もはや手放せない「かざす便利」
「FeliCa」といえば、駅の改札口で交通系ICカードをタッチしたり、コンビニエンスストアで電子マネーを利用したり。いまや、あちこちで見られる。
最近ではカードだけでなく、iPhoneなど携帯電話にも搭載され、モバイルSuicaなど、携帯電話があれば交通機関の乗り降り、買い物、マンションの電子キー...もはや携帯電話とはいうものの、何でもできるMagic Plateである。便利な世の中になった。
この“かざす便利”をつくりだしたのが、ソニーの非接触ICカード技術方式「FeliCa」である。
非接触だから、かざすだけで高速データ送受信。さらに、データは何度も書き換えられ、カード本体を再利用できるエコロジーなシステム。厳重なセキュリティーも実現した。
これからも、Felicity(至福)なCard(カード)に由来する名前どおり、「FeliCa」は世の中をもっと便利に楽しく変えていくことだろう。
FeliCaの特長
1.かざすだけで高速データ送受信
1枚のカードに、ICチップとアンテナを搭載。対応のリーダー/ライターにかざせば、約0.1秒でデータの読み書きができる。さらに、非接触方式なのでケースに入れたまま使える。
カード内にはフォルダーとファイルに相当する機能があり、複数のサービスを盛り込める。たとえば、電子社員証の場合、入退室ID、PCログイン、電子マネーまで幅広く対応できる。
3.高いセキュリティー
ISO/IEC 15408 EAL5+以上を取得(最新のFeliCa Standard ICチップ群)。カード内のバリューや電子マネー、個人情報などの大切な資産を、悪質な攻撃から守る。
4.さまざまな形状に対応
FeliCa技術は、携帯電話やコイン型のトークンなど、カード以外のさまざまな形状に対応している。腕時計やキーホルダーにも組みこめる。
FeliCaとは何か?
FeliCaは、非接触型ICカードのための通信技術として、ソニーが開発した。 非接触型ICカードは、リーダ・ライタからキャリアを送信して電磁誘導によりICカードに電力を供給し、キャリアの変調によりリーダ・ライタとカード間で通信を行う。
例えばISO/IEC 14443で規格化されているTYPE B方式は、ASK10%で変調を行い、NRZ符号を採用しているのに対してFeliCaの方式は変調がASK10%と同じであるが、マンチェスタ (Manchester) 符号を採用しているところが異なる。
当初、国際標準化機構にISO/IEC 14443 TYPE Cとして提案を行った。同時にTYPE D〜Gまでが提案されたが「近距離無線通信規格の乱立になる」として、国際規格議論が停止され採用されなかった。
その後、FeliCaと上位互換性のある方式がISO/IEC 18092 (Near Field Communication, NFC TYPE-F) として規格化された。日本では、JICSAP(一般社団法人 ID認証技術推進協会) ICカード仕様V2.0「第4部 高速処理用ICカード」や、日本鉄道サイバネティクス協議会でのICカード規定として規格化されている。
FeliCaは通常のICカードと同様に、キャッシュカードやIDカードなどに適用可能な技術である。特に高速処理が求められる、自動改札機や建物入館のセキュリティゲートや、キャッシュレジスターのアプリケーション向けに特化したコマンド体系になっている。
そのため、ISO 7816-3の基本コマンドとは互換性はない。また、ICチップ内部のメモリは16バイト固定長のレコードのみがサポートされていて、ISO/IEC 7816-3(英語版)で規定されているファイル構造との互換性はない。
暗号処理としては、相互認証にトリプルDES、通信路にDESもしくはトリプルDESを利用している。Dualカードタイプ(接触/非接触)では公開鍵暗号方式の処理が可能なものがある。
Felicaの歴史
1988年 - ソニーが無線ICの開発を開始。
1994年 - 名称がFeliCaに決定。
1994年 - 香港のオクトパス社が採用を決定。世界で初の採用事例。
1997年 - オクトパスカードが正式導入される。世界で初の本格的な導入。
1998年 - 広島のスカイレールサービスが「IC定期券」として採用。国内の交通系で初めての採用。
1999年 - ソニーがソニーファイナンスインターナショナルをはじめとした数社と共同でFeliCaを用いた電子マネー「Edy」のモニターテストをゲートシティ大崎にて実施。なお、当初は「Edy!」の名称を使用。
