福井県立恐竜博物館の特別展「獣脚類2025」
2025年7月11日(金)~11月3日(月・祝)まで福井県立恐竜博物館の特別展「獣脚類2025~「フクイ」から探る恐竜の進化~」が開催されている。
大迫力の泳ぐ姿で展示されるスピノサウルスや世界初公開となるティラノミムスの全身復元骨格、新種アジアティラヌスの実物化石など注目の標本が盛りだくさんの見どころ。
フクイラプトルが属するメガラプトル類の起源は、2通りの仮説の間で揺れ続けている。メガラプトル類の進化に加えて、これらの仮説の中で起源として考えられている、アロサウルス上科とティラノサウルス上科についても紹介する。

新たに新種として報告されたティラノミムス・フクイエンシスは、オルニトミモサウルス類の中では「異形」とも言えるデイノケイルスへと続く系統に位置付けられる。“軽快”か“重厚”かなど、多様なオルニトミモサウルス類の進化を紹介する。
長年に渡って系統的位置が謎に包まれていたフクイベナートルは、近年、原始的なテリジノサウルス類である可能性が示された。小さな頭に長い首、巨大な爪をもつテリジノサウルスへと続く、その特異な進化の過程を紹介する。
福井にもいたスピノサウルス科
かつて日本列島がまだアジア大陸の一部だった白亜紀(約1億2000万年前)の時代、いまの福井県には、驚くほど多様な恐竜たちが暮らしていました。なかでも今回の展示で注目されるのは、「獣脚類」と呼ばれる、ティラノサウルスのような肉食恐竜から、現代の鳥類までつながる系統です。
本特別展では、福井で見つかった獣脚類4種を軸に、彼らの多様な進化の道のりが紹介されています。その背景には、世界各地の最新研究や貴重な標本の数々があります。
福井で発見された獣脚類の中で、最も原始的とされるのがスピノサウルス科の恐竜。最大級の獣脚類として有名なスピノサウルスを思い浮かべるかもしれないが、福井ではその仲間の歯化石が発見されている。
スピノサウルス科の歯はワニの歯に似た円錐形であり、魚を食べるのに適していたと考えられている。まだ全体像は不明だが、歯のごく一部に鋸歯(前後の縁に並ぶ小さな突起)が見られることなどから、このグループの初期進化史を物語る興味深い存在であると考えられている。
スピノサウルスは、背骨の一部が張り出してできた大きな帆を持つだけでなく、ワニのように細長い吻部(ふんぶ、口や鼻の突出している部分)と円錐形の歯を持ち、水中での狩りに適応していたと考えられている。
加えて近年、モロッコで発見された新しい標本からは、後肢が小さく、尾が長いヒレのような形になっており、陸上を歩くよりも泳ぎに適していたという説が唱えられている。今回の特別展では、遊泳姿勢の全身復元骨格が宙吊りで展示され、かつてない迫力でその姿を体感できる。
いまだ謎多きフクイラプトル
福井県立恐竜博物館が開館した2000年、福井で初めて命名された恐竜がフクイラプトル・キタダニエンシス。スピノサウルス科に比べれば、肉食恐竜としてはオーソドックスな姿をしていたと考えられているが、化石は四肢骨を中心とする一部しか見つかっていない。現在ではメガラプトル類というグループの中でも原始的な部類に位置づけられている。このメガラプトル類自体の正体もまた謎に包まれている。 というのも、メガラプトル類をアロサウルス上科の中に位置付ける説や、より進化的なティラノサウルス上科の中に位置付ける説などがあり、いまだに研究者の間で意見が分かれている。こうした分類の揺れは、部分的にしか化石が見つかっていない恐竜を研究する難しさを物語っている。
展示では、タイで発見された最古級のメガラプトル類であるヴァユラプトルやプーウィアンベナートル、中国で発見されたばかりのティラノサウルス上科の新種アジアティラヌスの実物化石などが紹介され、上記の2つの異なる仮説によって、それぞれどんな進化の道筋が見えてくるのかを知ることができる。
ティラノミムス「ダチョウ恐竜」
2023年に新種記載されたティラノミムス・フクイエンシスは、まるでダチョウのような体型をしたオルニトミモサウルス類、いわゆる「ダチョウ恐竜」の一種だが、「ティラノもどき」を意味する名の通り、ティラノサウルスに似た特徴も持っている。ダチョウは鳥としては巨大だが、軽快な体つきで素早く走ることが知られ、「ダチョウ恐竜」も一般にその傾向がある。しかしティラノミムスは、この系統としては異例の巨体となるデイノケイルスに連なる系統の、原始的な存在であると考えられている。
展示では、このティラノミムスの全身復元骨格が世界で初めて公開されている。併せて、タイで発見されたキンナリーミムス、そしてデイノケイルスの全身骨格も展示され、知られざる「ダチョウ恐竜」たちの進化を体感することができる。
異色の獣脚類、フクイベナートル
2016年に命名されたフクイベナートル・パラドクサスは、太く鋸歯のない歯、小さな頭と長い首、そして鋭いかぎ爪を持つ、肉食とも草食ともつかない風変わりな恐竜。2020年に行われたCTスキャンと、その後の系統解析によって、ようやくこの恐竜がテリジノサウルス類の原始的な存在である可能性が明らかとなった。
テリジノサウルスといえば巨大な鎌のような爪を持ち、草食性へと適応した、見た目も生態も異色な獣脚類。今回の展示では、その仲間でも比較的原始的なアルシャサウルスや、より原始的なベイピャオサウルスの生体復元模型も展示され、雑食性のフクイベナートルから草食性のテリジノサウルスへと続く進化の道筋をたどることができる。
福井県勝山市の北谷層からは、ほぼ同じ時代・地域に、少なくとも6種類の獣脚類が共存していた証拠が見つかっている。これは獣脚類というグループが、どれほど多様な生態に分化し、競合を避けつつ繁栄していたかを物語るもの。 また鳥類という、現在まで続く系統の存在も忘れてはなりません。福井で発見された始祖鳥に次ぐ原始的な鳥類フクイプテリクスや、鳥類に近縁なデイノニコサウルス類の足跡化石など、特別展では紹介しきれなかった恐竜たちの痕跡も、常設展示などで紹介されている。

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