氷河期展で暑さを吹き飛ばそう
つらい夏の酷暑、生態系の変化や自然災害の頻発……。気候変動や気温上昇への対策は世界中で大きな課題になっている。地球上では温暖化が進んでいる現在だけど、実は今は、長い長い氷河期のまっただ中。人類登場からの4万年をたどる。
氷河期のヨーロッパ北部は氷床に覆われ、中央部に乾燥した草原地帯が広がり、「氷河期のメガファウナ(巨大動物群)」と呼ばれる大型の動物たちが君臨していた。過酷な環境を生きた巨大動物とは一体どんな生物だったのか。そして、彼らの中で何が絶滅して、何が現代まで生き残ったのか。
氷河期を生きたネアンデルタール人とクロマニョン人(ホモ・サピエンス)。その実物の頭骨が日本初上陸。ネアンデルタール人はがっしりした体格と強靭な筋肉を持っていたのに対し、クロマニョン人は比較的ほっそりした体格に長い手足を持っていた。同じ時代を生きていた両者。しかし4万年前までにネアンデルタール人は姿を消す。一体何が両者の命運を分けたのか。
猛暑日の続く日本列島。しかし現在氷河期の真ん中だと聞くと驚かされる。特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」が上野の国立博物館で開かれている。エアコンの効いた会場で涼みに行くのもいい。会期は2025年7月12日(土)~10月13日(月・祝)。開館時間9時~17時(入場は16時30分まで)※常設展示は17時まで(入場は各閉館時間の30分前まで)。チケットは一般・大学生 2,300円、小・中・高校生600円。
現在氷河期進行中?
現代の知見によると、地球上ではとても永いスパンで氷河期と温室期を繰り返してきた。大陸が移動すると地底のマントルが活発化して火山活動がひんぱんになり、CO2が蓄積して温室期になる。その大気中のCO2が鉱物や海水に取り込まれると寒冷化して氷河期が訪れる。これまでには、20億年以上前のヒューロニアン氷河期、約7億年前のクリオジェニアン氷河期、約4億年前のアンデス-サハラ氷河期、約3億年前のカルー氷河期があり、今は258万年前からはじまった第四紀氷河期なのだそうだ。
こんなに温暖化しているのに?その疑問はもっともだ。けれども温室期はもっとはるかに高温になる。今は北極や南極、高山などにある氷床も一切存在しなくなり、生存できる動植物も様相を全く変えるだろう。
第四紀氷河期は、寒い氷期と、比較的温暖な間氷期を繰り返している。その変動はミランコビッチサイクルと呼ばれ、約4万年サイクルで変わる地球自転軸の傾き、約10万年周期の地球公転軌道のズレ、約2万6000年周期の歳差(自転軸の傾き反転)という3要素がもたらす。直近の氷期は約11万5000年前から始まっている。そして約1万年前に間氷期に入り、現在もなお続いているのだ。
私たちの祖先を探る
人類の祖先である最初のヒト族誕生が確認されているのは約700万年前。ネアンデルタール人への進化は約43万年前であり、今の人類ホモ・サピエンスにつながるクロマニョン人は約30万年前以降にアフリカで進化し、世界に広がったとされる。つまり彼らは、厳しい氷期を越えて生き抜いた。
日本初の展示となるネアンデルタール人とクロマニョン人の頭骨。違いは明らか。クロマニョン人は脳を納める部分がはるかに大きい。その知能があって世界に広がり、今の私たちにつながっていった。
ただし、姿を消したネアンデルタール人の要素は完全に失われたわけではない。私たちの中にもネアンデルタール人のDNAは受け継がれている。ネアンデルタール人とクロマニョン人は交雑していたというのが現在の見解だ。
会場には両者の実物大像もある。ネアンデルタール人は『指輪物語』や『ナルニア国物語』などのファンタジーで、主役たちを助けてくれそうな気のいい雰囲気。クロマニョン人のほうは、現代でもついていきたいようなリーダーふうでかっこいい。
両者が使っていた石器なども多数展示されている。クロマニョン人の道具はずいぶん精巧になっていたこともわかる。
日本の氷河期・間氷期
最終氷期にも森林が広がっていた日本の本州以南には、食糧になる多様な大型哺乳動物がいた。全身骨格の化石が発見されているナウマンゾウ、ヤベオオツノジカ、ハナイズミモリウシは氷河期を代表する三大絶滅動物だ。
氷期の日本はもちろん今のかたちではない。北海道や九州南方は大陸とつながっていた。だからこそ人類も、多様な動物もやってきた。ナウマンゾウ、ヤベオオツノジカ、ハナイズミモリウシが絶滅したのは人々の狩りによる圧迫だけではなかったと展示は伝える。
2万年前以降、氷期が終わって間氷期に入る頃、大型哺乳類は大陸でも次々と絶滅する。それは温暖化によって食べるものがなくなっていったからだった。けれども人類は、海や森の多様な食料を摂ることで生き延びた。
日本の豊かな緑は、氷期から間氷期への植物のせめぎ合いから生まれた。寒い時には全島にあった植物が、間氷期になって寒冷な山に残ったのが高山植物だという。ある特定の山にしか残っていない種も多数だという。その多くは今、乱獲と温暖化のダブルパンチによって非常に厳しい状況にある。
苛酷な氷期を経て、今なお間氷期を生きる人類やさまざまな動物のあり方は、地球規模の気候変動に直面する私たちへ、大きな視点でのヒントを与えてくれるかもしれない。
展示はわかりやすく、小さな子どもたちにも楽しめる工夫もたくさんある。そして大人たちもまた、億年単位で生きてきた人類の、そして動植物の凄みを知るに違いない。


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