バイオームとは

 バイオーム(生物群系)は、特定の気候や環境(温度、水分、土壌など)に適応した生物(植物・動物)が集団として分布する、生態系の大規模な区分。

 主要な陸上バイオームは、森林、草原、荒原の3つに大きく分類され、植生の特徴や気候帯に基づいてさらに細分化される。

 主なバイオームの分類と特徴 バイオームは、気温と降水量の違いによって主に以下のタイプに分類される。

 森林は熱帯多雨林、亜熱帯多雨林、照葉樹林、夏緑樹林、針葉樹林に。草原は、サバンナ、ステップに。荒原は、砂漠、ツンドラなどになる。

 日本は南北に長く、気候の影響で北から順に、針葉樹林、夏緑樹林、照葉樹林、亜熱帯多雨林の4つのバイオームが見られる。

画像 2

 サバンナ

 サバンナ(サバナ)は、熱帯・亜熱帯の年降水量が約600〜1500mmのエリアに広がる、長草(イネ科)の草原にバオバブやアカシアなどの耐乾性樹木が散生する植生。雨季に青々とし、数ヶ月の乾季には落葉・枯死し赤茶けた風景となるのが特徴で、熱帯地域特有の生態系だ。

 主体となる植生は、イネ科の草本(パンパスグラスなど)やカヤツリグサ科。樹木はアカシア、バオバブ、ユーカリ(オーストラリア)など、樹高20m以下の乾燥に強い樹木。

 樹木の密度により、樹林サバンナ(木が多い)、高木サバンナ、低木サバンナ、草原サバンナに分かれる。乾季には多くの植物が落葉・落葉し、草原は枯れ、根の状態で耐える。  サバンナの広がる地域は、アフリカのサバンナ(ライオン、ゾウなどが生息)。南アメリカのリャノ(オリノコ川流域)、カンポ(ブラジル高原)、グランチャコ。オーストラリアの熱帯・中央部の乾燥地帯。

 サバンナは地球の陸地面積の約15%を占め、乾季の火災や大型草食動物の摂食が植生維持に大きく関与している。

 ステップ

 ステップ(Steppe)は、温帯の降水量が少ない乾燥〜半乾燥地域(年250〜600mm程度)に広がる、樹木のないイネ科を中心とした短草草原の植生。

 ユーラシア大陸を中心に分布し、乾燥した土壌と厳しい冬が特徴で、肥沃なチェルノーゼム(黒土)を持ち、放牧や農業に利用されることが多い。

 ステップは、中央アジアから東欧、モンゴル周辺のユーラシア大陸が代表的な場所。砂漠の周囲に多く、夏は暑く、冬は厳しい寒さとなる。

 植生は主にイネ科の多年草やキク科の短草が地表を覆う「草の海」のようになり、樹木はほとんど生えない。降水量の少ない乾燥地では1m2あたり約400〜900gの乾物生産量だが、雨が多い場所では900〜1000gに達する。

 森林と砂漠の推移帯(エコトーン)に位置し、乾燥が進むと半砂漠(ヨモギ類)、湿潤になると森林ステップ(森林が散在)へ変化する。

 人間による遊牧(羊や牛)や農地化が進んでおり、自然と人間活動の共同作業によって作られた生態系とも言われる。

 サバンナとの違いは、気温とステップは樹木がないが、サバンナには高木が散在する。世界の地域で、北アメリカのプレーリーは、背の高い草が生える温帯草原になる。普通のステップより湿潤である。

 ステップの主な地域はカザフスタン、モンゴル、ウクライナ、アルゼンチンの乾燥パンパなどである。

 砂漠

 砂漠の植生は、極端な乾燥と高温、貧栄養な砂漠土壌に適応した特異な植物群。水分を貯える多肉植物(サボテンなど)、長根を持つ低木、短期間で開花する一年草(短命草本)などが代表的である。植物は風食を防ぎ、水分の保持や土壌改良(窒素固定)に寄与している。

 砂漠植物の特徴は、多肉植物・トゲ植物で、葉や茎が太く、水を貯え、皮が硬く乾燥に強い。サボテン、アロエ、アガベなど。

 耐乾性低木・乾燥樹木もあり、長い根で地下水を吸い上げる。ナツメヤシ、バオバブ、アラビアゴムノキ、ササクサ。

 砂漠緑化植物としては、砂の移動を抑え、土壌を改良するはたらきをする低木樹がある。沙柳(シャリュウ)、沙棘(サジー)、羊柴(ヨウシ)などである。短命草本(エフェメラル)もいて、少ない雨期に急成長し、短期間で開花・結実して種子で休眠する。

 環境への適応メカニズムとして、水分保持のため、茎や葉に水を貯め、トゲで蒸散を防ぐ工夫。根は、水分を求めて深く(直根性)または広く(側根性)根を張る特徴がある。ナミブ砂漠の「奇想天外」のように、朝霧の水分を利用するする種もある。雨が降るまで種子や球根の状態で数年休眠する種もある。

 砂漠化が進行する中、これらの植物を活用して砂の移動を防ぐ緑化運動が行われており、農業や牧畜が可能な環境への回復が試みられている。

 ツンドラ

 ツンドラ(寒帯)は、極地や高山などの寒冷地で見られる、樹木が生育できない低木・苔・地衣類からなる植生。永久凍土の存在と短い夏が特徴で、コケ植物、地衣類、小型の多年草が優占し、北極の砂漠とも呼ばれる厳しい環境に適応して群落を形成している。

 ツンドラ植生の主な特徴は、低木・草本群落: 高木が生えず、主に高さ10〜20cm程度の低木(ホッキョクヤナギ、ガンコウラン)、多年草(ワタスゲ)、苔類、地衣類がモザイク状に生える。

 強い風や霜、乾燥に適応しており、栄養繁殖(ムカゴ)で増える植物が多い。短い夏に凍土の表面が融解し、植物が急成長・開花する。

 代表的な植物としては、地衣類・コケ類があり、乾燥すると休眠し、水分を得ると復活する。低木では、ホッキョクヤナギ、チリメンヤナギ、ガンコウラン。草本・高山植物では、ワタスゲ、ムラサキユキノシタ、コケマンテマ、チョウノスケソウなどがある。

 地域としては、シベリア北部、アラスカ、カナダ北部の北極海沿岸地域(北極ツンドラ)。日本の富士山頂などの標高の高い山頂付近 (高山ツンドラ)がある。

 地表面が寒冷現象により凍結・融解を繰り返し、植物がパッチ状に分布する(構造土)。融解した水分が排水されず、泥炭質の湿地土壌を形成する(グライ土壌)。

 温暖化の影響により近年、気温上昇によりツンドラが緑化(Greening)し、低木化・高木化する傾向がある。

図説砂漠と人間の歴史 (シリーズ人と自然と地球)
ロズリン・D. ヘインズ
原書房
2014-02-25