実存した伝説の大陸
歴史の教科書には出ていないが、古代に存在した伝説の大陸としてアトランティス大陸、ムー大陸などがある。
アトランティスはソクラテスがその存在を述べたことで知られている。ムー大陸はインドチベット方面の寺院に残された古い粘土板の記録が根拠になっている。
伝説の大陸は、その他にもレムリア大陸、パシフィス大陸など多数あるが、科学的には現在主流のプレートテクトニクス理論では説明できず。根拠に乏しい。まさに伝説だ。
ところが最近、論文が発表され、科学的にも実在したとされる古代大陸が発見された。その名前は「ジーランディア」。いったいどうしてわかったのだろうか?
ジーランディア(Zealandia)発見の理由
南太平洋に、マオリ語で「テ・リウ・ア・マウイ」と呼ばれる失われた第8の大陸「ジーランディア」が隠れている。
現在、約490万平方キロメートルにおよぶジーランディアの大半が海底下にあり、ニュージーランドの島々は海上に突き出たこの大陸の一部だという。
ジーランディアは最近になってその存在が科学者たちに認められた。これまで知られている中で、最も多くの部分が海中にあり、最も地殻が薄く、最も若い大陸だ。
発見された理由は地中と海中にある岩石の一致である。地殻をつくる花崗岩を主体とした岩石が共通していたからだ。
ニュージーランドで採取された細かい砂粒の中から、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)の小さな結晶を集めて調べることで分かった。
ジルコンは花崗岩に含まれる鉱物の1つで、ウランやトリウムを数百ppmから数千ppm程度含む一方で、鉛はほとんど含まない。 ジルコンに含まれる鉛はほとんどすべてウランやトリウムの放射壊変で生じた鉛である。
ジルコン中のウラン、トリウム、鉛の同位体比を分析することで、高精度の年代測定が可能である。ジルコンの年代を測定することで大陸ができた時代が分かった。
ほとんどの大陸は、クラトン(安定陸塊)と呼ばれる、10億年以上前にできた安定な大陸地殻の上に形成されている。ところが、これまでに見つかっていたジーランディアの大陸地殻は地質学的に新しく、最も古い部分でも約5億年前のものだった。
シーランディアとは何か?
ニュージーランド・ニューカレドニア周辺地域に現存する大陸地殻で、9割以上が海面下にある。
ジーランディアは約1億3000万年前〜8500万年前に南極大陸と分裂し、さらに約8500万年前〜6000万年前にオーストラリア大陸と分裂し、その後そのほとんどが海面下に没したと考えられている。
現在のようにジーランディアがほぼ完全に海面下に沈んだのは約2300万年前と推定されている。
地質学的な証拠が弱いために断言はできないが、論証の結果から当時ジーランディアはその全てが海面下に没したのではないかとも言われる。
現在、ジーランディアの約93%は太平洋に沈んだままになっている。ジーランディアのほとんどが海面上には現れないのは、ジーランディアの下の地殻が一般的な大陸地殻よりも薄いからである。
ジーランディアの地殻の厚さは約20kmほどしかないために、地球のマントルの上では、現在の海水面よりも上に顔を出せるほど高くは浮かび上がることができない。海面上に出た部分としてボールズ・ピラミッドがある。
ジーランディアの面積は、約350万km2である。この面積は、世界最大の島として分類されているグリーンランド(約216万km2)よりも広く、亜大陸の1つであるインド亜大陸(約440万km2)に匹敵し、現在最小の大陸とされるオーストラリア大陸(約900万km2)の4割程度の面積に相当する。
ジーランディアは南北に細長い形状をしており、ジーランディアの北端はニューカレドニア(南緯19度)で、南端はニュージーランドの亜南極諸島(南緯56度)である。
ジーランディアのうち現在の海面上の面積の合計は、湖沼なども含めて286655km2である。このうちニュージーランドが267988km2と全体の約93%を占める。
遠い記憶を蓄積するジルコン
火成岩中に微小な結晶として、ジルコンは地球上で広く産する。風化や変質に強い鉱物なので、砕屑粒子として、砂岩などの堆積岩にも広く見られ、 これをジルコンサンドなどと呼ぶ。
また、それらが変成した岩石にも含まれる。ところで、ジルコニウムは4族元素の1つであり、さらに、同じ4族元素のハフニウムとは金属結合半径やイオン半径が近い。
地球の地殻での濃度はジルコニウムの方が多いものの、ハフニウムも地殻中に存在する。このため、ジルコニウムの一部はハフニウムにより置き換えられ易い。特に、ハフニウムの割合が多い鉱物は、ハフノン(HfSiO4)と呼ばれる。
