2026年はどんな年になるのか

 2026年はどんな年になるのか。日本のマスコミを見ても記事の内容は、中国寄りか、アメリカ寄りかという2者択一的な立場で書かれており、日本独自の考えが第一面で見られる機会は少ない。

 特に世界の経済は、アメリカの資本主義を中心に回っていて、トランプ大統領でなくても、地球温暖化対策として、再生エネルギーをエネルギー政策の中心にするのは、経済発展の観点から厳しいということがわかってきた。

 トランプ大統領は、平和の大統領として世界の紛争を終わらせようとしている一方、突然ベネゼエラに攻め込んだり、関税で自国の利益を主張したり予想外の行動をすることが多いのでアメリカがどうするのかは、今年も重要である。

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 落ち着いて分析してみると、関税も国内の製造業を高めるために必要な政策であり、失業率を下げるのに結びついている。過去の歴史を見ても失業率が高まるときに恐慌は起きており、トランプ政権の間は恐慌は起きないのではないかと思われる。ベネぜエラに対する攻撃もまだ分析しきれていないが、何か重要な意図があるのかもしれない。そこでアメリカの今後を予想してみたい。

 アメリカから見た今年の展望

 アメリカは本年、建国250周年を迎える。国の節目の年として、全国各地で、祝賀行事や特別展、文化イベント、記念庭園の建設などが行われ、「America 250」と名付けられた公共事業は2028年ごろまで続く予定だ。

 2025年12月、トランプ大統領の妻・メラニア夫人が監修したホワイトハウスのクリスマスデコレーションでは、建国250周年を祝って、あちこちに「America 250」が表示されると共に、メインのクリスマスツリーの両側には、ジョージ・ワシントン初代大統領とトランプ大統領の肖像の額が飾られた。

 今年6月から7月にかけては、世界最大のスポーツイベント、FIFAワールドカップ2026が、カナダ、メキシコ、アメリカの3カ国にまたがる16の都市で開催され、史上最大規模となる48カ国のチームが参加し、104試合が行われる。

 ワールドカップは「スポーツ外交」とも位置付けられており、トランプ大統領は、この大会を非常に重視し、ホワイトハウスにタスクフォースを設置して(大統領令)、去年秋から開催国や参加国の大使やサッカー選手などを招いて、親善会議やイベントなども行われている。

 実は「宗教立国」アメリカ

 一つは、「信仰の復活」とでもいうべきものだ。日本ではほとんどマスコミは宗教にについて触れることはない。その点、マスコミは中国寄りの考えを持っている。

 ところが、トランプ支持者の大半は福音派を中心とするクリスチャンで占められている。彼らは、大統領選の数カ月前から、大統領選を「霊的戦い」("Spiritual warfare")と位置付け、全国各地で「祈りの会」の集会などが開催された。

 この年は、聖書の売上が急増し(2024年10月末時点で前年比22%増)、若者を中心に教会に行く人が急激に増えたため、「スピリチュアル・ブーム」「信仰(宗教)の復活」などと呼ばれた(国境を超えた世界的現象)。

 トランプ氏は、大統領選の約4カ月前(7月13日)に起きた暗殺未遂事件以降、あらゆる講演やスピーチで「全能なる神のご加護」("The grace of Almighty God")と公言し、神への信仰心が深まったとも語り、アメリカを再建するために神から命を与えられたという趣旨の発言を繰り返した。

 トランプ氏は、第2次政権発足後、「ホワイトハウス信仰局」(White House Faith Office)と「信教の自由委員会」(Religious Liberty Commission)を創設し、建国の父たちの原則に基づき(大統領令に明記)、定期的に公聴会を行うなどして、リベラル系の学校や行政機関などから信教の自由を守る活動を行っている。

 バイデン政権時代に浸透したLGBTQの啓蒙、特に、トランスジェンダーの啓蒙促進の政策をトランプ氏が撤廃したのも、「神は男女の2種類の性別を創った」という宗教的信念に基づいている。

 減税政策や規制緩和、また、政府内の無駄や不正をなくす政府改革も、以前からトランプ氏が講演会などで繰り返し強調してきた言葉である「自由は神から与えられたものであり、政府から与えられたものではない」という考え方が基礎にある。

 この理念は、1776年の独立宣言文に込められている「建国の精神」と同じものだ(「全ての人間は平等であり、創造主[Creator]から『生命、自由、及び、幸福の追求』という不可侵の権利を与えられている」と明記)。

 また、トランプ氏が頻繁に訴えてきた理念として「コモンセンス(常識)革命」があり、これは当たり前のことを当たり前にすべきだという考え方だ。バイデン政権で促進されたDEIプログラム(マイノリティを強制的に優先)から能力主義への転換も「コモンセンス」に基づく改革であり、元男性のトランスジェンダー(肉体は男性のまま)が女子スポーツに参戦すべきでないという方針も「コモンセンス」の問題としている。

