日本は恐竜研究の先進国

 NHKで8月22日放送の「ダーウィンが来た!」は興味深かった。それは日本で恐竜化石の大発見が続いているからだ。一つは世界一小さな恐竜のタマゴの発見。そして、もう一つは肉食のティラノサウルスのアゴの骨の新発見だ。

 恐竜といえば北米大陸や中国のゴビ砂漠の大型恐竜の化石が有名だが、近年は日本でも新種の化石が発掘されているという。

 日本は大陸と比べて地殻変動が激しく、古い地層はあるのだが、地層から恐竜の種を特定できる化石を見つけることが困難とされてきた。そういう「恐竜不毛の地」のイメージが変わりつつある。

 CTを使った化石研究、比較生物学の利用

 それは、2000年代以降、科学技術を活用した研究手法が発達したことが理由だ。CTスキャンを使用した脳の発達部位の調査や、鳥の胚から恐竜に共通する特徴を探す研究、 近種で生息域が異なる恐竜同士の比較研究などが盛んになったことで、新しい発見が続いている。

 例えば去年、兵庫で世界最小の恐竜卵が見つかった。鶏の卵より小さな卵で、推定される親の大きさはカモメほど。人の手に乗るほど極小の恐竜が、大昔の日本に生きていたことが分かった。

 また、肉食恐竜のティラノサウルスの下あごの骨の化石の内部構造をCTスキャンを使って詳しく分析したところ、神経が高度に発達し、あご先が「触覚センサー」のような役割を担っていたことが分かった。

 このことから、ティラノサウルスは動物を食べる際に骨と肉を区別して肉だけを食べたり、子どもをあごでくわえて持ち上げたりといった動きができた可能性もあるという。

 ティラノサウルスの下あご先“触覚センサー”

 福井県立大学恐竜学研究所の研究グループは、肉食恐竜のティラノサウルスの下あごの骨の化石の内部構造をCTスキャンを使って詳しく分析したところ、神経が高度に発達し、あご先が「触覚センサー」のような役割を担っていた可能性が高いとする研究結果を発表しました。

 福井県立大学恐竜学研究所の河部壮一郎准教授を中心とする研究グループは、ティラノサウルスの下あごの骨の化石の内部構造をCTスキャンを使って3次元的に復元し、詳しく分析しました。

 その結果、血管や神経が通る管がほかの恐竜よりも複雑に枝分かれしていて、特にあご先が発達していたことがわかったということです。

 このことから、ティラノサウルスの下あごは神経が高度に発達し、あご先が「触覚センサー」のような役割を担っていた可能性が高いということで、研究グループでは、動物を食べる際に骨と肉を区別して肉だけを食べたり、子どもをあごでくわえて持ち上げたりといった動きができた可能性もあるのではないかとしています。

 河部准教授は会見で「ティラノサウルスの生態をさまざまな側面から調べることで本当の姿がわかってくると思う。ほかの恐竜についても詳しく検証して、恐竜全体としてどんな感覚が鋭かったのか、引き続き調べていきたい」と話していました。

 世界最小の恐竜卵の化石、丹波で発見

 恐竜の卵の世界最小の化石が、兵庫県丹波市の白亜紀前期の地層から見つかった、と筑波大学などの国際研究グループが発表した。新種と判明し「ヒメウーリサス・ムラカミイ」と命名。

 丹波市ではこの時代の恐竜の卵が世界で最も多種類掘り出されたことになり、今後の恐竜研究への寄与が期待される。 

 グループは2019年1〜3月、丹波市山南町の約1億1000万年前の地層で大規模な発掘調査を実施。

 2015年以降の試掘も含め卵4点、卵殻約1300点の化石が見つかった。この中に長さ4.5センチ、幅2センチのウズラの卵ほどの細長い卵があり、構造の特徴から新種と判明した。

 卵は産んだ親の種類がすぐには分からないため、骨の化石とは独立に分類され、学名がつけられている。 

 ヒメウーリサス・ムラカミイのヒメは小さくかわいらしいこと、ウーリサスは卵の石を意味するギリシャ語、ムラカミは地元で見つかった国内最大級の恐竜「丹波竜」発見者の村上茂氏に、それぞれ由来する。

 卵殻の微細な特徴から、大型肉食恐竜のティラノサウルスなどと同じ獣脚類で、鳥に極めて近い種類と判明。翼が生え、全身が羽毛で覆われた姿が想像されるという。

 卵の大きさから、親の体重は推定2キロ弱程度。卵や大量の卵殻が密集して見つかったことなどから、発掘現場は巣の残骸とみられる。

 日本にも未発見の化石が多数ある

 この調査で見つかった卵や卵殻は4種に分類でき、いずれも獣脚類。ヒメウーリサス・ムラカミイのほかにも新種1種が見つかり「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス」と命名した。

 丹波市ではこれにより、白亜紀前期の恐竜6種の卵の化石が見つかったことになる。スペイン・テルエル州の5種を上回り、世界最多となった。

  筑波大生命環境系の田中康平助教(古脊椎動物学)は「小型恐竜の化石は、骨は壊れやすくてなかなか残らないが、卵は硬いので残りやすく研究上、重要な手がかりだ。多種類の卵が見つかると、そこに多様な恐竜が生きていたことになり、どんな恐竜がいたのかがみえてくる。日本には未発見の恐竜の化石がまだ多くあるだろう」と述べている。

 グループは筑波大のほか兵庫県立人と自然の博物館(三田市)、カナダのカルガリー大、同国王立ティレル古生物博物館などで構成。成果は6月19日付の白亜紀研究の国際専門誌「クリテイシャス・リサーチ」の電子版に掲載され、筑波大などが同23日発表した。今回の成果を受け、これらの化石が兵庫県立人と自然の博物館で8月末まで展示されている。

 約6600万年前に北米で生息したティラノサウルスの系統をたどると、中国の約1億2000万年前の地層で発見された羽毛のある小型の恐竜につながるという。 

参考 NHK ティラノサウルス 下あご先“触覚センサー”か