台風10号熱帯低気圧に変わる
台風10号は9月1日昼前、東海地方の南海上で熱帯低気圧に変わった。読売新聞のまとめでは、同日午後6時現在、台風10号による死者は7人、行方不明者は1人、負傷者は計129人に上った。西日本から東日本では記録的な大雨で土砂災害の危険が高まっており、気象庁は引き続き警戒を呼びかけている。
台風10号は、8月22日未明に太平洋・マリアナ諸島付近で発生した。その後、複雑な動きを見せた。当初は北西に進み、四国の南で進路を北東に変え、関東から近畿に上陸するとみられていた。
しかし、日本の東側にある太平洋高気圧の張り出しが強く、西側に押されたほか、台風の西側にできた「寒冷渦」に引き寄せられ、予想より西寄りの進路を取った。
台風の進路となった日本の南の海面水温は今夏、熱帯並みの高温になっていた。台風は海から大量の水蒸気の供給を受けて勢力を強め、「最強に近いクラス」に発達し、8月29日朝、鹿児島県に上陸した。
これだけ遅い台風の要因と背景は
今回の台風10号は偏西風に乗ることができず、九州に上陸しても速度を上げないなど、典型的な台風の進み方とは大きく異なっている。気象庁の担当者も「日本付近でこれだけ台風の移動速度が遅い状態が続くのは珍しいのではないか」という台風10号。
「ゆっくり」とした速度 その要因は、気象庁によると、台風が日本に接近、上陸する場合は、北緯30度より北へ進むと日本付近の上空を流れる偏西風や太平洋高気圧の縁を回る風に流されて、速度を上げることが一般的。
今回の台風10号は今月22日にマリアナ諸島付近で発生したあと、時速30キロ程度で北西へ進んだが、奄美大島の東で「ゆっくり」となった。気象庁は時速9キロ以下となると「ゆっくり」と表現し、方向が定まっていないと「ほとんど停滞」と表現する。
気象庁によると、今回の台風10号の速度が遅いのは、九州に向かって北西へ進んでいた途中で、大陸から張り出した高気圧に進路を遮られた上、上陸後も偏西風や、日本のはるか東の太平洋高気圧の縁を回る風の強い領域が台風の付近になかったことが影響しているとみられるという。
偏西風の蛇行と地球温暖化
過去にも
一方、台風10号のように日本付近で速度が上がらなかったことで大雨被害につながった台風は過去にも確認されている。
気象庁によると「紀伊半島豪雨」を引き起こした2011年9月の台風12号や東日本や西日本で被害が出た2017年8月の台風5号があるということ。
これまでの研究でも日本付近で台風が遅くなっているという分析がある。気象庁気象研究所が1980年から2019年の40年間で、7月から10月に日本に接近した台風の特徴を調べたところ、期間の後半20年の方が日本の太平洋側の地域に接近する台風の数が増えるとともに、台風の移動速度も遅くなっていることがわかったという。
その背景としては上空の偏西風が弱まっていることなどを挙げていて、地球温暖化も影響している可能性があるとしている。
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