ゴッホの「星月夜」に描かれた渦、物理理論と一致していた

 ゴッホの「星月夜」の渦が物理理論と一致しているとする研究が発表された。フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」に描かれたまだらな星の光と渦巻く雲は、ゴッホが1889年にこの作品を描いたときの動揺した心境を反映していると考えられている。

物理学者の研究論文によると、ゴッホが乱流の数学的構造を直感的に深く理解していたことを示唆しているという。「星月夜」はフランス南部サン・レミ・ド・プロバンスにある病院の病室の東向きの窓から見た、日の出直前の景色が描かれた油絵だ。ゴッホは左耳を切った後、この精神病院に入院していた。

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  研究者らは絵画のデジタル画像を使用して、14個の主な渦の大きさを検証。それらが、大きな渦から小さな渦への衝突や相互作用によるエネルギーの伝達を説明する物理理論と一致しているかどうかを把握した。

 その結果「星月夜」の14個の渦の大きさだけでなく、それらの相対的な距離と強度が、旧ソ連の数学者アンドレイ・コルモゴロフの乱流理論として知られる流体力学を決定する物理法則に従っていることが判明した。

 乱流とは何か?

 乱流とは、流体の流れ場の状態が不規則に乱れた状態。乱流でない流れ場は層流と呼ばれる。生活の中でのわかりやすい例としては水道の蛇口から流れる水がある。水道の水は流れが少ないときはまっすぐに落ちるが、少し多くひねると急に乱れ出す。

 このとき前者が層流、後者が乱流である。生活の中で見られる空気や水の流れはほぼ全てが乱流であるだけでなく、熱や物質を輸送して拡散する効果が非常に強いので、工学的にも非常に重要である。

 乱流は様々な場所で起こる。気流、流水、海流、血流、煙などの流体で観察される一般的な自然現象で起こる。また、ピッチャーが投げるナックルボールにも乱流が発生し、揺れるようにボールを変化させている。

 見えない乱気流による飛行機事故

 過去多くの飛行機が乱気流に遭遇し、飛行機事故を起こしている。

 乱気流は、大気現象によっておこる乱流であるが、建物や地形などによって物理的に起こる乱気流に大別できる。前者には、積乱雲など対流雲の内部で起こるもの、高度10km以上の高空にあるジェット気流の近くで起こるもの、積乱雲から吹き出す強い下降気流によるダウンバースト、雲を伴わない晴天乱気流などである。

 後者には、山岳の風下側にできる山岳波、地形の起伏や建物などによって起こる低層風擾乱、それと飛行機の後方にできる後方乱気流などがある。

 飛行機が乱気流に巻き込まれないよう、パイロットは離陸前に気象情報を確認し、乱気流のありそうな空域を事前に予測しておき、その空域は避けて飛行する。また、飛行中も機体に搭載されている気象レーダーで雲の位置を常に確認しながら飛行する。

 パイロットも発見しがたい、乱流をゴッホはどのように発見したのだろうか。