小さな太陽を造る壮大な実験

 このSF映画に出てくるような装置はなんだろうか。この装置は、世界最大のトカマク型核融合実験炉である。イギリスのオックスフォード近郊にあるトカマク型核融合実験装置である。

 1983年から運転を開始した。世界で初めて重水素とトリチウムを核融合の燃料として運転した最初のトカマク型核融合炉である。

 現在でも核融合で生成したエネルギーの世界一の記録を保持する。1997年1秒間連続的に16MWを生成し、核融合で4MWを4秒間生み出した。JETは現在はヨーロッパ、日本、アメリカ、ロシアから研究のために100人の科学者が施設を利用する。


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 トカマク型(Tokamak)とは、高温核融合炉の実現に向けた技術の1つで、超高温のプラズマを閉じこめる磁気閉じ込め方式の1つである。

 将来の核融合炉に最も有力とされるプラズマ閉じ込めの方式の1つで、これまで製作された多くの核融合実験装置や現在計画中の国際熱核融合実験炉ITER(イーター)でも採用されている。磁気閉じ込め方式には、トカマク型の他に、ステラレータ型またはヘリカル型と呼ばれる形式もある。

 核融合のしくみ

 核融合のしくみは実に単純だ。宇宙で輝く恒星がエネルギーを生み出すしくみだからだ。

 私たちの恒星である太陽は、およそ46億年前にほぼ一つの成分でできた雲から生まれた。その成分とは、宇宙に最も豊富にある最も基本的な元素、そう、水素である。この水素の雲は、重力の作用で回転する巨大な球体となり、どんどん圧縮されて、ついには中心部の温度がおよそ1500万℃に達した。

 温度と圧力がここまで高まると、水素原子が原子核と電子に分離し、プラズマと呼ばれる状態になる。プラズマは固体、液体、気体に次ぐ物質の第4の状態で、私たちが普段目にするのは稲妻やネオンサインなどに限られるが、太陽系の質量の99%以上を占めている。

 その大半は太陽に蓄えられている。太陽の中心部のプラズマでは、4個の水素の原子核が融合してヘリウムの原子核に変わる現象が、数えきれないほどの頻度で起きている。太陽にはふんだんに水素があるので、今後も50億年にわたって核融合反応が起き続ける。

 太陽がエネルギーを生成する能力は想像を絶する。世界中の人間が何十万年もふんだんに消費できる量をたった1秒間で生み出せるのだ。しかも、その仕組みはいとも単純で、人間にも模倣できそうだ。この地球上に小さな太陽を造って、そのパワーを引き出せたらどうなるか?

 理論上は、クリーンで安価な電力をほぼ無尽蔵に生み出せる。わずか1gの燃料で、石油8tに相当するエネルギーを得ることができる。核融合反応では二酸化炭素は排出されないから、この方式で発電すれば地球温暖化と環境破壊を止められる可能性もある。核融合発電は世界を救う技術になる。

 ありえない話のようだが、南フランスの広大な建設サイトではすでに長年、それを実現する試みが進んできた。高度な物理学や工学の知識に支えられ、多様な文化圏の人々が協力して取り組む前代未聞の壮大なプロジェクトだ。予測不可能な要素もはらんでいるが、より良い未来を築く夢が実現するかもしれない。

 核融合発電を実用化する課題

 核融合発電は安全性が高く、資源の枯渇問題にも対応可能な発電方法だ。宇宙では普通に起きている現象を地球上で実現するためには、技術面やコスト面の課題を抱えている。

 核融合によるエネルギー生産は、1920年代から進められてきた歴史のあるトピック。しかし、約100年が経過した現在も実用化はされていない。

 核融合発電の実用化が実現しなかった理由のひとつは、プラズマ制御にハードルがある。原子を核融合させるためには、燃料をプラズマ状態にして融合させるが、プラズマは超高速で移動するため、どう制御するかが長年の課題だ。

 近年ではいくつかのプラズマ制御の実証実験が行われ、臨界プラズマ条件は達成されている。ただし、核融合を起こす超伝導コイル、プラズマの排熱機構、ブランケットなど、技術開発が必要な項目はいまだ多い。

 核融合発電は、必要な設備や技術の開発に大きなコストがかかる点もデメリットだ。日本・アメリカ・中国・韓国・ロシア・インド・EUが参加するITER(イーター)計画では、核融合実験炉の建設に約2.5兆円が投資されている。あくまで実験炉段階の建設コストで、膨大な金額だ。

 核融合エネルギーで発電するメリットは大きい

 核融合エネルギーの利用方法として、主に検討されているのが発電だ。核融合発電には4つのメリットがある。

 1.燃料資源が豊富:海水から燃料を採取できる  2.環境にやさしい:二酸化炭素や放射性廃棄物が発生しない  3.安全性が高い:暴走や爆発の心配がない  4.発電効率が良い:燃料1gが石油8tに相当する

 これらのメリットから核融合発電は、持続可能な社会に調和する究極のエネルギー供給方法と考えられている。

 同じく「核」を利用した発電方法として、原子力発電がある。核融合発電が核融合反応を発生させるのに対し、原子力発電では核分裂反応を発生させる点が大きく異なる。核分裂発電では、使用済み燃料の再処理にともなって、高レベル放射性廃棄物が発生する。一方核融合発電では、高い放射能レベルを有する使用済み燃料がそもそも発生しない。



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