世界自然遺産に登録 奄美大島と徳之島 沖縄本島北部・西表島
7月26日、ユネスコの世界遺産委員会は、鹿児島県の奄美大島と徳之島、それに沖縄県の沖縄本島北部と西表島にある森林などを世界自然遺産に登録した。
沖縄周辺はサンゴ礁の発達した海が美しく、自然が豊かな場所である。中でもイリオモテヤマネコなどが棲む西表島は太古の自然が残されており、私も学生時代たびたび訪れた場所で懐かしい。今回の世界自然遺産登録はうれしい。
それにしても今回の登録地域は奄美大島から西表島までかなり広範囲に広がっているがその理由は何だろうか?また、沖縄本島は全部ではなく北部だけに限定されているのも気になる。
奄美大島と徳之島、それに沖縄本島北部と西表島にあるおよそ4万3000ヘクタールの森林などについて、政府は「アマミノクロウサギ」や「ヤンバルクイナ」、「イリオモテヤマネコ」といった固有の生き物が生息し、生物の多様性が残る貴重な地域だとして、世界自然遺産への登録を目指してきた。国内の世界自然遺産はこれで5件目である。
奄美から西表島まで広範囲に広がった理由
実はこれらの島々、別々の島々でなく琉球諸島(南西諸島)と呼ばれているなかまである。その範囲は、奄美群島、沖縄諸島、宮古列島、八重山列島の全体である。(奄美群島を除く場合もある)
その名の由来は地質学上の成り立ちにある。
今から約1200万年前(新生代中期中新世以前)現在の琉球列島は大陸の東端に位置し、大陸と共通の陸生生物相を有していたと考えられる。
それが 1200万年前~200万年前にかけて(中期中新世~後期中新世〜更新世初期)沖縄トラフが拡大を開始し、大陸と琉球諸島の間が開き始めた。
トカラ海峡、慶良間海裂が形成され、琉球諸島中部(中琉球)と周辺の陸域(九州・北琉球や、南琉球)が分断され、中琉球にアマミノクロウサギ、トゲネズミ類、トカゲモドキ類、ハブ、ハナサキガエル類、サワガニ類などの陸生生物相が隔離された。
約500万年前〜約260万年前(鮮新世)には、南琉球が大陸から分断され、ヤエヤマセマルハコガメやキシノウエトカゲ、サキシマハブ、ハナサキガエル類等の陸生生物が南琉球に隔離されたと考えられている。
約200万年前頃から現代にかけて大陸では中琉球と共通の祖先種をもつ陸生生物が絶滅してゆき、遺存固有な陸生生物相が形成されたと考えられる。
また、気候変動(氷期―間氷期)に伴う海面変化で、近隣の島嶼間で分離・結合が繰り返され、生物の分布が細分化され、中琉球、南琉球のそれぞれで、島嶼間の種分化が進行した。
約9万年前〜5万年前頃イリオモテヤマネコとリュウキュウイノシシは、大陸に最近縁種が分布することから氷期の海面低下で南琉球と大陸の間の距離が極く小さくなった際に、大陸から海を渡って南琉球に侵入してきたと考えられている。
世界自然遺産に登録された基準
暫定リスト記載のための提出文書では、「奄美・琉球」は世界遺産登録基準のうち次の基準を満たすことが認められた。
「生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。」
この地域に分布していて2012年の時点でIUCNレッドリストで絶滅危惧種 (CR・EN・VU) と判定されている分類群としてイリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ、オキナワトゲネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、ケナガネズミ、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ルリカケス、リュウキュウヤマガメ、ヤエヤマセマルハコガメ、クロイワトカゲモドキ、イボイモリ、オキナワイシカワガエルおよびアマミイシカワガエル、コガタハナサキガエルなどが挙げられる。
このうちオキナワトゲネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミは、南西諸島に生息する齧歯類で、かつてはトゲネズミ Tokudaia osimensis 1種のみを認めることが多かったが、2001年以降3種に分類できることが明らかになった。
いずれの種も日本固有種である。もともと1種であったものが、各島に分断された後、独自に進化したものと考えられる。
奄美大島も徳之島も沖縄本島も琉球諸島の一部であり、かつては大陸と地続きであったことがわかる1例である。
参考 朝日新聞 「奄美・沖縄」の登録決定、世界自然遺産国内 5件目
��潟�<�潟��