 「平和の大統領」

 第1次トランプ政権との最も大きな違いとして、トランプ氏は、選挙運動の時から、ラリーなどで、ロシア―ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの戦争を筆頭に「戦争を終わらせる」「第3次世界大戦の勃発を防ぐ」と何度も強調し、大統領就任後は、多くの和平合意のために奔走している。

 トランプ氏は「アメリカファースト」の外交方針で知られているが、インタビューや会見などでも、頻繁に「人々の殺し合いを止めたい」と繰り返した。第1次政権の時は、戦争を一つも始めなかった稀な大統領(カーター大統領以来)として知られていたが、今政権では、保守系の間で「平和の大統領」(Peace President)と呼ばれる。

 トランプ氏は、和平合意に持ち込むために、関税圧力や経済制裁、米軍のプレゼンスなど、あらゆる手段を交渉の武器として使い、相手国を交渉のテーブルにつかせる方法も多用しており、これも「力による平和」("Peace through strength")の方針の一環と見なされている。

 8つの戦争を終わらせたというのは誇張だという批判もあるが、トランプ氏は前例のない方法とスピードで、多くの戦争や紛争の和平合意を大枠において実現させている。

 去年10月8日、イスラエルとハマスの第一段階の和平合意が実現した時は、「歴史的合意」として、保守系のみならず、リベラル系メディアや識者、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官やジェイク・サリバン前大統領補佐官(国家安全保障担当。バイデン政権)、チャック・シューマー上院院内総務(民主党代表)、ラーマ・エマニュエル前駐日大使(バイデン政権)などが、次々に、トランプの功績を認める発言や投稿を惜しまなかった。CNNのアンカーは、トランプ氏の功績を明確に認めなかったオバマ元大統領を批判し、パキスタンの大統領は、再度トランプ氏をノーベル平和賞に推薦した。

 モンロー主義を超えるドンロー主義

「われわれはモンロー主義をはるかに超えた。今はドンロー主義と呼ばれるくらいだ」。トランプ米大統領は新年の記者会見で、冗談めかしながら自身の外交手腕を誇ってみせた。「ドンロー」とは、19世紀の米外交の基調となったモンロー主義と、自身の名前の「ドナルド」を掛け合わせた造語だ。

 モンロー主義は1823年、当時のモンロー大統領(第5代)が提唱した。欧州の紛争に関与しない一方で、欧州諸国による南北米大陸の植民地拡大や干渉に反対する立場を打ち出した。独立から間もない米国の安全を保持するためと理解されることが多い。

 だが、19世紀末から20世紀初頭にかけ、マッキンリー(第25代)、セオドア・ルーズベルト(第26代)両大統領の下では南北米大陸を含む西半球での覇権や領土拡張を正当化する論拠に利用され、西半球を越えた地域でも帝国主義的な傾向が強まった。

 トランプ氏は、ハワイ併合やフィリピンの植民地化を断行したマッキンリーや、コロンビア介入でパナマを独立させ運河建設権を獲得したルーズベルトを高く評価する。マッキンリーは、トランプ氏が高関税政策の手本ともする人物だ。

 よく言われることだが、アメリカファーストはアメリカ孤立主義ではなく、アメリカの国家安全保障を脅かす存在に対しては、大胆な攻撃も厭わない。その例が、イランの核施設へのピンポイント攻撃や、ベネズエラの麻薬密輸船などへの攻撃だ。

 対中政策に関しては、一見融和策を取っているように見せているが、政権幹部や側近を名だたる対中強硬派で固め、トランプ氏が「(前政権の時)台湾に侵攻したら北京を爆撃すると習近平に言った」という発言が漏れるなど(去年7月CNN)、中国から見ると、トランプ氏は怒らせると何をするか分からない怖さがある(これがトランプ氏の戦略)。

 トランプ氏とプーチン大統領の接近は、習氏から見ると、中国とロシアの分断によって中国の孤立化を進めていると捉えられていると言われている(中国出身のジャーナリスト Lingling Wei他)。

 2026年の展望 ─ 経済政策と建国の精神

 本年は、トランプ政権においては、上記の理念や方針に沿った政策がさらに進むことが予想される。経済においては、大型減税法案が本格的に効力を発揮するのはこれからであり、関税政策に関しても、その目的は、国内製造業の復活や財政収入の確保であると同時に、不公正な貿易によってアメリカの製造業を弱体化させてきた中国に対して包囲網を構築するという、長期的な国家安全保障対策の一環であることは、ウォール・ストリートでも概ね理解されている。

 関税交渉によって実現した、アメリカ国内への大規模な投資の効果を発揮するのもこれからであり、本年11月の中間選挙までにどの程度アメリカ経済が恩恵を被るのか、見えない部分もあるが、去年3月11日の会見でトランプ氏が発言した通り、「今までのフェイク・エコノミー(偽の経済)ではなく、リアル・エコノミー(実体経済)が立ち上がる」方向に向かっていくのではないだろうか。

 また、アメリカ建国250周年イベントやワールドカップは、アメリカ中を沸かせるエネルギー源となると思われるが、本年は、「建国の精神」に光が当たり、その理念が改めて浸透する年になると予想できる。

