「暗黒物質」が放った可能性あるガンマ線発見

 宇宙の大きな謎とされる暗黒物質=ダークマターが放った可能性のあるガンマ線を見つけたと、東京大学の研究者が発表した。ガンマ線は銀河の周りにある球状の領域(ハロー)で検出されていて、今回の発見が暗黒物質の正体を解明する糸口となるか注目されている。

 ガンマ線は放射線の一種で、透過力がありエネルギーを持つ。ウランなどの放射性元素の放射性崩壊で発見された。宇宙では天体が爆発するときに発生し、ガンマー線バーストと呼ばれている。

 今回、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡 (フェルミ望遠鏡)のデータが用いられた。フェミル望遠鏡は、ガンマ線観測用の天文衛星である。2008年6月11日、NASAによって打ち上げられ、2008年8月から運用が開始された。アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スウェーデンの政府機関、研究組織による共同研究である。

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 フェルミ望遠鏡は、2013年8月11日に当初予定していた5年間の観測ミッションを終了し、2018年まで観測を続ける延長ミッションに移行した。この5年間で、1,200以上のガンマ線バースト、500回以上の太陽フレアを観測した。2025年現在も運用中だ。

 ガンマ線衛星フェミルの観測データ

 東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授は、宇宙空間に広く存在すると考えられているものの直接観測できない未知の物質、暗黒物質の正体を解明しようと、候補の1つとされる、仮説上の素粒子が衝突して消滅する際に放つと予想されるガンマ線に着目した。

 戸谷教授は、天体観測衛星「フェルミ」がおととしまでの15年間に集めた、天の川銀河の周辺から届くガンマ線のデータを使い、他の天体などから放射されるガンマ線の成分を一つ一つ取り除いた上で詳しく解析した。

 その結果、「ハロー」と呼ばれる銀河の周りにある球状の領域で、ガンマ線の放射が広く検出された。

 このガンマ線のエネルギーの特徴が、暗黒物質の候補の素粒子が消滅する際に放つと予想されるガンマ線の特徴と似ていることなどから、戸谷教授は暗黒物質が放ったガンマ線を初めてとらえた可能性があるとしている。

 戸谷教授は「暗黒物質を解明する上での糸口になるかもしれない。多くの研究者に結果を確認し検証を進めてほしい」と話している。

 非常に良い着眼点 解析手法の信頼性が焦点

 暗黒物質について研究している東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉教授は、「今回の研究で非常におもしろいのは、銀河の中心を避けてわざと別の方向を観測しているところで、ハローと呼ばれる星がほとんどないところを見ているので、天体起源のガンマ線である可能性は非常に低いと思う。

 その場所からくるガンマ線は弱いため、観測するためには長い間蓄積したデータを使わないといけない。2008年に打ち上げられたフェルミ衛星の15年におよぶデータに注目したというのは、非常に良い着眼点だと思う」としている。

 その上で「天体から来るガンマ線を解析作業で丹念に差し引いたあとに残ったガンマ線を見つけたのが今回の研究で、その解析作業がきちんとできているかというのがいちばんの焦点だ。研究に使用しているデータは公開されているので、この論文を受けて、すでにたくさんの研究者が解析を始めていると思う。手法によって答えが変わってくるようだと信頼性を欠くので、この2か月くらいで今回の解析手法が十分だったのかが見えてくる可能性が高いと思う」と話している。




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