魅惑の火星探査

 コーヒーにミルクをポタリ…にも見えるこの写真は、火星の南極にあるドライアイスでできた「極冠」を捉えている。欧州の探査機マーズエクスプレスが2015年に撮影した。

 火星探査は、現在、各国・機関によって活発に進められており、特に過去の生命の痕跡の探索と将来のサンプルリターンに焦点が当てられている。

 NASA(アメリカ航空宇宙局)ではパーサビアランス (Perseverance)が現在稼働中の探査車(ローバー)で、火星の古代生命の痕跡を探査し、将来の地球帰還ミッションのためにサンプルを採取・保管している。

 2025年9月には、採取した岩石に古代生命の痕跡の可能性がある物質が見つかったと発表さた。 キュリオシティ (Curiosity)は、2012年に着陸したローバーで、火星にかつて生命が存在可能な環境があった証拠を探求している。

 火星サンプルリターン (MSR) 計画では、ESAと共同で、パーサビアランスが採取したサンプルを地球に持ち帰ることを目指す複数段階のミッションを計画中である。

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 JAXA(宇宙航空研究開発機構)の火星衛星探査計画 (MMX)では、火星の衛星「フォボス」からサンプルを持ち帰ることを目指している。日本の次期大型ミッションで、2026年度に打ち上げが予定されており、国際協力の下で進められている。

 ESA(欧州宇宙機関)は、エクソマーズ (ExoMars) プログラムで、火星の生命の痕跡を探索している。トレース・ガス・オービター (TGO)では、火星大気中のメタンなどの微量ガスを分析している。 ロザリンド・フランクリン・ローバーは、2028年の打ち上げを目指しており、地下2メートルまで掘削してサンプルを分析する。

 CNSA(中国国家航天局)は、天問1号 (Tianwen-1) および祝融号 (Zhurong)により、オービターとローバーからなる中国初の火星探査ミッションで、火星表面下の水の兆候などを探査し、驚くべき発見を報告している。

 火星サンプルリターン計画は足踏み

 NASAのサンプルリターン計画の帰還の旅が暗礁に乗り上げようとしている。パーシビアランスは火星の岩石試料を地球へ持ち帰る「火星サンプルリターン(MSR)計画」の第1段階だが,次の段階が危機的状況にある。トランプ政権がサンプルリターン部分の中止を提案した。この記事が米国で印刷に回る2025年11月時点で,ミッションの運命は米国議会に委ねられている。

 この状況に,火星岩石の入手を待ち望んできた科学者は落胆している。「私たちは火星サンプルリターンに何十年も前から取り組んできた」とサウスウエスト研究所コロラド支所の惑星地質学者ハミルトン(Vicky Hamilton)はいう。パーシビアランスが貴重なサンプルを採取したのに,それを火星に放置しておくしかないのか。「とても見ていられない」。

 ミッションが中止されない場合も,それをどう完了させるかは未確定だ。米航空宇宙局(NASA)は2024年,当初のMSR計画を費用高騰とスケジュール遅れを理由に取りやめ,民間企業による低コストのアプローチを模索すると表明した。複数の案を検討しているところだが,どれを採用するかは未定だ。