能登半島地震でビル倒壊
 元日の能登半島地震は、活断層の地震として過去最大規模だった。木造や鉄筋コンクリート造の建物が数多く倒壊した。科学者は“軟弱地盤”によって揺れが何倍にも増幅された可能性を指摘、耐震基準の考え方を変える必要性を訴えている。
 今、警戒を強めるのが近い将来起こるとされる「首都直下地震」。東京などでは軟弱地盤が広がっていて、建物被害拡大のおそれがあるという。
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 地盤災害の中には、崖崩れ、地滑り、土石流、斜面崩壊、地盤沈下、地震の揺れ、液状化、陥没などさまざまものがある。今回の地震で顕著だった建物被害。石川県など6県で16万棟以上にのぼっている。
 珠洲市の一部の地区では、木造住宅の全壊率が5割を超えるなど甚大な被害が出た。 さらに、科学者たちを驚かせたのは輪島市でのビルの被害。中でも7階建ての鉄筋コンクリート造のビルが根元から転倒したケースでは、隣の木造の店舗兼住宅が巻き込まれて2人が犠牲になり、科学者たちはビルが倒れた原因に注目している。輪島市で被害を大きくした要因の一つとして考えられているのが地盤の軟弱さ、いわゆる“軟弱地盤”だった。
 柔らかいプリンぷりんと固いヨウカン
 例えば、こうした特性の違いは「プリンとようかん」を使った実験で分かりやすく理解できるという。 かたいようかんはほとんど揺れが起きず上に置いたお菓子にも変化無し。一方、プリンはそのやわらかさから揺れが増幅され、上に置いたお菓子も大きく揺れる。
 輪島市内の82か所で地盤の調査を実施。その結果、輪島市の揺れやすさが詳細に分かってきた。 その地盤で地震の揺れが何倍増幅されるのか調べてみると、1.6倍から2.5倍以上に揺れが増幅されることがわかった。軟弱地盤が輪島市の中心部に広がっていたことが明らかになった。
 倒れたビルが建っていたのは、中でも軟弱地盤が最も深い場所で、ビルの転倒に対する揺れの寄与度はかなり大きかった。
 そもそも地盤とは何か?
 「地盤」とはおもに“砂と粘土”からなる層(地層)。「岩盤」という固い岩の層の上に、「地盤」が重なっている。粘土は軟らかく、砂はしっかりしているため、地盤の違いによって発生する被害が違う。
 地盤によって地形を大まかに分けてみると、丘陵・台地は固く、揺れにくいとされている。ただしそこを削った谷の下流では軟らかい粘土が堆積しているため、揺れやすくなっている。低湿地のある平野部も同様である。
 地盤は細かく見ていくとさらに複雑になっていて、長い年月をかけて変化する。地盤の分布の概念図 地盤の分布の概念図 地盤災害の中には、崖崩れ、地滑り、土石流、斜面崩壊、地盤沈下、地震の揺れ、液状化、陥没などさまざまものがある。
 首都圏の軟弱地盤
 地面を掘らなくても、捉えた振動を分析すれば、軟らかい地盤がどこにあるのか分かる。 わずかな揺れも捉える高性能の地震計を使って行った、首都直下地震で大きな被害が想定される関東地方。
 地盤データの収集は、1キロ間隔で関東平野全域およそ1万4000か所で行われた。さらに、ビルや道路などを建設する際に行われたボーリング調査のデータをおよそ30万か所で収集し、分析した。 こうして作られた新たな地盤のデータからは、局所的に揺れが強まりやすい場所が関東地方でも数多くあることが明らかになってきている。