緊急事態宣言 9月12日まで延長

 政府は8月16日、東京などに31日までの期限で発令中の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期限を、9月12日に延長する方針を固めた。

 東京では今年、3度の宣言が発令され、重点措置も含めれば感染防止を巡る対策が何もない“普通の日”はたった28日。もはや緊急事態が日常となっている。感染力の強いデルタ株への政府の対応が後手に回り、感染者の激増に歯止めがかからない状態だ。

 また、菅首相は16日、新型コロナウイルス感染者の宿泊療養施設となっている東京・高輪の品川プリンスホテルを視察した。同ホテルには、軽症や中等症患者向けに点滴で薬を投与する「抗体カクテル療法」の臨時医療施設が設置されている。

 首相は新型コロナウイルス患者の重症化を防ぐ「抗体カクテル療法」に関し、宿泊療養施設での投与を進める考えを示した。「抗体カクテル療法」とは何だろうか?

 抗体カクテル療法は、新たな治療薬。人工的に作った2種類の抗体を同時に投与する。抗体はウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」に結合し、増殖を防ぐ。

 異なる抗体を投与することで、変異ウイルスにも対応できると期待されている。治験では入院・死亡リスク約70%減少した。厚生労働省は、自宅などで療養する患者も短期入院すれば受けられるよう、東京都など自治体側と調整を進めることになった。

 抗体カクテル療法とは?

 中外製薬が新型コロナウイルスの治療薬として承認申請し、7月厚生労働省が承認した「カシリビマブ」と「イムデビマブ」。これが抗体カクテルの2成分だ。

 抗体医薬と呼ばれるタイプの薬で、人工的に作った2種類の抗体を同時に投与するため「抗体カクテル療法」と呼ばれている。

 2種類が投与されると、ウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」に結合し、増殖を防ぐ。異なる抗体を投与することで、変異ウイルスにも対応できると期待されている。

 去年11月にはアメリカのFDA(食品医薬品局)から緊急使用の許可を受けている。アメリカのトランプ前大統領が以前、入院した際にも使用された。

 中外製薬によると、海外で行われた治験では入院や死亡のリスクをおよそ70%減らすことが確認されている。

 国内で承認の治療薬は他に3種類

 日本国内で新型コロナウイルスの治療薬として承認されているのは、今回の「カシリビマブ」と「イムデビマブ」のほか、3つの薬がある。

 「カシリビマブ」と「イムデビマブ」は、抗体カクテル療法のための医薬品。REGEN-COVの商品名で販売されている、米国のバイオテクノロジー企業のリジェネロン・ファーマシューティカルズ社が開発した実験薬である。

 これは、カシリビマブ(REGN10933)とイムデビマブ(REGN10987)の2つのモノクローナル抗体で構成され、混合して使用する必要がある。2つの抗体を組み合わせることで、逃避変異を防ぐことを目的としている。また合剤としても販売されている。

 「レムデシベル」は、最も早く去年5月に特例承認され、エボラ出血熱の治療薬として開発が進められた抗ウイルス薬。

 当初、対象は原則、人工呼吸器や人工心肺装置をつけている重症患者などに限定されていたが、ことし1月からは肺炎になった中等症の患者にも投与が認められている。

 「デキサメタゾン」は、重度の肺炎やリウマチなどの治療に使われてきた炎症やアレルギーを抑える作用のあるステロイド剤。

 イギリスで行われた臨床試験で重症者の死亡を減らす効果が確認。国内は、抗ウイルス薬のレムデシビルとデキサメタゾンを併用。第1波の後、致死率が大きく下がった要因の1つになったと考えられている。

 「バリシチニブ」は、関節リウマチなどの薬で、炎症を抑える効果がある薬。錠剤で、酸素投与が必要な中等症以上の入院患者に対して、レムデシビルと併用して服用することが条件。

 国際的な臨床試験で「バリシチニブ」と「レムデシビル」を併用すると「レムデシビル」単独と比べて患者が平均で1日早く回復したという。

参考 NHK news:コロナの新治療薬「抗体カクテル療法」