニア大学医学部を卒業医学博士号を取得する。1957年ロックフェラー大学に移籍。1960年には、理学博士号を取得する。

 抗体タンパク質化学構造解析を行った。抗体の主成分である血清中のガンマ・グロブリンの中から、特にヒト骨髄腫タンパク質を精製。一時構造の決定に成功した。アミノ酸配列の遺伝子による支配関係を明らかにし、生体の抗体生産機構に関する仮説を提唱した。

 エデルマンは、Bright Air、Brilliant Fire、Wider than the Skyという、心の理論を扱った三部作で有名である。局所生物学では、胚の成長の過程で新生児の大脳の神経ネットワークが形成されていく過程についての理論も扱っている。

 神経ダーウィニズムでは、周囲の環境に対する神経ネットワークの応答の柔軟性を持つという考えに基づいた記憶の理論も扱っている。 

 エデルマンは、我々が心の機能や脳に関するモデルを構築する努力をするべきかという問題を投げかけた。エデルマンの答えは、我々は脳にかんするモデルを作り、それらが周囲の環境とどう関係するかに注意をはらうべきだというものだった。

 彼はクオリアの存在を認め、それを彼の心の理論の中に取り入れた。簡単に言えば、クオリアとは「感じ」のことである。「イチゴのあの赤い感じ」、「空のあの青々とした感じ」、「二日酔いで頭がズキズキ痛むあの感じ」、「面白い映画を見ている時のワクワクするあの感じ」といった、主観的に体験される様々な質のことである。彼のクオリアの定義は、ダニエル・デネットによって批判された機能を持たない特殊なクオリアによる矛盾を回避したものだった。

 エデルマンは、彼の免疫系の研究に基づいた、意識に関する生物学的な理論を打ちたて、その中でダーウィンの自然選択説やダーウィン主義者の人口動態の理論を位置づけた。

 エデルマンは、サンディエゴにある神経科学研究所の設立者であり、スクリプス研究所の神経科学の教授を務めている。1965年イーライリリー生物化学賞受賞。

 彼の息子のエリック・エデルマンは、ニューヨーク在住の画家である。娘のジュディス・エデルマンはブルーグラスの音楽家である。

 ロドニー・ロバート・ポーター

 ロドニー・ロバート・ポーターはイングランドのランカシャー、セント・ヘレンズ(現在はマージーサイドに属す)の町に生まれ、1939年にリバプール大学より生化学の学士号を、1948年にケンブリッジ大学より博士号を取得した。

 1948年頃ポーターは抗体の研究を始めた。K.ランドシュタイナーの「血清反応の特異性」に興味を持ち、特に目的とする抗体を取り出すためクロマトグラフィーを使用した。

 1958年から1959年にかけてタンパク質分解酵素パパインによる抗体の分解を研究。ウサギの抗体が3つの断片に分解されることを発見した。1962年にはガンマ・グロブリンの分子構造を解明。1969年までにガンマグロブリンが1300個以上のアミノ酸からできていることを解明した。

 1949年から1960年までの11年間、国立医学研究所で働き、その後ロンドン大学のセントメアリーズ病院に移って免疫学の教授になった。1964年王立協会フェロー選出。1967年にはオックスフォード大学の生化学の教授になった。

 抗体の正確な化学構造を明らかにした研究により、ポーターはジェラルド・モーリス・エデルマンとともに1972年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。彼はパパインと呼ばれる酵素を用いて免疫グロブリンを小片に分割し、研究しやすくした。また、血液中の免疫グロブリンが細胞表面とどう反応するかも明らかにした。

 残念なことに、ハンプシャーのウィンチェスターで交通事故に合い、妻と5人の子供を残してこの世を去った。

受賞歴
1966年 ガードナー国際賞
1968年 カール・ラントシュタイナー記念賞
1972年 ノーベル生理学・医学賞
1973年 ロイヤル・メダル
1983年 コプリ・メダル

 抗体とは何か?

 抗体(antibody)とは、リンパ球のうちB細胞の産生する糖タンパク分子で、特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して結合する働きをもつ。

 抗体は主に血液中や体液中に存在し、例えば、体内に侵入してきた細菌やウイルス、微生物に感染した細胞を抗原として認識して結合する。

 抗体が抗原へ結合すると、その抗原と抗体の複合体を白血球やマクロファージといった食細胞が認識・貪食して体内から除去するように働いたり、リンパ球などの免疫細胞が結合して免疫反応を引き起こしたりする。

 これらの働きを通じ、脊椎動物の感染防御機構において重要な役割を担っている(無脊椎動物は抗体を産生しない)。

 1種類のB細胞は1種類の抗体しか作れないうえ、1種類の抗体は1種類の抗原しか認識できないため、ヒト体内では数百万〜数億種類といった単位のB細胞がそれぞれ異なる抗体を作り出し、あらゆる抗原に対処しようとしている。

 「抗体」の名は、抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(めんえきグロブリン、immunoglobulin)と呼ばれ、「Ig(アイジー)」と略される。全ての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)ーグロブリンにあたる。 

 ガンマ・グロブリンとは何か?

 免疫グロブリンG(Immunoglobulin G、IgG)は単量体型の免疫グロブリンで、2つの重鎖γと2つの軽鎖からなっている。それぞれの複合体は2つずつの抗原結合部位を持っている。免疫グロブリンの中では最も数の多いものである。ヒトの血清の免疫グロブリンの75%を占め、体中の血液、組織液に存在する。 

 鳥類のIgGはしばしばIgYと呼ばれ、血清と卵黄の中に見られる。すべての抗体は基本的には同じ構造を持っており、"Y"字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を基本構造としている。

 軽鎖(またはL鎖)にはλ鎖とκ鎖の2種類があり、すべての免疫グロブリンはこのどちらかを持つが、分子量は約25,000で共通である。重鎖(またはH鎖)には、γ鎖、μ鎖、α鎖、δ鎖、ε鎖の、構造の異なる5種類があり、この重鎖の違いによって免疫グロブリンの種類(アイソタイプと呼ぶ)が変わる。分子量は50,000〜77,000である。

 この軽鎖と重鎖がジスルフィド結合(SS結合)で結びついてヘテロダイマーを形成し、さらにこのヘテロダイマーが左右2つジスルフィド結合で結合して "Y"字型のヘテロテトラマーを形成する。2本の軽鎖同士、あるいは2本の重鎖同士は全く同一のポリペプチド鎖である。 

参考 Wikipedia: ロドニー・ロバート・ポーター  ジェラルド・モーリス・エデルマン

  

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