トランプ大統領「10点満点で12点」

 10月30日、大統領が日本に続き韓国を訪問し、韓国・釜山の金海国際空港に隣接する金海空軍基地で、中国の習近平(シーチンピン)国家主席と握手を交わした。アメリカのトランプ大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談を振り返り、会談は「10点満点で12点だ」と述べた。

 また、トランプ氏が来年の4月に中国を訪問することで合意したと明らかにした。その後、習近平氏がアメリカを訪れるとしている。

 トランプ氏によると、会談では中国側がレアアースの輸出規制導入を1年間見送ること、アメリカ産大豆の輸入を大幅に拡大すること、合成麻薬「フェンタニル」の対策強化を行うことなどで合意した。

 これに対し、アメリカ側はフェンタニルの流入を理由に中国に課している20%の追加関税を10%にただちに引き下げるとした。

 トランプ氏はロシアとウクライナの戦闘停止をめぐる米中の協力についても話し合ったと説明しましたが、中国によるロシア産石油の購入に関しては話題にならなかったとしています。一方、台湾については「まったく話題にならなかった」と話した。

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 トランプ大統領、核実験の開始指示

 韓国を訪問中のトランプ米大統領は30日、国防総省に核実験の即時開始を指示したと表明した。中国の習近平国家主席との会談直前にSNSに投稿した。核能力を強化する中国とロシアをけん制する意図があったとみられる。

 米国は1992年を最後に爆発を伴う核実験を停止し、その後は臨界前実験にとどめてきた。トランプ氏が指示した実験の詳細は不明だが、米国が爆発を伴う核実験を再開すれば、国際的な緊張を高め、核軍拡が加速する恐れがある。

 トランプ氏は「米国は他国より多くの核兵器を保有している。ロシアが2位、中国は大きく離れて3位だが、5年以内に追い付くだろう」と説明。「他国の核実験計画を受け、戦争省(国防総省)に対し、対等な核実験を開始するよう指示した」と明らかにした。

 トランプ大統領、韓国の原潜建造容認

 韓国を訪れたトランプ米大統領は30日、韓国が原子力潜水艦を建造することを認めるとSNSへの投稿で明らかにした。29日の米韓首脳会談で、李在明大統領が原潜への燃料供給を許可するよう求めており、これに応じた形。トランプ氏は「われわれの軍事同盟はかつてなく強固だ」と強調した。

 現在、韓国は原潜を保有していない。過去にも原潜の導入が検討されてきたが、米国の同意が得られず断念した経緯がある。「悲願」実現に近づいたと言えるが、中国は警戒感を示している。

 ディーゼルエンジンを動力とする潜水艦に比べ、原潜は速度に優れ、長期の潜航が可能。李氏は現行の潜水艦では「北朝鮮や中国周辺の潜水艦を追跡する活動に限界がある」と説明。「核兵器を積載した潜水艦を造るのではない」とも述べ、トランプ氏に理解を求めていた。

 中国外務省の郭嘉昆副報道局長は30日の記者会見で「中国が望んでいるのは、米韓が核不拡散の義務を真摯(しんし)に履行し、地域の平和を促進することであり、その逆ではない」と批判。中国の国防政策はあくまで「防御的なもの」だと主張した。

 トランプ氏の投稿によると、原潜は米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの造船所で建造される予定。同造船所は昨年12月に韓国のハンファグループが買収しており、米韓の造船協力の象徴とされる。

 ロシアが原子力魚雷「ポセイドン」の実験成功

 一方、ロシアのプーチン大統領は29日、核兵器搭載型の原子力魚雷「ポセイドン」の実験が28日に行われ、成功したと述べた。

 ロシアのプーチン大統領は29日、核兵器搭載型の原子力魚雷「ポセイドン」の実験が28日に行われ、成功したと述べた。ロシアは21、22両日に原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」の発射実験と、核兵器の使用を想定した演習も実施。ウクライナとの戦闘を巡って西側諸国の圧力に屈しないという意思を示したとみられる。

 プーチン氏は、ウクライナとの戦闘で負傷したロシア兵らを29日に訪問したモスクワの病院でポセイドンの実験に成功したと発言し「これほどのものは他にない」とその能力の高さを誇示した。

 ロシアメディアによると、ポセイドンは全長20メートル、直径1.8メートル、重量100トン。軍事専門家らによると、射程1万キロ(6200マイル)、時速185キロ程度と推定され、使用すれば沿岸地域に壊滅的な被害を与える可能性があるという。

 プーチン氏は2018年にポセイドンとブレベスニクを初めて公表した。米国のミサイル防衛網整備計画や、北大西洋条約機構(NATO)拡大の動きに対抗するものだとしている。ロシアを「張り子の虎」と呼び、圧力を強めるトランプ米大統領に対し、ロシアが核兵器を含む軍事面で依然として互角で、核軍縮を巡るロシアの提案に応じるべきだとの意図も込められているとみられる。

 日本は原子力潜水艦の保有が政策合意

 それにしても、トランプ大統領がアジアを訪問している間に何度も出てきた原子力兵器の話題。日本は唯一の被爆国。アジアに対しては原子力兵器を話題にして圧力で対応しようという米国の雰囲気を感じなくもない。

