「H3ロケット」打ち上げ成功
2024年7月1日、日本の新たな主力ロケット「H3」の3号機が、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。打ち上げからおよそ17分後に搭載した地球観測衛星「だいち4号」を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。
「だいち4号」は、「だいち2号」の約4倍の観測能力を持つ。2024年の能登半島地震では「だいち2号」が1週間かけて能登半島の観測を実施した。「だいち4号」は上空を1度通過するだけで同じ範囲を観測することができる。
日本の新たな主力ロケット「H3」は去年、初号機の打ち上げに失敗し、搭載していた地球観測衛星「だいち3号」が失われた。対策を講じてことし2月、2号機が初めて打ち上げに成功していた。
現在運用中の大型ロケット「H2A」は今年度の50号機で運用を終え、来年度以降、「H3」に完全に移行することになる。
「H3」は年間6機の打ち上げを目標に掲げていて、今回、大型衛星の軌道への投入に初めて成功したことで、今後の安定した運用に向けてスタートラインに立ったことにる。
「だいち4号」災害時の運用に期待
「だいち4号」は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱電機がおよそ320億円をかけて開発した地球観測衛星。重さはおよそ3トン、太陽光パネルなどを展開すると高さ10メートル、横20メートルある。
衛星から発した電波が地表に反射する際の強弱をもとに画像を作成できることから、夜間や悪天候でもおよそ3メートルの高い解像度で観測できるのが特徴だ。
現在運用中の「だいち2号」に比べて、一度に観測できる地表の幅を最大で4倍の200キロ、観測頻度を5倍に増やし、災害時の被害状況の把握や火山活動に伴う異変の迅速な発見などに役立てられる計画である。
「だいち2号」はことし1月の能登半島地震でも地殻変動の分析に活用されましたが、観測エリアが限られていたため、全ての地域を一度に観測することはできなかった。
「だいち4号」の運用によって、災害時のよりタイムリーで広範囲の被害状況の把握が期待されている。
月や火星の探査にも
現在運用中の「H2A」は今年度中に打ち上げ予定の50号機までで製造を終え、2025年度以降、「H3」に完全に切り替えられる。
内閣府の宇宙基本計画によると、「H3」の打ち上げは、今回の打ち上げも含むと今年度に3回、来年度に6回など、2032年度までに少なくとも22回が計画されている。
また「H3」では、これまで日本の大型ロケットで活用されてきたメインエンジンと、機体両側にある補助ロケットの両方を使う形態での打ち上げだけでなく、メインエンジンのみを用いた打ち上げも可能な設計で、コスト削減には欠かせない要素とななる。
JAXAはメインエンジンのみを用いた打ち上げを当初3号機から計画していたが、初号機の打ち上げ失敗の影響で、今回は見送り今後実施する見込みだ。
「H3」は、地球から遠く離れた月や火星の探査にも活用される。来年度には月の南極に着陸し氷の量などを調べる探査機や、再来年度には火星の衛星からサンプルを地球に持ち帰る探査機を打ち上げる計画である。
さらに、月を周回する新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」に物資を運ぶ予定で、アメリカが進める国際的な月探査プロジェクト「アルテミス計画」に日本が参加する上で重要な役割を担う見通しで、「H3」はまさに日本の“切り札”となっている。
「H3」打ち上げ成功までの道のり
現在の主力ロケット「H2A」は打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、成功率98パーセントを誇るものの、打ち上げ1回あたりおよそ100億円かかり、費用の高さなどが課題となっていた。
イーロン・マスク氏率いるアメリカの民間企業「スペースX」の台頭などで打ち上げビジネスの国際競争が激しくなるなか、世界に対抗できるよう「H3」では「H2A」の高い信頼性を保ちつつ、コストダウンと同時に、より多くの衛星を運べるようエンジンのパワー増強が求められている。
2014年から着手した開発では、ロケットの“心臓”にあたるメインエンジンの開発で難航。さらに、2度の延期を経て去年3月、初号機の打ち上げに挑んだが、メインエンジンは正常に作動したものの、これまで「H2A」などで実績を重ねてきた2段目のエンジンが着火せず、打ち上げは失敗した。
そして、開発の着手から10年となることし2月、考えられるすべての原因に対して対策を講じた2号機で、「H3」は初めて打ち上げに成功した。
当初、2号機には地球観測衛星「だいち4号」の搭載が計画されていたが、初号機の失敗を受けて、衛星を喪失するリスクを考慮して大型衛星は搭載せず、初号機で失った「だいち3号」と同じ重量の構造物を搭載し、ロケットの性能や衛星を分離する装置などの確認が行われた。
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