埼玉 マンホール事故

 2025年8月2日 埼玉県行田市のマンホールの中で作業員4人が硫化水素中毒などによって死亡した事故が起きた。下水道管の点検作業をしていた50代の作業員4人がマンホールの中で硫化水素の中毒や中毒にともなう窒息で死亡した。

 事故後に検知された硫化水素の濃度は、安全に作業を行うために法律で定められた基準の15倍を超える150ppm以上だったという。当時、下水道管には深さ1.8メートルほどの水がたまっていて警察は作業員が転落した衝撃で下水が混ざり、空気中に硫化水素ガスが出てきて濃度の上昇を招いた可能性があるとみている。硫化水素はどのくらいで死亡するのだろうか。

 硫化水素は毎年不慮の事故で亡くなる人が出ている猛毒だ。中学校の理科実験では猛毒でありながら臭いを確認する実験を行う。これは毎年起きる事故を将来的に防ぐために必要だからだと思われる。薄めた硫化水素を一度嗅いでおけば、忘れることのない強烈な刺激臭(腐卵臭)がある。画像 1

 硫化水素の危険濃度

 硫化水素の危険性は、1000 - 2000ppm (0.1 - 0.2 %)でほぼ即死、600ppmで約1時間で致命的中毒、200 - 300ppmで 約1時間で急性中毒、100 - 200ppmで嗅覚麻痺、50 - 100ppmで気道刺激、結膜炎、5ppmで日本産業衛生学会における許容濃度、1ppmで労働安全衛生法における作業環境管理濃度とされる。わずか0.41ppmで不快臭、0.02 - 0.2ppmで悪臭防止法に基づく大気濃度規制値、わずか0.00041ppmで臭いがわかる。…とされている。

 硫化水素は独特の臭気があるが嗅覚を麻痺させる作用もあり(鼻が馬鹿になるという)、すぐに高濃度でも匂いを感じなくなる。したがって濃度が致死量を超えていても嗅覚で知覚できないケースもある。知らずに近づいた登山者やスキー客・温泉客が死亡する例も見受けられる。

 ビルの汚水槽や排水プラントなどの下水道施設、化学工業・実験施設において事故が度々発生しており、このような場所での作業では監視・管理が法規制されている。防護なしでの救援作業では二次災害も起こりうる。

 硫化水素の化学的性質

 硫化水素は、空気より重く(比重1.1905)、無色、水によく溶け、弱い酸性を示す。可燃性ガスであり、引火性がある。爆発限界は4.3 – 46 %。燃焼した場合には硫黄酸化物となる。

 硫化水素は好気性生物の多くにとっては有毒であるが、酸素非発生型光合成、すなわち水素源として水ではなく硫化水素を用いる事で酸素の代わりに硫黄を放出する緑色硫黄細菌・紅色硫黄細菌などの光合成細菌も存在する一方、硫黄酸化細菌と称される化学合成細菌は硫化水素の酸化に伴い発生するエネルギーで炭酸同化を行う。後者は硫化水素の豊富な海底火山の熱水噴出孔付近で生産者の役割を担い、独自の生態系を形成している。

 天然には火山中から火山ガスとして放出されるほか、温泉(硫化水素泉)中に含まれる。人為的な発生源には石油化学工業などがあり、下水処理場、ごみ処理場などにおいても、硫黄が嫌気性細菌によって還元され硫化水素が発生する。飲食店などの厨房排水で設置される分離槽や溜め枡内で、閉店後水が動かなくなると非常によく発生する。糞や屁にも若干含まれる。硫酸塩還元細菌による働きで、口臭にも含まれる。

 硫化水素は、腐った卵の臭いの原因で、その時の特徴的な強い刺激臭は「腐卵臭」と表現される。目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気体である。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質のひとつ。

 噴火口から出る火山ガスや硫黄泉などの臭いが「硫黄の臭い」と形容される場合があるが、硫黄の単体(S)は無臭であり、これは硫化水素(H2S)の臭いをさしている。空気よりも重いため火山地帯、温泉の吹き出し口などの窪地にたまりやすい。




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