「ターニング・ポイントUSA」代表カーク氏の活動
9月10日、MAGA(アメリカを再び偉大な国に)運動の旗手として著名な保守系活動家チャーリー・カーク氏(31)が、ユタバレー大学で学生たちと討論するイベントの最中に銃撃されて死亡した。銃の所有が可能な米国の恐ろしさを感じる。
バイデン前大統領は殺傷能力の高い銃の禁止や、購入者の厳格な身元確認など規制強化を訴えてきた。トランプ大統領は「私が大統領である限り、誰一人として、あなた方の銃に触れることはできない」と語った。
カーク氏を追悼する式典が9月21日、アリゾナ州のステートファーム・スタジアムで行われた。トランプ大統領やヴァンス副大統領、ルビオ国務長官など、生前カーク氏と個人的な付き合いもあった重要閣僚らが追悼演説を行った。その中でいくつか印象的な場面があった。

イエス・キリストの言葉を引用
カーク氏の妻エリカ氏が30分ほどの演説を行うと、会場は感動で包まれた。エリカ氏は演説で、「チャーリーの死は早すぎましたが、彼は死を受け入れる準備もできていました」と述べる。先延ばしにしたことは何一つなく、困難だからと避けたり、苦痛にひるんだこともなく、「彼は悔いなく世を去りました。毎日できることに100%を尽くしました……それでも寂しい」。
カーク氏は、「この国では特に若者の状況に問題があり、新しい方向性が必要」と考えて、「西側の『迷える若者たち』を救いたいと熱望」していたという。「目的も信仰もなく生きる理由を見失った若者たち、空しい娯楽に人生を費やし、恨みと怒りと憎しみにとらわれた若者たち」を助けたかったからこそ、カーク氏は、「ターニング・ポイントUSA」という保守系団体を創設し、全米各地の大学で議論と対話を行う場を設けて、「彼らの家」として迎え入れようとしたと、エリカ氏は語る。
「彼は救いたかったのです。自らの命を奪ったあの若者と同じような者たちを。あの若者に向けて、十字架の上で救世主(イエス)はおっしゃいました。『父よ、彼らをお許しください。彼らは自分が何をしているのか分からないのです』。あの男を、あの若者を、私は許します」。エリカ氏が涙を流しながらそう言うと、集まった参加者たちはみな立ち上がって拍手をし、会場は感動に包まれた。
「罪を憎んで人を憎まず」と言うが、「憎しみに対して愛をもって接する」というのは、「宗教的な境地」にある人にしかできない。キリスト教の信仰を持つエリカ氏は、神は「憎しみを捨て愛を取れ」とおっしゃるだろうことを分かっているのかもしれない。
ターニング・ポイントUSAの新代表となったエリカ氏は、あらゆる活動をさらに大きくすることを約束。カーク氏と志を一つとしていたと語り、「彼のビジョンと努力で築かれたターニング・ポイントUSAの全てを彼の遺志の力で十倍に広げます」と述べた。
トランプ氏「私は敵を憎む」発言は正義の心から
またカーク氏の友人の一人でもあったトランプ大統領も、演説を行いった。トランプ氏は、「過激な左派は非常に危険なことをする」と主張し、暗殺事件の責任は過激な左派にあると批判。そして「チャーリーは高潔な精神と偉大なる目的を持った伝道者でした。敵対する相手を憎んでいませんでした。彼らの幸福を願っていました。そこが彼と私の違いです。私は敵対相手を憎み、彼らのためになることなど望んでいません。そこはエリカ、申し訳ない」と語り、カーク氏が命を懸けて守ろうとした約束を自ら果たしていくとも述べた。
米大手メディアからは「政敵を批判し、カーク氏暗殺の責任をまた過激な左派に押し付けた」「国民の分断を煽っている」などの批判が多く上がった。
ただ、その批判をそのまま受け取るべきではない。カーク氏がディベートや資金調達、組織のオーガナイザー(まとめ役)として天才性を発揮していたのは事実だが、一部米メディアが「殉教者としてのカーク氏」を過剰に演出しているように見えなくもない面もあ。またカーク氏が「本当に現代の英雄に近い評価に値する人物なのか」については、今後の時間の流れの中で明らかになってくるだろう。
演説の中でトランプ氏が「過激な左派」について長く言及したのは、トランプ氏がより高い見地から「悪を増長させてはならない」という正義の心を持つべきだというメッセージを発信したかったから。
宗教で理解できる2人の言葉
宗教では「邪悪なるものを『邪悪なるもの』として、キッチリと認識しなくてはならない。そして、その正義を争いのために使うのではなく、新しい未来の平和のために、道を拓いていくために使わなくてはならない。」という教えもある。
「神の正義は、『善悪を分け、悪を叩き潰す』ということだけではない。この地上に生きているものすべてを神は愛している。愛しているから、発言が、行動が、勇気が必要になってくる。黙っていてはいけない」という教えもある。行動が大切なのだ。中国の古典では行動の大切さを「百挙百捷」という。
トランプ氏は演説する際、「イエス・キリスト」ではなく、「神」や「クリエイター(創造主)」を引き合いに出す。トランプ氏の宗教観や正義観には、多くの人が考えている以上に普遍性がある。

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