植物の三大栄養素といえば?
植物の肥料の三大栄養素というと窒素(N)やリン(P)、カリウム(K)である。このうちリンはリンを多く含む「リン鉱石」を溶かしたり焼いたりして作られている。だが、リン鉱石は世界でも限られた場所でしか採れず、国際価格や情勢によって安定供給が難しい面がある。
リン酸は、主に根の発育や花・実の形成を助ける役割を持っている。しっかり根が張ると、作物は水や養分をぐんぐん吸い上げ、強い株に育ちやすくなる。だが、もしリン鉱石の化学肥料がなかったら、どうしたらよいのだろうか?
化学肥料以外で、リン酸成分を多く含むものには、鶏糞堆肥や豚糞堆肥、バッドグアノ(自然発酵したコウモリの糞から作る)、骨粉、家畜糞焼却灰に草木灰などがあり、リン酸肥料の代用品としてあげられる。すべてもとが生物由来のリン肥料である。
どうして、生物にはリン酸が多いのだろうか?実は、細胞内でリン酸は重要な物質として利用されている。リン酸を最も多く含む物質には DNA や RNA などの核酸やエネルギー源であるATPがある。
今回、植物が自分のDNAを分解して栄養分にすることを発見した。岡山大学、神戸大学、広島大学の研究チームが植物を使った実験で答えを引き出した。
栄養が足りなくなった植物は
私たち人間の三大栄養素は、たんぱく質、糖質、脂質だ。では、植物の三大栄養素はなんだろう。答えは、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)。植物は、太陽の光を使う「光合成」で水と二酸化炭素から栄養分を作り出すことができるが、それ以外にもこの三つの栄養素が必須なのだ。そのため、これらの栄養素を外部から吸収して使っているのである。
じつは、植物の中でリンを多く含む物質の一つがDNAである。遺伝情報を子孫に伝えていく重要な物質ではあるが、外部から栄養分として吸収するリンが足りなくなれば、自分のDNAを分解してリンを再利用できるのではないだろうか。窮地に追い込まれた植物は、大切なDNAを、実際に分解して栄養に使っているのではないだろうか。
研究グループは、細胞内でエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」という小さな器官と、光合成によりエネルギーを生み出す「葉緑体」が持っているDNAに注目した。これらのDNAは必要以上にたくさん存在している。それならば、遺伝情報の担い手としての働き以外に、なにか別の役割があるのではないか。そう考え。
DNA分解酵素がないとリン不足に
研究グループはまず、シロイヌナズナとポプラを使い、これらのDNAが実際に植物自身の酵素によって分解されることを突き止めた。もし、この酵素がなくてDNAが分解できなくなれば、植物の体にどんな異変がおこるのだろう。
それを確かめるため、この酵素をつくれないように遺伝子を操作したものと何も操作していないもの(野生型)の両方を、リンが欠乏している条件のもとで栽培してみた。
すると、酵素をつくれないものだけ葉が茶色に変化した。これは、リンが足りないときに植物に現れる症状の一つだ。酵素をつくれる野生型は葉の様子に大きな変化はなく、リン不足になっていなかった。どうやら、植物は本当にDNAを分解して栄養であるリンを使おうとしている。
さらに詳しく調べたところ、酵素をつくれるものの場合は、リンが極端に不足したとき、酵素をつくるしくみが活発に働いていた。やはり、これらの植物は、リンが不足すると、DNAを分解する酵素を活発に働かせて、出てきたリンを栄養として利用する性質をもっていることに間違いなさそうだ。
DNAを分解するこの酵素は年に一度、必ず活躍する時期がある。それは、11月ごろの落葉のときだ。植物は寒い冬を乗り越えるため、余計なエネルギーを使わないように自分の葉を落とす。じつはこのとき、必要なくなったDNAを分解し、リンを栄養分として回収している。この研究で、DNAは遺伝情報に関わるだけでなく、落葉のとき以外にも、不足したリンの供給源になっていることがわかった。
新たなリン資源としてのDNA
リンが足りなくなったとき、自分自身の中に余っているDNAからリンを取り出して使える。これは、植物が過酷な環境を生き抜くために大事なことだ。そしてこれは、私たちの未来にとっても重要なことだ。リン資源枯渇の抑制と、リンが環境に及ぼす悪影響を軽減できる可能性がある。
リンは植物の栄養に不可欠な要素であり、肥料として与えられることもある。実際に、農業生産を上げるために毎年たくさんのリンが肥料として使われており、かつてないほどのスピードでリン資源が消費されている。そのため、リンの原料となる鉱石の枯渇が心配されている。もしリン資源がなくなってしまうと、新しくリン肥料を作ることは難しくなり、農業生産量はかつてないほど低下してしまう。
それだけではない。肥料として使ったリンが大量に河川に流れ込めば、リンは水中の藻の栄養分でもあるので藻が大量に発生する。その結果、藻が水中の酸素を消費して、そこに住む魚やそのほかの生物が死んでしまうという環境汚染も発生する。
こういった問題を解決するために、自分のDNAを分解してリンを取り込むという植物のたくましさをもっと生かせば、リン肥料がなくても良く育つ作物を開発できるのではないか。今回の研究には、そうした期待も寄せられている。
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