寄生植物の寄生するしくみ

 寄生植物と聞くと、日本人にはあまり馴染みがないが、世界では農作物を枯らせるストライガなど、見るのも嫌なほど大変な問題になっているものがある。寄生植物はどのように植物に寄生するのだろうか。

 寄生植物は「吸器(きゅうき)」という特殊な器官で他の植物(宿主)に侵入し、維管束を連結させて水や栄養を奪うしくみがある。

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 宿主の出す「ストリゴラクトン」という植物ホルモンを感知して、発芽・接近し、吸器を宿主の細胞と細胞質レベルで接続し、道管(水)や師管(栄養)を直接つなぐ。これにより、光合成できない全寄生植物も、光合成する半寄生植物も生存できるようになる。

 ふだん土中で休眠している寄生植物の種子は、宿主の根から分泌されるストリゴラクトン(発芽誘導物質)を感知すると発芽する。

 寄生植物は、このストリゴラクトンに反応して宿主の根に向かって成長する(屈性)。宿主の根に到達すると、吸器(haustorium)と呼ばれる特殊な器官を形成する。

 吸器は宿主の表皮細胞に付着し、特異的な遺伝子を発現させながら細胞間を侵入していく。吸器の先端は宿主の維管束(水や養分が通る管)に到達する。吸器の細胞の一部が宿主の道管(木部)に分化し、寄生植物自身の道管と連結する。

 これにより、宿主が光合成で作った糖(炭水化物)や水、ミネラルなどが直接寄生植物に横取りされる。一部の全寄生植物では、師部も連結し、より多くの炭素源を奪う。

 農業への影響

 寄生が農業生産を阻害する要因となる主な植物は、ハマウツボ科に属するストライガ属(Striga spp.)とオロバンキ(Orobanche spp.)がある。

 共に、根に寄生するため除草剤が使用できない。 ストライガ属はアフリカ、南アジアの熱帯地域から亜熱帯の半乾燥地域に分布し、同地域での主要な穀物であるソルガム、トウモロコシ、ミレットなどを宿主とし、アフリカを中心に被害が生じている。

 一方、オロバンキは中東から地中海沿岸を中心に分布するが、分布域は拡大傾向で温帯から亜寒帯まで広い。宿主はマメ科植物、ヒマワリ、トマト、タバコ等で、オーストラリアでも被害が拡大している。

 ストライガ属は半寄生植物だが、オロバンキは全寄生植物でクロロフィルを持たない。日本ではマメダオシが畑の作物につく例がある。ヤドリギやヒノキバヤドリギは有用樹種に害を与える場合がある。

 日本の農作物に被害を与える主な寄生植物には、ヤセウツボ(ハマウツボ科)などの根寄生雑草がある。これらはトウモロコシ、イネ、ソルガムなどの主要作物から水や栄養を奪い、収量低下を引き起こす。特にヤセウツボは、宿主植物の根から分泌されるストリゴラクトン(SL)を認識して発芽・寄生する特殊なシステムを持ち、農業における深刻な問題となっている。

 寄生植物が「仲間」に寄生しないしくみ

 自分以外の植物から水や養分を奪う寄生植物が、同種や近縁の植物には寄生しない「自己回避」の仕組みを解明したと、奈良先端科学技術大学院大学などの研究グループが発表した。寄生植物に取り付かれた植物(宿主植物)は、思うように成長できなくなる。研究グループは、今回の研究成果をもとに農作物への寄生を抑える技術を開発し、農業被害の軽減につなげたいとしている。

 寄生植物が自己回避をすることは知られていたが、その仕組みは謎だった。奈良先端大の吉田聡子教授、峠隆之教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの白須賢副センター長、京都大学生存圏研究所の飛松裕基教授らでつくる研究グループは、モデル植物として研究が進む寄生植物コシオガマを用いて自己回避の仕組みを調べた。

 寄生植物は「吸器(きゅうき)」という特殊な器官を宿主植物の維管束に侵入させ、水分や養分を奪う。吸器は宿主植物の根などが分泌する吸器誘導物質(HIFs)によって形成されるが、通常、寄生植物自身や近縁の寄生植物のHIFsでは吸器が形成されないために自己回避が起きる。

 研究グループは、自分自身のHIFsに反応して吸器を形成するコシオガマの突然変異体を調べた結果、HIFsと糖を結びつける特殊な酵素「UGT72B1」が壊れていることを発見した。

 寄生植物のUGT72B1は宿主植物のUGT72B1よりも幅広い種類のHIFsに糖をつけることができ、糖がついたHIFsは吸器を形成する能力を失うことを突き止めた。この仕組みにより、寄生植物が自己回避しているという。

 寄生植物はアフリカや欧州など世界で年間10億ドル以上の農業被害をもたらしている。吉田教授は「今回の研究成果は寄生植物が自己と他者を分子レベルで識別する仕組みの理解につながり、宿主植物は自らの仲間だ、と寄生植物に錯覚させることで寄生を抑える新たな技術を開発できる可能性がある」と述べている。

 研究成果は10月23日付の米科学誌サイエンスに掲載された。