パレットタウン(東京お台場)内のMEGAWEBにて「MEGA WEB Member's Card」の発行を開始。FeliCaを利用した館内独自のプリペイド型電子マネーサービスをはじめ、日本で初めて事前に決済クレジットカードを登録して使用する後払の「リンク式ポストペイ(後払)」方式による館内独自のクレジット型電子マネーを導入。
2003年3月までカード発行と関連サービスを実施、リンク式ポストペイ方式の電子マネーは、後にQUICPayなどに採用される。
2000年 JR東日本が採用を決定。
4月 - メディアージュ(東京お台場)にて「メディアージュファンカード」の発行を開始。FeliCaを利用した館内独自の電子マネーサービスをはじめ、映画館やエンターテイメントアトラクションなどの電子チケットサービス、会員制のポイントカードサービスなどが開始される。2002年3月までカード発行と関連サービスを実施。
2001年11月 - JR東日本がSuicaを導入。また、同時期にソニーグループのビットワレットがEdyの正式サービスを開始。
2002年4月 - シンガポールのEZ-linkが導入する(2009年にFeliCa利用中止しNFC Type A/Bへ移行済み)。
2004年
フェリカネットワークスが設立される。
モバイルFeliCaを搭載した初めての携帯電話がNTTドコモから発売される。当初は「SO506iC」「P506iC」「SH506iC」「F900iC」の4機種。
2005年10月 - FeliCa ICチップの累計出荷個数が1億個を突破。
2007年 - 神奈川大学の松下昭教授らが、非接触ICカード技術の特許を巡り、計20億円の損害賠償を請求。しかし2009年3月に知的財産高等裁判所が請求棄却の判決を出し、松下は最高裁判所への上告を断念したため、ソニーおよびJR東日本の勝訴が確定した。
2010年 - 日本のAndroidスマートフォンでモバイルFeliCaが搭載される。
2016年9月16日 - Apple iPhone 7、iPhone 7 Plus、Apple Watch Series 2が発売され、NXPセミコンダクターズのNFC A, BおよびFeliCaに対応するチップ67V04が内蔵されている。2016年発売時では、日本国内でのみFeliCaによるApple Payに対応したシステムとなっていた。
FeliCaチップの高い安全性
FeliCaチップを搭載したカードRC-S860は、2001年にEAL3の評価を受け、2002年3月4日に英国CESGCからISO/IEC 15408 EAL4の認定を受けている。ただし、この認定には、PP/9806などのICカード用システムLSIの主要なProtection Profileで要求されているAVA_VLA.4やSOF-highが含まれていなかったが、後にEAL4+の認定を受けている。
かつて経営者向けの直販誌「FACTA」の2006年9月号に、FeliCaに脆弱性が存在するとの記事が掲載されたことがあった。さらに、同誌2007年1月号は、FeliCaチップの内部を見ることができ、その改変も可能であるとした。
これに対して、情報の出所が明らかでなく具体的な記述もないという理由で、ITmediaが批判を加えた。ITmediaによれば、情報処理推進機構 (IPA) は、情報が提供された事実を認め、経済産業省にもその情報を伝えたが、IPAではソフトウェア脆弱性を取り扱っているものの、ハードウェアシステムの脆弱性は対象外ということもあり、提供された情報についてIPAでは検証はしていない、という。
もっとも、IPAは、「ソフトウエア製品脆弱性関連情報」として、「ICカード等のソフトウエアを組み込んだハードウエア等に対する脆弱性」関連情報に関する届出を受け付けてはいる。
なお、この件についてソニーは、暗号解読の事実はない、とコメントした。
FACTAはゴシップ誌としての性質もあり、この記事はソニー批判のシリーズ記事の一つであること、内容はすべて伝聞調で書かれていること、また記事中の技術的な説明に複数の誤りがみうけられたり、Mifare Standardの脆弱性と混同したとおぼしき説明があるなど、記事の内容にも不審点はある。
そもそも脆弱性の検証を行うことができるほどの情報が公開されておらず、解読したとされる研究者も名乗りを上げていない。 また報道から10年以上経っても、信用するに足りる組織による脆弱性・被害の報告はないことから、この脆弱性の信憑性は無い。
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