COP30「パリ協定からの後退」

 ブラジルで11月10日から開催されていた国連の気候変動会議(COP30)が11月22日に閉幕し、深刻化する気候変動への適応を支援する資金を3倍に増やすことで合意した。だが、根深い分裂で協議が決裂しそうになる場面もあり、化石燃料からの脱却に向けたロードマップ(工程表)では合意できなかった。

 このような脱化石燃料にストップをかけたのは、中国とアメリカの意向が大きい。トランプ大統領は、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す「パリ協定」からの脱退手続きを大統領令で出し、化石燃料の生産・輸出を促す方向に舵を切った。

 トランプ大統領は「科学的にも人為由来の二酸化炭素量と地球温暖化の因果関係ははっきりしていない」「脱炭素政策は、製造業や運輸業で企業のコストを膨らませており、国力低下を促すばかりだ」と主張している。

 また、中国は世界第二位の経済大国に成長しながら「パリ協定に基づき、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を減少に転じさせる(ピークアウトさせる)という目標と2060年までにカーボンニュートラル(CO2排出量と除去量を差し引きゼロ)を達成することを目指す」として目標を先延ばし、いまだに発展途上国の姿勢を崩さない。

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 世界の2大経済大国が、このような状況であるから脱化石燃料の技術開発や、COP30などの国際会議での理想は素晴らしいと思うが、現状での地球温暖化対策は、経済の発展を阻害するものでしかない。これだけ世界にはイデオロギーの違う人たちがいるのに、パリ協定で一つになるには無理があるというあたり前の結論になった。

 非現実なパリ協定

 石油や石炭、天然ガスなど、化石燃料由来の二酸化炭素(CO2)排出量が2025年、過去最多記録を更新するという見通しを、国際研究チームがまとめた。

 ブラジルで気候変動枠組み条約第30回締結国会議(COP30)の開催に合わせて、13日に英エクセター大学のピエール・フリードリングシュタイン氏が主導する研究チームが、CO2排出量の研究結果をまとめた報告書を公開した。

 報告書では、CO2排出量は381億トンと過去最高を記録する見通しだ。パリ協定では、産業革命以降の平均気温の上昇を「1.5度」に抑えるために、30年までに世界全体の排出量を10年比で45%削減する必要があると定めている。今回の報告書では、排出削減のペースが遅く、今のままでは4年後に目標が達成不可能になると警告している。

 現実に、世界の化石燃料由来のCO2排出で最大の排出量を誇る中国は、25年も123億トンと、前年比で0.4%増加する見通し。10月に習近平国家主席は「2035年までに温室効果ガス排出量を7~10%」減少させるとの数値目標を初めて発表したが、研究者からは、パリ協定の水準に達するには、中国が35年までに「50%以上」削減する必要があり、不十分との指摘が複数上がっている。

 また、長期的にも、北米におけるデータセンターの急増などで産業や建築部門の電力需要が増加するとみられ、化石燃料を手放すのは困難になるとの予測も出ている。

 10月に米コンサルティング大手のマッキンゼーが、50年以降も化石燃料が主流になるとのレポートを発表。電力需要は50年までに20~40%増加すると予測され、再生可能エネルギーへの転換ペースを上回るため、石油や石炭、天然ガスは、依然としてエネルギーミックスの41~55%を占める、と予想している。

 経済発展とパリ協定

 冷静に考えるべきは、各種レポートでも明らかになっているように、「パリ協定の達成はそもそも不可能」であるという客観的事実があること、それを無視しての削減は、各国の産業を破壊することになりかねないということ。

 実際、パリ協定では、多くの国がCO2の排出量を実質ゼロにする期限を2050年としたが、中国は「2060年」に遅らせて設定。その理由に、「35年に近代化の目途がつく」「工業化の途上にある」ことなどを上げていた。中国が、脱炭素をけん引するポーズを取りつつ、「その取り組みが経済発展を阻害する」ことを警戒していたことは明らか。

 また、パリ協定の参加国は5年に一度、削減目標を国連に提出するよう定められているが、今年1月の期限には9割の国が間に合わず、計画を立てること自体が困難になっている。

 日本政府とパリ協定

 日本政府が期限後の2月下旬に遅れて提出した削減目標は、従来の「積み上げ型」の発想では間に合わないとして、最終目標である50年度から逆算し、35年度に13年度比60%減、40年度に73%減を目指すという目標を設定した。ただ、具体的な取り組みに裏付けられている目標ではなく、結局、スローガンに終わりかねない。

 そもそも、「人為的なCO2の排出量の削減は人類の存続にかかわる大問題」という見方に、科学的な裏付けがない。脱炭素政策を「経済に悪影響」とするトランプ氏は大統領就任直後の26年1月に、パリ協定脱退を宣言。7月には米エネルギー省の気候作業部会が発表した報告書では、気候モデルによる温暖化予測は誇張されたもので、実際にはCO2の増加が地球の気候に与える影響は「検出不可能なほど小さい」こと、極端なCO2削減は害のほうが大きいことを指摘している。

 10月末には、これまで「気候による大災害を防ぐため、温室効果ガスの排出をゼロにすべき」と主張していたビル・ゲイツ氏が、自身のWebサイトに「気候変動が人類の滅亡につながることはない」との主張を掲載したことが大きな話題となった。

 今回のCOP30では、「意図的なデマ」を流したり、事実を隠して温暖化対策を遅らせたりする「偽情報」への対策が大きなテーマとなった。12日には、ブラジルと国連などが共同議長を務める「気候変動の正しい情報イニシアティブ」が提案して、気候変動をめぐる「偽情報」への対策を促進する宣言を採択し、フランスやドイツ、カナダ、デンマークなどが署名している(日本は署名せず)。

 しかし、今こそ「パリ協定の目標達成に意味があるのか」ということや、「そもそも、CO2など温室効果ガスの排出量が、気候変動にどれほどの影響を与えているのか」ということを真正面から議論する必要がある。高市政権はメガソーラーの規制強化に前向きですが、アメリカと足並みをそろえ、「脱炭素政策」そのものを見直し、撤退を進めるべきだ。

パリ協定で動き出す再エネ大再編 (B&Tブックス)
瀧口信一郎
日刊工業新聞社
2017-03-26