東京-NY、宇宙経由で60分 往復1億円でロケット移動

 いよいよ宇宙旅行が民間でも楽しめる時代がやってくる。10月28日、日本旅行は地球上の2地点間を宇宙経由で高速移動するサービスを2030年代に始めると発表した。東京―米ニューヨーク間を60分で結ぶほどの速さで、26年度から優先申し込み権の受け付けを始める。価格は1人当たり往復で1億円程度を見込む。

 商用化に向け、再使用型ロケット開発ベンチャーの将来宇宙輸送システム(東京)と業務提携を結んだ。

 洋上の打ち上げ場から出発する計画で、東京と米国を結ぶ想定だが、地球上ならどの地点間でも60分以内で移動できるという。東京都内で記者会見した日本旅行の吉田圭吾社長は「宇宙輸送と観光の未来をつなぐ新たな出発点となることを願っている」と述べた。

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 まずは26年度から宇宙食の体験や宇宙関連施設の見学をする地上ツアーを始め、40年代には宇宙空間や軌道上に滞在するサービスを提供する計画という。日本旅行が商品開発や販売を担う。

 宇宙経由の高速移動、その驚きの仕組み

 飛行機で約12時間かかる東京とニューヨークを、たった60分で結ぶ。まるでSF映画のような話だが、これが現実になろうとしている。

 この壮大な構想は、一体どのような技術で実現するのだろうか。そして、なぜ宇宙を通るとそんなに速く移動できるのだろうか。

 その鍵を握るのが、今まさに世界中で開発競争が激化している「再使用型ロケット」という最先端の技術だ。

 なぜ宇宙空間を通ると、これほどの高速移動が可能になるのだろうか。理由は大きく2つある。

 ①空気抵抗がほぼゼロの世界:私たちが住む地上の上空には、大気と呼ばれる空気の層がある。飛行機が飛ぶとき、この空気の分子と衝突するため「空気抵抗」という力が発生し、スピードを出す妨げになる。

 しかし、宇宙空間はほぼ真空。つまり、ロケットの進路を邪魔するものがほとんどない。そのため、一度スピードに乗れば、地上とは比べ物にならないほどの超高速で移動し続けることができるのだ。

 ②地球を飛び越える最短ルート:飛行機は地球の表面に沿って、少しカーブを描きながら飛ぶ。一方、宇宙経由の移動では、一度大気圏を突き抜けて宇宙空間に出てから、放物線を描くように目的地の真上まで移動し、再び降下する。これは、地表をなぞるよりも短い「サブオービタル飛行」と呼ばれるルート。空気抵抗がないことに加え、この直線的な最短ルートを通ることで、東京から地球の裏側にあるニューヨークまで、わずか60分という劇的な時間短縮が実現可能になる。

 計画を可能にする核心技術「再使用型ロケット」とは?

 この宇宙を使った高速移動を実現するための最も重要な技術が「再使用型ロケット」。​従来のロケットは、一度打ち上げたらエンジンや燃料タンクなどを海に投棄する「使い捨て」が当たり前。1機あたり何十億円もするロケットを毎回新しく作るため、打ち上げコストは非常に高額だった。

 しかし「再使用型ロケット」は、打ち上げ後に機体を地上や洋上に垂直に着陸させて回収し、整備したうえで再び打ち上げに利用する。これにより、製造コストを大幅に削減し、まるで飛行機のように高頻度でロケットを飛ばすことが可能になる。この技術こそが、宇宙旅行や高速移動のコストを下げ、ビジネスとして成り立たせるための鍵だ。​

 この計画でロケット開発を担うのが、日本のベンチャー企業「将来宇宙輸送システム(ISC)」です。同社は、完全再使用を目指すロケット「ASCA(アスカ)」を開発している。海外では、米国のSpaceX社がすでに再使用型ロケット「Falcon 9」を実用化し、宇宙開発のコスト破壊をリードしている。日本でもホンダなどの企業が開発に参入しており、世界中で民間企業による技術開発競争が加速している。​

 今回の計画は、単なる移動手段にとどまらない。日本旅行は、2026年度から宇宙食の体験や関連施設を見学する地上ツアーを開始し、2040年代には宇宙空間や地球の軌道上に滞在する本格的な宇宙旅行の提供を目指している。

 また、人だけでなく貨物を運ぶ「宇宙輸送」も視野に入っており、実現すれば世界の物流やビジネスのあり方を根底から変える可能性がある。

るるぶ宇宙 (JTBのMOOK)
JTBパブリッシング
2021-03-30


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