天然に産出したジルコンは、微量成分として希土類元素や、ウラン、トリウムなどを含む。ウランやトリウムを多く含む場合は、これらの原子核が崩壊した際に発生した放射線による損傷でメタミクト現象が起きている場合がある。
メタミクトは、分子配列が乱れた構造。ジルコンなどの鉱物に見られるが、メタミクト状態のジルコンは加熱によってもとの構造を回復する。
大陸地殻と海洋地殻の違い
大陸としての重要な要素の1つに、岩石の組成がある。ニュージーランドの周囲の海底は、海洋地殻によく見られるマグネシウムや鉄が豊富な岩石ではなく、大陸地殻によく見られるような、シリカを多く含む花崗岩などの岩石からできている。また、この岩石が広がる面積は広大で、周囲の典型的な海洋地殻に比べて著しく厚く、高くなっている。
GNSサイエンスのニック・モーティマー氏が率いる科学者チームは、2017年にこうした点を挙げ、ジーランディアを大陸と呼ぶべきだと提唱した。
だがその一方で、奇妙に思われる点についても言及している。ジーランディアにはクラトンがないように見えたのだ。
「おかしなことです」と米バーモント大学の構造地質学者キース・クレペイス氏は言う。大陸地殻は海洋地殻に比べて浮力が大きいため、表面の岩石をマントル内に戻すプロセスに逆らう傾向がある。
安定した大陸地殻であるクラトンが土台となり、プレートのゆっくりとした運動によって運ばれた島弧などの陸塊が大陸地殻の端に積み上げられ、大陸が成長していくのだ。
これまで、ジーランディアの最古の地殻は、ジーランディアがゴンドワナ大陸の端にあった約5億年前に形成が始まったと考えられていた。
今回の研究では、ニュージーランドの南島とスチュワート島で採取された169のサンプルが調べられた。サンプルには、ターンブル氏のチームが何度も現地に足を運んで採取してきたものと、過去の研究で採取・分析された岩石が含まれ、対象地域の全域を網羅している。
彼らは研究室で岩石サンプルを砕き、密度と磁性によって粒子を選別して、ほぼジルコンの結晶のみからなる細かい砂にした。
ターンブル氏はそこから数千個のジルコンを拾い集めて顕微鏡のスライドにのせ、エポキシ樹脂で固めて表面を研磨し、化学分析に取りかかった。「本当に骨の折れる作業でした」と氏は振り返る。
結晶に秘められた物語
データが蓄積してくると、意外な物語が浮かび上がってきた。分析には、ジルコンの年代だけでなく、溶けてジルコンになる以前の母岩の年代までモデル化できる手法を用いた。
その結果、南島とスチュアート島の東海岸に沿って分布するジルコンは、13億年前に形成された地下の岩石が由来であることがわかったのだ。
当時、地球上のすべての陸塊はゆっくりと衝突に向かっており、最終的にはロディニアという超大陸が形成された。
研究チームは、こうした地球規模の陸塊の衝突と分裂の過程でできたマグマポケットが、やがて、現在のニュージーランドの地下深くにある古い岩石となったのではないかと提案する。
ジーランディアは、こうしてできた安定陸塊クラトンの断片の上に形成されたことになる。
ジルコンには、ジーランディアが親の超大陸から分離したときの痕跡も残されているようだ。なぜならこれらの結晶は、酸素18という酸素同位体の含有量が少ないからだ。
研究チームによると、ロディニア超大陸の地下にある高温のマントルプルームが地殻の一部をもろくしたことで、超大陸は約7億5000万年前に分裂し、ジルコンの母岩に酸素18の痕跡を残したのではないかと考えている。
ジルコンの結晶とその周囲の岩石が形成されたのは5億年前から1億年前になってからで、激しい火山活動が、隠れていたロディニア大陸の地殻を部分的に溶かした後のことである。
マグマの塊はゆっくりと上昇し、結晶化して、ジルコンを含む花崗岩になった。この小さなタイムカプセルが地殻変動によって地表に出てきて、たまたまターンブル氏のチームによって採集されたのだ。
今回の発見は、ジーランディアの地殻がかつて考えられていたよりもはるかに古いことを示唆しているが、それでも他の大陸地殻に比べればかなり新しい。
アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、北米、南米、南極という現在の主要な大陸には、30億年以上前の岩石がある。
参考 National Geographic news:古代の超大陸の陸塊が見つかる、ニュージーランド
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