瞳を拡大、駅を特定

 2019年10月、日本でアイドル活動をする女性にストーカー行為をはたらき、わいせつ行為をしたとして逮捕、起訴された男が、警察の取り調べに対し、この女性の写真の瞳に映っていた景色から住所を特定したと供述した。

 被告は、この女性がインターネットに投稿した顔写真の、瞳に映っていた景色から、駅を特定したと話している。この事件を受け、日本ではサイバーストーカーの脅威について議論が噴出した。

 被告は9月1日夜、駅で被害者を待ち伏せし、自宅まで後を着けてわいせつ行為をはたらいた。地元メディアによると、佐藤被告は9月下旬に逮捕された。被害者は21歳で、被告はこの女性の大ファンだったと供述しているという。

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 被告はこの女性の写真で瞳を拡大し、地図情報サイト「グーグル・ストリートビュー」を使って駅を特定。また、被害者が自宅で撮影した動画を分析し、カーテンの位置や自然光の入り方などからマンションのどの階に住んでいるかを把握していたという。

 この事件を受け、ソーシャルメディアに自分の暮らしを高解像度の写真や動画で投稿することに警鐘を鳴らす声が出ている。

 SNS投稿ですぐに居場所が

 この場所、どこか分かるだろうか?あまり特徴がないようで、ぱっと見ただけでは分からない場所でも、最近では、誰でもすぐに特定できるようになっている。

 災害時などには役立つ可能性がある一方、悪用されるリスクも。クリスマスや年末年始が近づき、家族や友人との写真や動画をSNSにアップする機会も増える時期、知ってもらいたいリスクやつきあい方をまとめました。

 しばらく前までは、ネット上の情報を自分で調べる必要があり、一定のスキルが必要だった。それが、いまでは……。

 今回、サタデーウオッチ9の荒木さくらアナウンサーが「写真の撮影場所はどこか」、グーグルの生成AI「Gemini」に聞いてみた。

 たとえばこの写真。ものの数分で、写っている看板などから撮影場所が「特定」された。さらに、次の写真も……。やはり、すぐに回答が。サンタクロースの像や文字の断片から特定された。

 最近の生成AIは、画像を分析する能力も飛躍的に向上している。AIは、特徴的な建物、道の形など、写真に含まれるさまざまな要素を分解して、判断していた。

 では、こちら。一見すると特徴がなさそうでも……。柵の色や木々の様子から、場所が言い当てられてしまった。

 回答が間違っているケースや、場所が少しズレているものもあったが、質問を数回繰り返したり、「ヒント」を与えたりすると特定に至った。

 サイバーセキュリティーに詳しい神戸大学の森井昌克名誉教授は、最近の生成AIは写真の要素を抽出して推論ができるようになっていると指摘する。

 森井名誉教授 「(AIは)世界中の写真をすべて記憶していて、そこから撮影した写真を照合し、特定できます。何が写っているかによって、いつ写真を撮影したのかも推定することも可能です。最近では、写真から情報を取り出して、推論もできるようになりつつあります」

 災害現場で人命救助にも

 こうしたAIの技術は、災害時にも活用されている。防災システムを開発している東京のIT企業「Spectee」は、地方自治体などの公的機関やインフラ企業、報道機関などに向けて、災害時の迅速な被害確認や、救助活動などに活用できるサービスを提供している。

 災害の発生時に、公的機関の気象データや道路・河川カメラなどの情報に加え、災害に関連するSNSの投稿を収集する。

 投稿の画像や文章を解析することで、災害や事故の発生場所を特定し、被害の状況などをリアルタイムに捉え、利用者に提供している。

 画像に建物や店舗、看板など、特徴的な要素が3つ写っていれば、場所を特定できる。2020年に大分県で水害が発生した際に、複数の救助活動につながった例もあったほか、去年の能登半島地震でも被害が大きかったエリアを把握でき、救助に生かされたという。

 さらに、災害時に多くみられるフェイク情報を排除するのにも、AIを活用する。投稿画像が加工されていないかどうかや、別の災害時の画像が使い回されていないかなどを確認。最後は人の目によるチェックも行っている。

 Spectee 村上建治郎社長 「災害時に非常に重要なのが場所の特定です。人が投稿から場所を探そうとすると時間がかかってしまいますが、AIだと全体のデータベースから合致する場所を1分もかからずに特定できます。最近では、私たちが一から災害の学習データを集めなくても、AIが画像からどのような災害が起きているのか読み取り、自動化して利用者に知らせることができるようになっています」

 一方で、こうした技術は悪用される懸念もあると指摘する。 村上社長 「場所の特定は災害時は非常に重要ですが、日常のなかで悪用されれば誰がどこに行ったか、どこにいるかがすぐに分かる危険性もあり、私たちとしてもジレンマを感じています。ふだんと災害時で活用を分けて考える必要があるのではないでしょうか」

 あなたも被害に?「特定」されるリスクは

 これまでにも、インフルエンサーやYouTuberなどの著名人、それに、ネットで「炎上」した人など、場所や人物が「特定」されて、被害に遭ったケースはしばしば起きている。

 誤った情報が一部で広がり、無関係の人が「特定」されてしまうようなことも繰り返されている。中には、事件に巻き込まれるケースも。

 2022年には、札幌市の会社役員の男性がSNSの投稿から自宅を特定されて、ブランド品の財布やバッグなどを盗まれる空き巣の被害に遭った。

 逮捕された窃盗グループは、SNSに投稿された車などの写真から住んでいるマンションを特定し、SNSでの書き込みから男性が留守だと把握していた。

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