日本からパンダがいなくなる日

 東京・上野動物園の双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイ(ともに4歳)の1月下旬の中国返還が発表されてから一夜明けた16日朝、同園には双子を一目見ようと多くの人が訪れた。

 2頭の姿を一目見ようと、上野動物園には、開門時間よりも1時間以上早い午前8時すぎから多くの人が列を作り、開門と同時にパンダ舎に詰めかけた。

 午前10時過ぎ、シャオシャオが屋外に出てくると、来園者から大きな歓声が湧いた。レイレイは別室でのんびり竹を食べていた。混雑緩和のため観覧時間は1分程度に制限され、来園者は名残惜しそうに双子の様子を目に焼き付けていた。

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 動物園では、混雑をさけるため16日から観覧制限を設けていて、観覧できるのは、1人1分、先着4800人程度となっている。

 「シャオシャオ」と「レイレイ」は、16日もふだんと変わらず活発にパンダ舎の中を歩き回っていて、訪れた人たちは、限られた時間の中で「かわいい」などと歓声をあげながら、愛らしい姿を撮影していた。

 50代の女性は「シャオシャオは、まったりしてかわいかったです。全国でパンダが0頭になってしまうのは、ファンとしてはさみしい限りです。今の情勢では厳しいのかもしれないが、長い目で見て、また来てくれたらうれしい」と話した。

 長年パンダの飼育に関わってきた上野動物園の鈴木仁飼育展示課長は「双子の誕生は、動物園にたくさんの経験や感動を与えてくれた。残りの1か月も、とにかく健康に元気に暮らして、無事に中国に着くことを願っている。そのために、最大限の努力をしていきたい」と話した。

 国内では、神戸市の王子動物園のメスのパンダが去年3月に死んだほか、ことし6月に和歌山のテーマパークにいた4頭が中国に返還されていて、現在は、国内では上野動物園のパンダ2頭のみとなっている。

 2頭が返還されれば、53年前の昭和47年に日中の国交正常化を記念し、パンダが来日して以来、はじめて国内でパンダが見られなくなる。

 また、東京都は中国側に新たなパンダの貸与を求めているが、現時点で正式な回答は得られていない。

 上野動物園のパンダ

 上野のパンダは日中の国交が正常化した1972年、中国政府からランラン(メス)とカンカン(オス)が贈呈されたのが起こりで、その後、貸与方式に代わったが絶えることなく来園者たちを楽しませてきた。

 その後、昭和55年にはメスの「ホァンホァン」が、昭和57年には、日中国交正常化10年を記念してオスの「フェイフェイ」が中国から贈られた。

 そして、昭和61年、動物園は長年取り組んできた繁殖を成功させ、日本生まれとして初めてメスの「トントン」が誕生した。

 昭和63年にはオスの「ユウユウ」が誕生しこの「ユウユウ」との交換で平成4年に北京市の動物園からオスの「リンリン」がやってきた。「トントン」は平成12年に死ぬまで14年あまりを動物園で過ごし愛らしい姿で人気を集めた。

 平成15年には初めて中国以外の、メキシコからメスの「シュアンシュアン」がやってきたが2年後に帰国。そして、平成20年4月に「リンリン」が死に、上野動物園からは、パンダが1頭もいなくなった。

 パンダがいなくなったことは来園者数にも影響しました。平成20年度の来園者はおよそ289万人で前の年度よりも2割近く落ち込む。

 そして、平成23年、再び中国からオスの「リーリー」とメスの「シンシン」が贈られ、再び、上野動物園でパンダが見られるようになった。この「リーリー」と「シンシン」は、平成29年、初めて自然交配での出産に成功しメスの「シャンシャン」を、令和3年にオスの「シャオシャオ」とメスの「レイレイ」が誕生した。

 そして、「シャンシャン」はおととし2月に繁殖の適齢期を迎えたことから、また、両親の「リーリー」と「シンシン」も去年9月に高血圧の治療のため中国に返還された。

 国内では、神戸市の王子動物園のメスのパンダが去年3月に死んだほか、ことし6月に和歌山県のテーマパークにいた4頭が中国に返還されていて、現在は、国内では上野動物園のパンダ2頭のみとなっている。

