グリーンランドを米国が守るのは一利ある

 「グリーンランドはグリーンランドの人々のものです」と、グリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相はSNSに投稿した。「グリーンランドの未来と独立は自分たちで守ります」だが、グリーンランドの人たちが自分で国を守ることは不可能だ。

 グリーンランドの人口は5500人。グリーンランドは自前の軍隊(陸海空軍)を保有していない。デンマークの自治領であるため、防衛権はデンマークが保持している。

 では、デンマーク国防軍はどうかというと、約20,000人の現役兵員を擁し、必要に応じて予備役や郷土防衛隊を含め最大約88,000人規模まで動員可能だが少ない。 NATOも頼りない。

 トランプ米大統領は北極圏の防衛能力を強化する必要性を強調し、グリーンランドを「米国の所有」にすることや、米国が守るべきだとの考えを示している。

画像

 一方、グリーンランド側は「米国よりもデンマークを選ぶ」として、米国の支配下に置かれることを拒否しているが、日本のように米軍基地がいくつもあり、それでいて独立している国もある。米軍に守ってもらうのは一利ある。

 れいわ新選組の山本太郎氏が「日本は独立国家なのですか」「日米安保条約、米国の植民地じゃないですか」といった。それに対し高市首相は「主権独立国家です」と返した。それでいいと思う。グリーンランドが、米国と同盟を結び基地を置くこと。それができれば、米国は満足だと思う。

 アメリカの安全保障上、グリーンランドは重要

 米トランプ大統領は21日、自身のSNSで、米南部ルイジアナ州のランドリー知事を「グリーンランド担当特使」に任命すると発表した。

 グリーンランドは1953年までデンマークの植民地で、現在はデンマークの自治領です。行政権や資源管理権は2009年にグリーンランド自治政府に移譲されており、グリーンランドの住民(約5万5千人)は、グリーンランドの主権国家としての独立も視野にいれている。

 グリーンランドは北米と欧州を結ぶ最短ルート上にあり、アメリカや北大西洋条約機構(NATO)の安全保障計画にとって戦略的要地。グリーンランドには米軍基地が置かれています。同基地はアメリカのミサイル防衛にとって重要な拠点であり、カナダからも目と鼻の先にある。

 トランプ氏はこれまで、グリーンランドは航路沿いの要地であること、未開発の鉱物資源が埋まっていることを理由に、アメリカがグリーンランドを所有すべきだと訴えてきた。

 そして22日、記者団に対し、「グリーンランドは鉱物資源のためではなく、国家安全保障のために必要だ。グリーンランドの海岸線を見渡せば、ロシアや中国の船舶が至る所にある。我々はそこを手に入れなければならない」と述べました。

 担当特使に任命されたランドリー氏は、米保守メディア「FOXニュース」のインタビューで、欧州はグリーンランドを無視してきたと批判し、アメリカの安全保障のために介入する必要があると指摘した。

「ロシアの潜水艦がグリーンランドを周回する。中国は西半球からレアアースをむしり取るだろう。トランプ氏が当選し、ワシントンが何十年も忘れていたことを言う」

「我々は彼ら(グリーンランドの人々)を気にかけている。我々は最速の安全保障ルートだ。アメリカから約1時間、欧州からは3、4時間だ」(ランドリー氏)

 グリーンランド人だけでは守れるわけがない

 一方、デンマークのフレデリクセン首相とグリーンランド自治政府のニールセン首相は22日、共同声明を出し、安全保障が理由でも他国を併合することは許されないとし、「グリーンランドは現地の人々のものであり、アメリカが乗っ取ることはあってはならない」と述べている。

 グリーンランドがアメリカの一部になることは考えづらいものの、トランプ氏にはそれをしかねない突破力がある。

 トランプ氏の狙いは、デンマークやグリーンランド自治政府、NATO加盟国に脅しをかけ、同地域の防衛を強化することにある。

 第一次トランプ政権で首席補佐官を務めたマーク・メドウズ氏は23日、米保守メディア「ニューズマックス」に対し、「(アメリカは)実際に軍事プレゼンスを現地に置き、ある種の共同合意を結べばよい」「トランプ氏がグリーンランドをロシアや他の国ではなく、アメリカの同盟国にすることに近視眼的に注力していることは分かっている」と述べていた。

 実際のところ、グリーンランドに防衛面での不十分さがあるのは確か。グリーンランド周辺海域に、ロシア軍の核を搭載できる原子力潜水艦などが周回しているとされているが、近年は中国軍も同海域で活動しており、アメリカの核攻撃に対する抑止力として潜水艦を派遣する可能性があるなどと指摘されていた(2019年米国防総省の指摘)。

 にもかかわらず、NATO加盟国であるデンマークにはグリーンランドを防衛する能力が乏しく、実質的にアメリカがNATOを通してデンマークに安全保障を提供してきた。

 中国の「債務の罠外交」

 またグリーンランドは、危うく中国得意の「債務の罠外交」に引っかかりそうにもなっていた。中国は、グリーンランドに研究施設や衛星通信施設の建設、空港工事などを提案し、グリーンランドは3つの空港工事計画に対して、中国企業の参入を容認していた(後にデンマーク政府が中国企業の参入を阻止)。仮に中国企業が受注し、グリーンランド自治政府の債務返済が滞っていれば、中国は空港滑走路を軍事転用する恐れがあった。

 グリーンランドはアメリカ領にならなくとも、例えば、アメリカとグリーンランドが自由連合協定を結び、アメリカがグリーンランドの必要不可欠なサービスを担う代わりに、米軍が自由に活動できるようにすることもありえると指摘されている(2025年12月24日付ロイター通信など)。ただこれにはグリーンランドがデンマークから独立する必要がある。

 北米大陸に近いグリーンランドが中国に接収されることがないよう、トランプ政権は多少手荒ながら、手を打っていることを理解する必要がある。