金属を含む医薬品
金属を含む薬には、胃潰瘍薬(アルミニウム、亜鉛)や制酸薬(アルミニウム、マグネシウム)、抗がん剤(白金)などがあり、金属の特性を利用して効果を発揮する。しかし、一般に重金属と呼ばれる重い金属(比重が4~5以上の金属で、金、銀、鉛、水銀、銅、鉄など)は、カドミウムや水銀など、人体に有害なものも多く含まれるため注意が必要である。
今回、アルツハイマー病にリチウムが効く可能性があり、不足は発症を促す恐れがあることが、ヒトの脳の分析とマウス実験で明らかになった。ちなみにリチウムは軽金属だ。
リチウムは、電池などのさまざまな技術に使われる一方、長年にわたり、双極性障害(躁うつ病)や一部のうつ病の有効な治療薬としても利用されてきた。しかし最近まで、リチウムは生理的に不可欠なものだとは考えられていなかった。

現在では、少量のリチウムがアルツハイマー病による脳の損傷や認知機能の低下を食い止め、さらには回復を促す可能性があることが、研究で示されている。その仕組みについてはまだ解明の途中だが、リチウムはわれわれの体、とりわけ脳の健康を保つうえで欠かせない元素のひとつかもしれないという認識が広まりつつある。
気分を安定させる効果
生命に欠かせない元素としては炭素、酸素、水素、窒素、リンなどが知られている。このほか、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウムなども重要な役割を果たしている。だがリチウムは長い間、ラジウムなどとともに、何か問題が起こらない限りは体内に入れない方がよいものと考えられていた。
軽くて銀色をしたこの金属が1817年に発見されると、科学者らは「一般的な神経過敏」などの精神疾患の治療薬として使えないか研究するようになった。20世紀初頭には、リチウムを使った製品が次々に登場した。清涼飲料の「セブンアップ」は初めの頃、成分にリチウムを含んでおり、それが名前の由来だという説もある。
「“アップ”はリチウムの心理的作用を、“セブン(7)”はリチウムの原子量を指していたと考えられます」と、米ハーバード医科大学の神経科学者ブルース・ヤンクナー氏は言う。
同時代に特許を得た医薬品や強壮剤の多くと同様、この飲料に含まれるリチウムの量は非常に多く、毒性があった。現在のセブンアップには、この「アップ」をもたらす成分は含まれていない。
リチウムの研究は一時下火になったものの、1949年にオーストラリアの医師ジョン・ケイドが双極性障害の治療にリチウムを用い、その効果を確認した。1970年には米国で承認され、やがてリチウムは「気分を安定させる」治療におけるゴールドスタンダード(最も優れた標準)になった。
リチウムが躁やうつの状態をやわらげる正確なメカニズムは、はっきりとはわかっていない。しかし、どのように作用するのかは二の次であり、重要なのは、これが命を救っていることだ。
リチウムと認知症予防
日本の調査でも、リチウムが認知症の予防に役立つ可能性が近年指摘されている。水道水に含まれる微量なリチウム濃度によって認知症の発症率が変化することが海外で報告されている。現在、日本におけるアルツハイマー型認知症の有病率と水道水リチウム濃度の関係を調べている。
微量なリチウムが衝動性・攻撃性を抑える効果をさらに確かめるため、犯罪率(刑法犯認知件数/人口×100)との関連を調査した。九州の全274市町村を対象に、犯罪の危険因子とされている他の社会的要因で補正した結果、水道水リチウム濃度が高い地域は犯罪率が低いことが明らかになった。これらの結果は、リチウムが水道水に含まれる微量な濃度でも自殺や犯罪といった衝動的な行動に予防効果があることを示唆する。
また、リチウムと自殺予防に関する臨床研究によると、自殺企図群は自傷群や対照群よりも有意に血中リチウム濃度が低いことを確かめている。現在さらに症例数を増やして、研究を続けている。リチウムは微量でも抗自殺効果を有する可能性が示唆されている。
医薬品「リーマス」として市販
炭酸リチウムは躁(そう)病・躁状態治療薬で、精神神経用剤というグループに属し、「リーマス」という商品名で販売されている。躁状態とは、極端に気分が高揚し、開放的になり行動力が高まる状態のことをいう。
炭酸リチウムは、1949年、オーストラリアのジョン・ケード(J.F.J.Cade)によって抗操作用が発見されて以来、各国で臨床研究が行われ、現在では様々な国で躁病・躁状態の治療薬として使用されている。
日本では、1968年には炭酸リチウムが躁うつ病(双極性障害)をはじめ、情動疾患を伴う精神病に対して治療効果があるとわかっており、従来まで使われてきた治療薬にはない抗操作用だったため、製品化の要望が非常に強くあった。大正製薬株式会社はその医療ニーズを重視し、炭酸リチウムの製品化の開発に着手し、1980年に「リーマス」として販売に至っている。
炭酸リチウムは適切な管理下で使用する限り、非常に優れた治療効果が得られつつ、安全なお薬であることがわかっています。効果が得られるまでには1~2週間程かかるが、有効率は高く、70~80%の患者で抗躁効果が得られると報告されている。非常に優秀なお薬のため、炭酸リチウムはWHOが定めている現代的な医療水準を維持するために必須と考えられる医薬品類である、必須医薬品モデルリストにも収載されている。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。

��潟�<�潟��