 パンダ外交に中国共産党政権

 シャオシャオとレイレイの貸与期限は来年2月で、検疫の問題もあり返還が前倒しされた。問題は交代のパンダが来ないことだ。

 担当の東京都公園緑地課は「中国野生動物保護協会には『今後もこのパンダプロジェクトを継続していきたいと思ってます』とは伝えています。国を経由して何か伝えているということは特に承知していないですが、協会には(こちらの意向は)伝わっています」というが、現状、正式な回答はない。

 だが中国は直接の回答をしなくとも高市早苗首相の台湾有事発言から始まった日中の緊張激化をパンダの貸与中断に結び付けることを隠していない。

 高市首相発言から12日後の11月19日、北京市共産党委員会機関紙、北京⽇報は中国の対日政策研究者が「中⽇間の緊張が続けば、中国が⽇本に新たなパンダを貸与することは恐らくないだろう」「⽇本はパンダがいなくなる状況に直⾯する」と発言したと報道している。

「今年4月に超党派の日中友好議員連盟が訪中した際、パンダの新規貸与を中国側に求めています。当時中国外交部は『日本が中国の保護事業を支持することを歓迎する』と表明しており、パンダを巡る態度は高市首相発言を機に180度変わってしまったようです」と全国紙外報部記者は話す。

 中国共産党の見解

 我々日本人の多くは「パンダにまで政治が口出しして欲しくない」と思うが、驚くべきことだが中国ではそれが通用する。中国では全て政府が決めることができる。それが共産党一党独裁国家の正体だ。

 高市首相の台湾有事に関する答弁をめぐり、新華社系時事アカウント「牛弾琴」が11月15日、高市首相を「中国内政への重大な干渉」など「7つの罪」を犯したとして非難した。

「牛弾琴」は、中国外交部領事部が最近日本への渡航を避けるよう国民に注意喚起したことについて、その理由を以下のように分析している。

「今年に入って日本社会で中国国民による犯罪が多発し、在日中国国民が襲撃される事件が相次いだ」(だが、実際にそのような襲撃事件はない)。

「それに加え、最近、高市首相が台湾問題に関する露骨な挑発発言を行い、日中人的交流の雰囲気を著しく悪化させている」「そのため、在日中国国民の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」という。

 中国側の筋違いな高市批判

「牛弾琴」の記事では、高市氏が「台湾問題」という"センシティブ"な問題に関して、少なくとも「7つの罪」を犯したと分析している。以下、言いがかりに近いとも言える分析を紹介しながら、適宜、補足していきたい。

第1に、「これは中国の内政への重大な干渉であり、高市氏は台湾海峡問題への武力介入を示唆し、国際法と国際関係の基本原則に著しく違反している」という。

だが、そもそも中国共産党は台湾本島を一日たりとも統治していないので、台湾に関して「内政」と言うには無理がある。

第2に、「戦後の国際秩序を破壊している」という。しかし、国際秩序の破壊者はむしろ中国ではないか。

第3に、「『1つの中国』原則と日中4つの政治文書精神に背く」としている。

この「1つの中国」は、中国共産党と中国国民党が産み出した"幻想"である。台湾海峡両岸の実態として、かつては「2つの中国」、現在は「1つの中国、1つの台湾」という事実は疑う余地もない。

第4に、「日中関係の政治的基盤を破壊した」。

第5が、「中国人民の感情を深刻に傷つけた」。だが中国共産党は76年以上、中国を支配しているが、未だ1度も普通選挙を行っていない。どのように「人民の感情(民意)」を推し量るのか。

第6に、「最近、高市氏は習近平主席と会談したばかりで、『台湾問題』に関して日本は1972年の『日中共同声明』の立場を堅持すると表明した」。

第7に、「間違いを犯しても改めない。中国側が繰り返し厳正に抗議した後も、日本側は誤った発言を撤回することを拒み続けている」。そのような事実はない。

 このように、政府の主張をこれまでの歴史や事実を無視して、無理やり押し付けるのが共産主義の怖いところだと思う。

 政治家が国会で、もしもの場合どうするかを議論するのはあたり前のこと。例えば、かつては「宇宙人がいたらどうするか」も議論されている。高市政権に何の問題もない。国会の答弁の内容で、パンダまで貸さないという中国政府こそ内政干渉であり、反省していただきたい。

 残念ながらこういう自説のみを主張する国や相手とは距離を置くしかない。これが世界の実情である。パンダはしばらく戻ってこない。



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