イグ・ノーベル賞 研究テーマ“シマウシ”

 ノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究に贈られることしの「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、日本からは農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究員らのグループが受賞した。その研究テーマは、「シマウマ」ならぬ「シマウシ」。

 「イグ・ノーベル賞」は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、人を笑わせつつ考えさせる研究に贈られる。

 日本時間の1月19日、ことしの受賞者が発表され、日本からは、農研機構で研究員を務める兒嶋朋貴さんらの研究グループが「生物学賞」を受賞した。

 研究グループは、シマウマが体のしま模様によって血を吸うハエからの攻撃を防いでいるとする研究結果に注目し、家畜の黒毛の牛に白黒の模様を描いて「サシバエ」や「アブ」を防ぐ効果があるかを調べた。

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 その結果、模様を描いた牛は何も描かなかった牛に比べて足や胴体に付いたハエの数が半分以上減ったほか、首振りや足踏みなどハエを追い払う動作も減った。

 この成果を応用することで、牛のストレスの軽減につながるだけでなく、虫刺されによる感染症を防ぐための殺虫剤の使用も減らせるという。

 一方で、牛のしま模様のペイントは数日で落ちてしまうため、長期的な持続性を持つ技術の開発が課題だとしている。日本人がイグ・ノーベル賞を受賞するのは19年連続である。

 血を吸う虫が寄りつきにくくなることを実験で確認

 ことしのイグ・ノーベル賞の「生物学賞」を受賞したのは、農業・食品産業技術総合研究機構の兒嶋朋貴研究員らのグループで、牛の体を塗料でシマウマのような模様にすることで、ハエやアブなど牛の血を吸う虫が寄りつきにくくなることを実験で確認した。

 実験は、兒嶋研究員が当時所属していた愛知県農業総合試験場が京都大学と共同で2017年から2018年にかけて行った。

 実験では、黒毛の牛を、何も塗っていない通常の状態、白い塗料で「シマウマ」のような白と黒のしま模様にした状態、白い塗料の代わりに黒い塗料を塗った状態の3つに分けた。

 そして、同時に並べて30分間放置し、ハエやアブなどの虫が牛の体に付着した数や、頭や尻尾を振るなど虫を追い払うような行動を取った回数をそれぞれ観察した。

 その結果、血を吸う虫の数は、平均で何も塗っていない牛が129匹、黒い塗料を塗った牛が112匹だったのに対して、白と黒のしま模様にした牛は56匹と半分以下だった。

 また、虫を追い払うような行動を取った回数は、30分あたりの平均で何も塗っていない牛が53回、黒い塗料を塗った牛が54回だったのに対して、白と黒のしま模様にした牛は40回で、25%程度少なくなった。

 研究グループは、実験から黒毛の牛をシマウマのような模様にすれば虫を介した感染症を予防したり虫に血を吸われることによる牛のストレスを軽減したりする効果が期待できるとしている。

 セレモニーでは農研機構の研究員らのグループがスピーチ

 日本時間の9月19日にアメリカ・ボストンのボストン大学で行われたイグ・ノーベル賞の授賞セレモニーでは、農研機構の研究員らのグループもスピーチを行った。

 はじめに兒嶋研究員が「同僚や友人、家族に感謝します。この受賞を糧にさらに研究を頑張りたいです」とあいさつした。

 スピーチの最中、共同研究者たちが虫の絵をつけた棒を振って虫がたかる演出を行い、兒嶋研究員がジャケットを脱いでシマウマ模様のシャツ姿になって虫を追い払うと、会場は大きな笑いに包まれた。

 スピーチの後、兒嶋研究員はNHKの取材に対し「このような場に立つとは思ってもいなかったので、ただただ驚いていたが、式に参加して受賞したことを実感した。何が起こるかわからない科学の面白さを子どもたちにもわかりやすく伝えていきたい」と話した。