霞ヶ浦で食用にされた外来種
茨城県霞ヶ浦では、シラウオやテナガエビを捕食し、霞ケ浦の〝厄介者〟とされる特定外来生物のアメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)が増殖。記録的なワカサギ不漁など漁業者の苦境が続く中、これを食用にしようと茨城県や地元漁業者が、商業化に道筋をつけたいと考えている。
「アメリカナマズの試食、いかがですか」水戸市のスーパー「ヨークベニマル元吉田店」で、カレー風味のフライや塩焼きにしたアメリカナマズの試食販売が行われた。恐る恐る味見した女性客は「おいしい」。驚いたような表情でつぶやいた。ナマズは初めて食べたという。
男性客も「おいしいし、相当安い」と笑顔。ただ、「どう料理したら良いのか想像つかない」とも話した。同社茨城北ゾーンの吉田武スーパーバイザーは「白身魚のようにやわらかく味は淡泊。さまざまな味付けに合い、子どもから大人まで食べやすい」と説明する。

食材としてのアメリカナマズは日本ではなじみが薄い。人気のサケやブリのように消費者に浸透するかは不透明だ。県は今回、市場の反応を探る試みとして同社など県内の小売店、水戸市の飲食店「市場食堂」など飲食・宿泊店、同県かすみがうら市のつくだ煮販売「出羽屋」など2次加工業者に約310キロ分の切り身などを提供し、値付けは各社に一任。費用は県が負担した。
一大勢力
霞ケ浦では1981年、アメリカナマズの養殖が始まった。県水産試験場内水面支場(同県行方市玉造甲)によると、稚魚数の調査は2000年に始まり、04年には4年前の11倍に急増、霞ケ浦の一大勢力となった。生態系などに悪影響を与えるとして、特定外来生物に指定されている。
県などによると、テナガエビやワカサギを捕食し、ワカサギを取るために仕掛けた網の中で食べてしまうこともある。鋭いトゲで網を壊す上、売り先もほとんどなく、漁業者の間では厄介者とされてきた。
霞ケ浦の水産資源の柱は、シラウオとワカサギ、テナガエビだ。県などによると、アメリカナマズがほとんど利用されてこなかったのは、既に人気の魚がいるため食材として認知されないアメリカナマズを取る必要がなかったという。
新たな転換期
転機が訪れたのは昨年。霞ケ浦のワカサギが歴史的な不漁となった。テナガエビも減る中、危機感を募らせた漁業者がアメリカナマズに着目した。霞ケ浦漁協と県は昨冬、県内の水産加工業者と協力し、切り身や煮付けといった加工品の試作を始めた。漁業者も、臭みが少なく加工しやすい取り方を模索している。
「霞ケ浦の漁業は新たな転換期にある」。同漁協の沼口京介事務長は指摘する。近年は漁師の高齢化による引退、新規参入者や水産資源の減少など課題が山積する。アメリカナマズの商用化は「霞ケ浦での漁業を次の世代につないでいくための取り組みだ」と力を込める。県霞ケ浦北浦水産事務所の中谷仁祟係長は「商業ベースに乗り、地元漁師の経営の下支えになるよう取り組みを進めたい」と話した。
びわ湖に迫る新たな脅威
ところ変わってここは琵琶湖。60を超える固有種が生息し、豊かな生態系をもつ日本最大の湖、びわ湖。琵琶湖では二ゴロブナやホンモロコといった湖魚は、郷土料理にも使われ、地元の人たちに親しまれてきた。
こうした魚にとって、ブラックバスやブルーギルといった侵略的外来種の魚が脅威となってきた。 県は漁業者と連携して駆除を続けていて、その生息量は19年前の平成18年には推計で2405トンでしたが、去年は358トンと大幅にその数を減らすことに成功した。
しかし今、新たな脅威がびわ湖に迫ってきているといる。食欲旺盛で繁殖力が強い外来ナマズの存在だ。ことし10月、京都府の天ヶ瀬ダム流域で行われた外来ナマズの生息調査した。この場所はびわ湖につながる瀬田川の下流にあるが、去年まで調査は行われていない。滋賀県の水産試験場が京都府などに働きかけたことで、初めて実現し、この夏から行われている。
この日も水産試験場の職員が、はえなわにかかった外来魚を次々と釣り上げた。捕獲されたのは、北アメリカ原産の外来ナマズ「チャネルキャットフィッシュ」。チャネルキャットフィッシュは8本のひげや鋭いひれが特徴で、成長すると体長が1メートルを超えることもある。
食欲旺盛で、魚やエビ、昆虫などを主食としているほか、産卵後も親が卵を見守るなど繁殖力が強いことでも知られている。
環境省は、生態系に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとして、2005年に野外への放出などを禁止する「特定外来生物」に指定。さらに2018年には、対策を急ぐ必要があるとして「緊急対策外来種」とした。
迫るナマズ 高まる危機感
食用や観賞用として、1970年代に国内に持ち込まれたチャネルキャットフィッシュ。滋賀県では2001年に初めて確認され、10年ほど前から瀬田川の下流で徐々に捕獲されるようになった。
滋賀県はこれまでの調査で、天ヶ瀬ダムで繁殖したチャネルキャットフィッシュが瀬田川を遡上(そじょう)することで滋賀県側に入り込んでいるとみていた。滋賀県側でいくら駆除を行っても京都府側で増えていれば、“いたちごっこ”になってしまう。
そう考えて、京都府などの許可を得て、まずは大元とみられるダムでの生息状況の調査に乗り出した。夏からの調査の結果、産卵が可能な大型の個体が多く見つかるなど、県が見込んだとおり、ダムの流域に住み着いていることが確認された。
チャネルキャットフィッシュは繁殖力が強いだけに、このまま放っておくわけにはいかないと、滋賀県や地元の漁業者は警戒を強めている。
滋賀県水産試験場 大植伸之さん「天ヶ瀬ダムにどれだけ生息しているのか明らかにしたうえで、京都府などと連携協力しながらできるだけ数を減らして、びわ湖への影響ができるだけないように、究極ゼロを目指して頑張りたいと思います」
びわ湖で増やすわけにはいかない
霞ヶ浦の事例をいわば教訓として、滋賀県と地元の漁業者はびわ湖につながる瀬田川で駆除を強化している。
漁業者からは、1日で数百キロのチャネルキャットフィッシュを捕獲した日もあったという話を聞く。びわ湖では繁殖はしていないものの、すぐ手前まで生息範囲が広がっている。ただ、危機感を持つ漁業者などはまだ限られているというのが取材での印象で、ギリギリで踏みとどまっている今こそ、対策を急ぐべきだ。
一方で、外来魚の対策というと「ただ駆除するより食用として活用しては?」という声もあり、霞ヶ浦など実際に活用している地域もある。
しかし、まだチャネルキャットフィッシュが繁殖していないびわ湖で対策に取り組む関係者からは、「釣りや産業として定着すると完全な駆除ができなくなる」とか「食用になるほど増えたらびわ湖にしかいない在来の魚がいなくなってしまう」という切実な声も聞かれる。
人の都合で国内に持ち込まれた外来種。びわ湖の在来種を守るためにも持ち込んだ人間の手で取り組む責務がある。
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