日本で発見!翼竜の化石

 恐竜といえば北米大陸や中国のゴビ砂漠の大型恐竜の化石が有名だが、近年は日本でも新種の化石が発掘されている。

 日本は大陸と比べて地殻変動が激しく、古い地層はあるのだが、地層から恐竜の種を特定できる化石を見つけることが困難とされてきたが、イメージが変わりつつある。

 今回は、鹿児島県長島町獅子島の海岸にある中生代白亜紀の地層から、翼竜の化石が見つかった。8月26日、長島町の教育委員会が発表した。

 鹿児島県でも初めてとなる翼竜の化石だ。化石は中生代白亜紀(約1億年前)のもので脚の一部とみられ、愛称は「薩摩翼竜」と命名された。

  CTスキャンで解析

 近くの地層では2004年に首長竜の化石も見つかっており、研究チームは近接した地層で発見された事例としては東アジアで最古級としている。


 化石は長さ約7センチ、太さ約2・3センチの楕円(だえん)筒形。パナソニックに勤める傍ら、恐竜などの化石発掘や研究論文の発表を続けている東大阪市の宇都宮聡さん(51)が2020年11月19日に、獅子島の海岸にある白亜紀の地層「御所浦層群」で発見した。

 東京都市大学の中島保寿准教授(古生物学)らの研究チームが再調査で化石を分析した結果、翼竜の翼(前脚)か後ろ脚の一部分の骨化石と判明した。

 CTスキャンの解析で、表面は厚さ1~2ミリの骨で覆われ、内部は石化した泥が詰まっていた。生存時の骨内部は空洞で軽量化されていたとみられる。同じ時代に生息していた、翼を広げた長さが約4~5メートルの翼竜「アンハングエラ」に匹敵する大きさと考えられるという。

 2004年サツマウツノミヤリュウも発見

 宇都宮さんは2004年、今回の発見場所から約20メートル離れた地層から九州初の首長竜(通称・サツマウツノミヤリュウ)を発見している。首長竜類と翼竜類が近接した地層から見つかった事例としては、東アジア最古級という。

 今回の発見の学術的な意義について、オンラインで記者会見した中島准教授は「白亜紀中期ごろの超温室と言われる温暖な時代における太平洋の生態系の一端が明らかになる発見だ」などと述べた。

 宇都宮さんは「最初はアンモナイトの化石と思っていたので翼竜と分かりびっくりした。地元の人に広く知ってもらいたいという思いを込めて愛称を薩摩翼竜と名付けた」と話していた。

 化石は長島町に寄贈され、今後は鹿児島県立博物館(鹿児島市)で常設展示される予定。

 翼竜「アンハングエラ」

 翼竜類は恐竜が繁栄した時代(中生代)に生息していた翼を持つ爬虫(はちゅう)類のグループ。優れた飛翔(ひしょう)能力を生かして狩りをする「空の覇者」として、三畳紀後期から約1億6千万年の長い期間繁栄したが、白亜紀末に絶滅したとされる。

 アンハングエラ (Anhanguera ) は、白亜紀前期に生息していた翼指竜亜目の翼竜。ブラジル北西部のアラリペ台地にあるサンタナ累層から発見された。イギリスから産出した化石が本属に属するという意見があり、その場合分布はブラジルにとどまらず、当時形成途中だった大西洋の反対側にまで及んでいたことになる。

 翼開長はおよそ4-5mほどで、魚食性とされている。伸張した吻部のため頭部が非常に長くなり、比較的縮退した胴部の倍の長さになっている。吻部には骨質の稜が鶏冠状に発達しており、魚を捕らえるために水面に吻部を突き入れた際に、水切りとなって抵抗を減ずる役割があったと考えられている。

 採食は、海面近くを飛行しながら行われたと考えられている。海面から餌となる魚を見つけると、吻部を水中に突入させると同時に後方に大きく振ることによって飛行しながらも餌との相対速度の差を少なくして魚を捕らえる方法や、吻端を水中に差し込みながら飛行して魚を挟み捕る方法が考えられている。

 吻部上下に発達した稜は、吻部を水中に入れた場合に水の抵抗を少なくするためにあったと考えられている。他の多くの翼竜と同じく、繁殖の方法などについては明らかになっていない。

 学名のアンハングエラ (Anhanguera) は原住民のトゥピ族の神話に置いて悪魔・悪霊とされる精霊の名アニャンガ (Anhanga)に、「古き者」を意味する"nera"を付けた言葉で、「年老いた悪魔」という意味だとされる。