過去最長の「黒潮大蛇行」が終息
気象庁は9月1日、今夏(6~8月)の日本の平均気温が平年を2.36度上回り、1898年の統計開始以来「最も暑い夏」になったと発表した。これで3年連続で最も暑い夏となり、気温上昇に歯止めがかからない状態が続いている。今年は11月まで気温が高い傾向が続く可能性があると予測している。
一方、気象庁と海上保安庁は8月29日、今年4月に終息したことを正式に発表した。この現象は、しらすや伊勢海老の記録的不漁、夏の猛暑や局地的な豪雨など、私たちの食卓から気候、さらには防災にまで多大な影響を及ぼしてきたと考えられている。
最も身近な影響は、食卓にのぼる魚介類の記録的な不漁。特に深刻なのが静岡県のしらすで、ここ数年不良が続いている。本来、漁の最盛期にはしらすの入ったカゴが200から300も並ぶという静岡県の御前崎魚市場で、ある日はわずか3つしか水揚げがなかったという。
和歌山県では全国有数の漁獲量を誇る伊勢海老が記録的な不漁に見舞われ、漁師は「黒潮大蛇行が収まらないとどうにもならない」と語った。サンマやアジ、サバなどが獲れなくなる一方で、暖かい海に生息する魚がかかるようになるなど、漁場の環境が大きく変化。のりやわかめといった海藻が枯れてしまう被害も報告されている。
過去最長となる7年9ヶ月にわたり続いてきた「黒潮大蛇行」が終息し、不漁続くシラス・サンマは戻るのだろうか?今夏のような猛暑が少しやわらぐのだろうか?まだわかっていないことらしい。
そもそも黒潮とは何
和歌山県沖では多くのサンゴが白く変色して死んでしまう「白化現象」が確認されており、これも大蛇行の影響が指摘されている。2023年に大阪湾に迷い込み話題となったマッコウクジラの「淀ちゃん」も、海流の変化によって迷い込んだ可能性が考えられている。そもそも、なぜ黒潮はあれほど大きく蛇行するのか。
太平洋や大西洋をはじめ、世界中の海には「海流」と呼ばれる巨大な水の流れが存在。海流は地球の自転、海底の地形など、さまざまな要因で起きると考えられているが、その主な原因は「風」。
地球上では、常に特定の方向に吹く風が存在。赤道付近では東から西へ吹く「貿易風」、そして日本が位置する中緯度帯では西から東へ吹く「偏西風」。この風が海面を押し続けることで、巨大な海流が生まれる。実際に世界の海流図を見ると、北半球では風に押されて時計回りに、南半球では反時計回りに、風の向きと連動して海水が循環していることがわかる。
驚くべきことに、水深4000メートルもあるような場所でも、水深3000メートル付近まで、いわば海の底近くまでが一体となって流れている。長い年月をかけて風が吹き続けることで、その力が海の深くまで及んでいると考えられている。
では、その風自体は何が原因で吹いているのか?その答えは「地球の自転」。地球が自転を続ける限り、貿易風や偏西風は吹き続け、それに伴って海流もまた、絶えず流れ続ける。
黒潮のズレ(蛇行)は「偏西風のズレ」
黒潮が蛇行する直接的な引き金と考えられているのが、上空を流れる「偏西風」の存在。専門家によると、長期的にみて偏西風が流れる場所が少しずつ北上しているという。
そのため黒潮の推進力の一部は、北へずれることでその力が弱まる。結果、海底や陸の地形といった他の要因と組み合わさり、黒潮が大きく蛇行することになる。また、蛇行した流れの内側には冷たい水の塊である「冷水渦」が発生し、これが蛇行をさらに安定させる一因にもなっている。
では、そもそもなぜ偏西風は北上したり、南下したりと位置を変えるのか。この根本的な原因については、専門家も「はっきりとまだ科学的に分かっていない」のが現状。
関西地方では、夏がこれまで以上に暑くなり、雨量が増える可能性がある。大蛇行の間、黒潮は紀伊半島から大きく離れていたが、終息すれば再び沿岸に近づく。ただ、大蛇行が関西の暑さを和らげていたという明確な研究結果はなく、断定はできない。
気候とともに気になるのが、食卓への影響。大蛇行によって不漁が続いていたシラスや伊勢海老などが、また獲れるようになるのではないかと期待が高まる。しかし、専門家は「そう簡単にはいかない」と指摘。大蛇行が続いていた約8年の間に、地球温暖化の影響で海水温そのものが変化しており、一度変わってしまった魚の生息域や漁場が、海流が元に戻っただけですぐに回復するとは限らない。
では、私たちにできることは何か。黒潮大蛇行のような大規模で複雑な自然現象は、一人ひとりが環境への意識を高めるきっかけとすることが求められている。
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