 10月24日、自民党と日本維新の会が連立政権をつくるにあたって、政策の合意書を取り交わした。その中に「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有についての政策を推進する」という項目がある。「VLS」はミサイルの垂直発射システムのことで、「次世代の動力」とは原子力のこととみられる。つまり、垂直にミサイルを発射できる原子力潜水艦を持つこと。

 これは中国などに対抗する日本の防衛力強化の一環という位置づけで合意された政策だが、戦後日本の原子力政策の大転換にもなる。

 自維政権が原潜を持ちたがるのには、理由がある。今、海上自衛隊が保有している潜水艦はディーゼル発電機とリチウムイオン電池などの蓄電池が動力源になっている。ディーゼル発電機には燃料が必要、燃やすには酸素が必要。海中には燃料も酸素もないので定期的に海上に浮上したり、浅いところからシュノーケル(吸気筒)を出して酸素を補給したりしなければならない。敵に見つかりやすくなる。

 一方、原潜はウラン燃料の核分裂によって発生する熱で水蒸気を発生させ、水蒸気の力でタービンを回して動力を得る。燃料の補給も酸素の補給も必要がないため、長期間深い海に潜っていられる。つまり、敵に見つかりにくいということ。また、従来型の潜水艦に比べてスピードが速いため、敵の反撃をかわして逃げ切りやすい。

 最近、中国海軍の空母などが行動範囲を広げている。そうした行動を抑止するには、潜水艦の追尾が必要で、それには原潜が適している。

 ただ、原潜にも弱点がある。ひとつは騒音が大きいこと。原子炉の冷却水を循環させるポンプから出る音。音が大きいと敵に発見される可能性が増える。

 また、建造費や維持管理にかかる費用が莫大になることもある。安全な原子炉をつくる費用は高騰するし、廃炉にも巨額の費用が必要になる。新たな人材育成も必要になり、その費用も大きなものになると考えられる。

 原子力船「むつ」の失敗

 いったん事故が起きると取り返しのつかないほどのダメージを受けるリスクもある。原子力船「むつ」の失敗が物語っている。「むつ」は日本で初めての原子力船として69年に進水した。観測船として政府が主導して建造したもの。原子力の平和利用のひとつとして社会の大きな注目を集めた。

 しかし、74年に初めて核燃料を臨界にして太平洋を試験走行していた時に放射線漏れ事故を起こした。人に直接の被害はなかったが、母港になっていた青森県むつ市の漁民は風評被害を恐れて帰港に強く反対し、「むつ」は帰る港がなった。その後、長崎・佐世保の造船所が受け入れ、修理をしたのち、航行したが、92年には廃船となった。それ以来、日本では原子力を動力とした船は建造されていない。

 現在、世界で原潜を持っているのは、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インドの6カ国。インドを除く5カ国は第2次世界大戦の戦勝国で、核不拡散条約(NPT)の中で核保有国として認められている国だ。インドは核保有国だが、NPTに入っていない。しかし、ロシアが協力することで、原潜を保有することができている。

 今は、オーストラリアがアメリカの供与を受けて原潜を保有しようとしている。保有すれば、7カ国目になる。アメリカ、インド、オーストラリア、日本は「クアッド(Quad)」と呼ばれる日米豪印戦略対話をおこなう4カ国。中国の海洋進出に対抗する枠組みだ。日本を除く3カ国が原潜を持つ中、日本が世界で8カ国目の保有国となっても状況的にはおかしくない。

 しかし、その前に原子力基本法、莫大な費用、人材育成、近隣諸国の反応といった問題が横たわる。いずれにしても国民が納得するしっかりした議論が欠かせない。

 たいげい型潜水艦「そうげい」進水

 10月14日建造中の防衛省向け潜水艦「そうげい」の進水式を、本田防衛副大臣、星海幕装備計画部長、伊藤防衛装備庁装備官をはじめとする防衛省関係者ほかのご出席のもとに行った。命名ならびに支綱切断は、本田防衛副大臣により行われた。

 「そうげい」は全長84.0m、幅9.1m、深さ10.4m、基準排水量3000tあるディーゼル電気推進のいわゆる通常動力型潜水艦。乗員は約70名、プロペラひとつの1軸推進式で、リチウムイオン電池搭載により優れた潜航性能を備えているほか、女性が乗務することも当初から想定して、相応の設備を設計段階から備えている。

 起工は2023年3月28日で、今後、艤装や各種試験を実施したのち、2027年3月に引き渡しの予定である。たいげい型潜水艦は、フランス海軍が運用するリュビ級原子力潜水艦を凌ぐ大きさで、ディーゼル推進の通常動力型潜水艦としては世界最大級。

 外観形状は、従来のそうりゅう型潜水艦とほぼ変わらないものの、探知能力や静粛性が一層向上しており、潜水艦戦闘管理システムや、ソーナー装置(艦首アレイ、側面アレイ、えい航アレイなど)、TCM(Torpedo Counter Measure:潜水艦魚雷防御システム)を搭載している。

 主要装備は艦首に装備した6門の魚雷発射管で、ここから国産の「18式魚雷」や対艦ミサイル「ハープーン」を発射することが可能。

 なお、「そうげい」は漢字では「蒼鯨」と書く。意味は「鮮やかな蒼い鯨」で、海上自衛隊で用いるのは初めてであるとともに、旧日本海軍でも艦名に用いたことはないため、国産の戦闘艦艇では初の艦名になる。