自覚症状のない腎臓病

 腎臓病は怖い。自覚症状がほとんどないからである。  東京に住む三国歳三さんは、37歳のときに、痙攣(けいれん)、片頭痛、胃が締め付けられるような感覚を訴えて救急搬送された。

 実は1カ月ほど前から疲労と倦怠感に悩まされていたのだが、ただの風邪だろうと軽くみていた。しかし症状はしだいに悪化し、ついに無視できないところまで来てしまった。医師たちが三国さんの血圧を測ると260/150もあった。彼が若く、いかにも健康そうに見えたため、この数値は全員に衝撃を与えた。

 診察の結果、三国さんは進行した「慢性腎臓病(CKD)」で、それが急速に悪化して腎不全になっていたことが分かった。「私は2週間の入院を経て退院しましたが、その後は透析を受けるようになりました」と彼は言う。

画像

 現在、世界の慢性腎臓病の患者は約7億人と推定され、1990年以降で90%以上も増加している。米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)によれば、米国では人口の15%にあたる3550万人が慢性腎臓病だが、患者の10人中9人は自分がこの病気だと知らない。

 日本腎臓学会によれば、日本では2024年に成人の5人に1人にあたる約2000万人が慢性腎臓病だと推定されており、2005年推計の1330万人より増えている。

 腎臓病の原因

 腎臓病の主な原因は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病である。これらの病気は腎臓の血管を傷つけ、機能低下を招く。また、慢性糸球体腎炎などの腎臓自体の病気や、薬剤、遺伝的要因なども原因となる。

 喫煙、多量の飲酒、運動不足、ストレスなどは生活習慣病を引き起こし、腎臓病を悪化させる。 また、水分補給が不十分だと、腎臓に負担がかかる。加齢によっても腎機能は低下する傾向がある。

 予防には生活習慣の改善が大切だ。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、ストレス管理が重要。また、定期的な健康診断で尿検査(尿蛋白、尿潜血)やeGFR(糸球体濾過量)をチェックし、異常があれば早めに医療機関を受診しよう。

 高血圧や糖尿病がある方は、自己管理をしっかり行い、定期的に専門医の診察を受けることが大切だ。

 腎臓病の治療法

 ほとんどの種類の慢性腎臓病に対して、新しい治療法が登場しているのだ。早い段階で気づくことができれば、有効な選択肢は複数ある。

 腎臓病の技術革新としては、小型化・携帯可能な透析機器が開発されてる。ウェアラブル人工腎は常に装着できる小型の透析装置で、自由な生活を送りながら治療できるようになることが期待されている。

 また、iPS細胞を用いた腎臓の再生医療、そして異種移植(遺伝子改変ブタの腎臓を移植)といった再生医療技術が期待されている。

 その他にも、腎機能低下を抑制する新しい治療薬「SGLT2阻害薬」や、慢性腎臓病治療薬「フィネレノン」などの革新的な医薬品も登場している。