人類が保有するウイルス
人類には解決できない問題がたくさんある。新型コロナウイルス感染症もその一つ。たとえ症状が治っても、後遺症により、疲労感、ブレインフォグ(脳の霧)、息切れ、動悸、抑うつなどの幅広い症状に悩まされる。
ヘルペスウイルスのEBウイルスもその一つ。このウイルスは世界人口の大部分が一生のうちに感染するとされている。 このウイルスの主な感染経路は唾液を介したもの。キスや食器の共有、咳やくしゃみなどで感染が広がる。
多くの場合、EBウイルス感染は子供の頃に起こり、その際は特別な症状が出ないか、軽い風邪のような症状で終わることがほとんど。厄介なのはその後だ。
EBウイルスは、一度感染すると体内の神経節に潜伏し、免疫力の低下時などに再活性化して症状を引き起こすウイルスで、現代の医学ではウイルスを完全に排除する方法はなく、抗ウイルス薬による治療で症状を軽減できる。 我々はウイルスとうまく付き合っていくしかないのだ。
EBウイルスの覚醒
科学者は何十年も前から、大半の人が子どものときに感染する一般的なウイルスが後年、「全身性エリテマトーデス(SLE)」と呼ばれる、体じゅうのほぼすべての臓器を損傷しうる慢性的な自己免疫疾患を引き起こすと考えてきた。しかし、このウイルスがなぜSLEを引き起こすのか、その正確な関連性について、はっきりとしたことはわかっていなかった。
今回、米スタンフォード大学の新たな研究により、その「なぜ」を説明するこれまでで最も明確な手がかりが示された。
「世界の成人のおよそ95%はEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)に感染しています。つまり、われわれはほぼ全員が、このウイルスを持っているのです」と、同大の免疫学・リウマチ学教授で、論文の最終著者であるウィリアム・ロビンソン氏は言う。
EBウイルスは、抗体を作る免疫細胞であるB細胞(Bリンパ球)の中に長期的にすみ着くことがわかっている。最初の感染後は通常、休眠状態を維持するが、11月12日に学術誌「Science Translational Medicine」に発表された研究によると、EBウイルスはまれに覚醒して、B細胞の働きを「書き換え」、全身性エリテマトーデスにつながる連鎖反応を引き起こすことがあるという。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデスは、免疫系が誤って自分の体の臓器や組織を攻撃してしまう慢性自己免疫系疾患だ。「関節、皮膚、腎臓、血液細胞、さらには脳にまで影響が及ぶことがあります」とロビンソン氏は言う。
米国では150万人、世界全体では少なくとも500万人がこの病気を患っていると推定される(編注:「難病情報センター」によれば、日本全国の患者数は約6~10万人で、指定難病の一つ)。患者の割合は大きく女性に偏っている。
症状は非常に幅広いが、倦怠感、関節痛、腫れ、発疹が多く見られる傾向にある。より重症なケースでは、腎臓、肺、心臓、中枢神経系が炎症を起こす場合もある。
「臓器の恒久的な損傷や障害につながるだけでなく、早期死亡のリスクを増大させると考えられます」と、スタンフォード大学の免疫学・リウマチ学者で、研究の筆頭著者であるシェイディ・ユニス氏は言う。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。

��潟�<�潟��