太陽光発電は「エコじゃない」

 太陽電池の普及は「エコじゃない」といわれる。その背景には、パネル製造時のエネルギー消費やCO2排出、使用済みパネルの廃棄問題、大規模設置による自然環境への影響などがある。

 しかし、ライフサイクル全体で評価すると、従来の火力発電と比較してCO2排出量は少なく、またパネルのリサイクル技術の進歩や適切な運用により、環境負荷を低減し、持続可能なエネルギー源として活用できるというのが現在の考え方だ。問題点を確認しよう。

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 太陽光パネルの製造には、シリコン精製や結晶化、パワーコンディショナーの製造などで多くのエネルギーと資源が必要。この過程でCO2が排出される。 

 パネルには鉛やカドミウム、セレンなどの有害物質が含まれており、適切な処理が求められる。不法投棄による土壌や水質の汚染リスクも指摘されている。 

 メガソーラー(大規模発電所)の建設のために森林伐採が行われたり、生態系に影響を与えたりする可能性がある。 

 太陽光発電は「エコである」

 太陽光パネルの製造時と廃棄時のCO2排出はあるが、稼働中のCO2排出量がほぼゼロであり、ライフサイクル全体で見ると火力発電よりもCO2排出量は大幅に少ない。 

 太陽光パネルの製造に投入されたエネルギーやCO2は、システムの寿命(25~30年)と比較して短期間(1~5年)で回収できるとされている。 

 使用済みパネルから金属やガラス、シリコンなどの有用な物質を再資源化するリサイクル技術が進歩しており、環境負荷の低減に貢献している。

 太陽電池セルの細い線が電極で、その中に鉛が少し含まれている。また、カドミウム、セレンなどの有害物質も含まれているものもある。最近は鉛やカドミウム、セレンフリーの太陽電池セルも増えているが、これから廃棄される太陽電池セルの中に含まれる有害物質はどうなるのだろうか。

 まず、太陽電池セルと電極はあるもので保護されている。プラスチックの封止材で密封コーティングされ、更にガラスとバックシートで保護されている。だから、すぐに流出や拡散することは考えられない。

 太陽電池の95%はシリコン系であり、有害物質は含まれていない。5%の化合物系太陽電池にカドミウム、セレンが含まれているものがある。最終的に残った有害物質は最終処分場に埋め立てられることになる。

 太陽光は、持続可能な再生可能エネルギーであり、枯渇しないエネルギー源。エネルギー自給率の向上にもつながるのは間違いない。 

 太陽光発電の「エコ」かどうかの判断は、製造・運用・廃棄のライフサイクル全体を評価し、技術開発や適切な廃棄処理、環境への配慮を行うことで、エコな選択肢となり得る。


太陽光発電は本当にトクなのか? (マイコミ新書)
山下 和之
毎日コミュニケーションズ
2010-04-23