 建国の父たちの原則は、古代ギリシャ哲学にまで遡る「自然法」に深く根ざしている。一般的に、独立宣言文(前文)の中心概念は3つあるとされており、それらは、(1)全ての人は平等で、創造主から「生命、自由、幸福の追求」という不可侵の権利を与えられた(自然権)、(2)この不可侵の権利を守るために「政府」が存在している(社会契約思想)、(3)政府が不当に権力を行使し、不可侵の権利を侵害するのであれば、人々は政府を変え、廃止し、新たな政府を樹立できる(抵抗権)、と要約できる。

 アメリカはキリスト教国家と見なされているが、実は、独立宣言文にも合衆国憲法にも、イエス・キリストという名前や、キリスト教を表現する言葉(三位一体、神の独り子、十字架による救い、イエスの復活)などは含まれていない。

 ジョージ・ワシントン初代大統領は、1789年にアメリカで最初の「大統領令」を出し、11月26日を感謝と祈りの日と定めたが(感謝祭の起源)、その宣言の中にも、イエス・キリストという言葉はなく、「全能なる神(Almighty God)」「主」「偉大で栄光に満ちた存在」「至高の存在(Supreme Being)」などという言葉で神を表現した。それ以外の発言でも、キリスト教を前面に出していないため、当時の長老教会のメンバーや牧師などから不服を申し立てられている。

 しかし、ワシントン大統領は、「宇宙の創造主」への感謝の言葉などを使って返信し、最後まで真意を明らかにしなかった。ただ、ある人への手紙で、「宗教の違いによって生じた反感や敵意が最も悲惨だ」と書いており、宗教の違いを超えた創造主への信仰が中心にあったことが分かる。

 これを見ると、ワシントン大統領と同様、イエスの名よりも、「創造主」(Creator)や「全能なる神」(Almighty God)という言葉で信仰を表現することが多いトランプ氏が、いかに建国の精神に沿った政治を行っているかが分かる。この理念は、本年さらに強調されることだろう。

 トランプ氏は、イスラム圏のサウジアラビアやカタール、UAE(アラブ首長国連邦)、そして、シリアなどとも積極的に交流し、アメリカへの投資促進と共に、中東和平にも生かしている。シリアの新大統領やサウジの皇太子をホワイトハウスに招いたことに対しては、福音派を中心とする「MAGA」層の一部は、困惑したり、反発したりしている。

 トランプ氏は、初代大統領と同様、宗教の違いを超え、全人類に共通した創造主信仰の持ち主であることが伝わってくる。

 外交政策については、多くの要素が絡み、変化も激しいため、予測は難しいが、トランプ氏はアメリカの国益を守りつつ、世界の平和を求め、戦争や紛争の和平を進める方向に進めていくことは間違いないだろう。

 「ディスクロージャー」(情報開示)の年となるか

 去年後半くらいからのトレンドとして、「ディスクロージャー(Disclosure/情報開示)」という言葉を目にすることが増えている。

 大きな話題となった議会の法案の一つは、司法省が所有している「エプスタイン・ファイル」の情報開示を求める内容だ。去年11月19日にトランプ氏が署名して成立し、多くの未公開情報が開示されつつあるが、ここでも「ディスクロージャー」という言葉が使われた。

 そして、11月21日にアマゾン・プライムで公開されたUFOドキュメンタリー映画『エイジ・オブ・ディスクロージャー』("The Age of Disclosure")では、マルコ・ルビオ国務長官など、計34名の現職または元政府高官や上院・下院議員、元国家情報長官、元国防総省幹部や米軍幹部、物理学者などが証言者として出演し、米政府と軍事産業が80年間隠蔽してきたとされるUAP(UFO)情報の公開を求めた。

 党派を超えて多くの議員が映画を鑑賞し、リベラル・保守を問わず、あらゆる主要メディアが報道し、監督や出演者へのインタビューを頻繁に放映し、非常に大きな話題となっている。

 いくつかの要点として、宇宙には地球人以外の生物が存在し、UAP(UFO)は地球のものではなく、国家安全保障問題であり、宇宙技術の獲得を国家間で争っている、また、人類は国家間で争っている場合ではないということなども主張している。

 この映画には、トランプ氏も引用される形で登場しているが、多くの証言者が、トランプ氏が情報開示を実現してくれるのではないかと期待している。

 上院からも下院からも、UAP情報開示を求める法案も提出されており、ここでも「ディスクロージャー」という言葉が使われている。

 そして、この話題に応えるように、本年6月12日に、スティーブン・スピルバーグ監督のUFOフィクション映画『ディスクロージャー・デイ』("Disclosure Day")が公開されることが発表され(去年12月19日)、第一弾の特報映像も公開された。

 政府と軍事産業が握っているとされるUAPの情報開示への圧力はさらに高まることだろう。アメリカ建国250周年の本年は、歴史的な年になるのかも知れない。

徹底予測2026
日経BP
2025-12-16


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