スノーボールアースの時代
過去にあったとされる「スノーボールアース(全球凍結)」。それはいつごろ、何回起きたのだろうか?
スノーボールアース(全球凍結)は、地球の歴史(約46億年)の中で、少なくとも3回起きたと考えられている。主に原生代(約24億年前、約7億年前、約6億年前)に集中しており、火山活動によるCO2放出が凍結を解除し、その後の生物の進化に大きく影響したと推定されている。
原生代(Proterozoic)は、25億年前から約5億4,100万年前にあたる地質時代の区分(累代)の一つ。この時代、酸素発生型光合成微生物の活動によって海洋への酸素の供給が始まり、25 - 23億年前の大酸素イベントで嫌気性の非酸素発生型光合成微生物が大量絶滅した。
そして、光合成とともに酸素呼吸のできるシアノバクテリアが18 - 12億年前に出現すると、大気中の酸素濃度が増加した。

大気中の酸素濃度増加によりオゾン層形成されると、紫外線が地表に届きにくくなった。すると酸素を利用する、古細菌類から原始真核生物が現れた。さらにミトコンドリアが共生することで現在の真核単細胞生物が成立した。
27億年前に非常に活発な火山活動があり、陸地が大幅に増えた。増えた大陸の周辺の浅い海に、光合成をおこなうシアノバクテリアの集合体であるストロマトライトが大規模に形成された。ストロマトライトから放出された酸素は海中に拡散し、当時の海中に大量に溶解していた2価の鉄イオンを酸化して沈殿させ縞状鉄鉱床を生成した。縞状鉄鉱床の生成のピークは27億年前から19億年前までである。
寒冷化の原因は大気中の二酸化炭素濃度が下がって温室効果が減ったためと推定される。二酸化炭素濃度減少の原因は、大陸の拡大によって岩石の風化量が増え風化岩石中の金属元素が空中の二酸化炭素を消費したと考えられるが、さらに風化した塩類が海に入って大量の栄養塩類となり生物活動(光合成)を活発化させ、二酸化炭素を消費したことも考えられる。
スノーボールアースの気温
では、スノーボールアース時代の気温は何度だったのだろうか?
現在の二酸化炭素濃度は0.04%(400ppm)程度で、それによる温室効果は33℃と考えられる。 即ち現在の地表平均気温15℃に対し温室効果が全くない時の予想気温(有効温度)は-18℃とされている。
また、エネルギーバランス気候モデルの結果に基づいて全球凍結した地球の姿を考察すると、その高いアルベド(反射)によって全球平均気温は-50℃程度となるという説もある。海洋も表層約1000m程度が完全に凍結する。
約7億年前クライオジェニアン紀、地球は厚さ1000メートルを超える氷の層に覆われていた。「スノーボールアース」と呼ばれる凍結状態だ。海は冷たかったが、凍り付かない程度の熱を保っていた。
2025年12月9日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された論文によると、当時の海水温は地球史上最低のマイナス15℃まで下がっていたという。現代の最低水温より12℃も低い値だ。
また、塩分濃度は現在の4倍以上もあり、海水は凍結せずに極低温を維持できたと論文にはある。これらの推定値から、当時地球に生息していた微生物、植物プランクトン、藻類、海綿動物は予想以上に過酷な環境に耐えていたことが示唆される。
太古の岩石に刻まれた鉄の異常な値
今回の研究は、カナダ、ビクトリア大学の地質学者ポール・ホフマン氏の疑問から始まった。海底の岩盤に堆積した鉄の層から採取された鉄の異常な値を、スノーボールアースの海水温によって説明できるだろうかと考えたのだ。
論文の共著者であるオーストラリア、メルボルン大学の地質学者マックスウェル・レヒテ氏らの先の研究によれば、鉄鉱床は古代の海岸線付近だった。氷河が海と接し、酸素が豊富な融解水が海に入り込んでいた場所だ。
しかし、スノーボールアースの時代の堆積物は、なぜか約24億年前の海の岩石に堆積した鉄の層よりも重い鉄の同位体(質量数が異なる元素)をより多く含んでいた。
ホフマン氏は、この時代の海の温度がこれらの異常な鉄の堆積物を生み出したのではないかと考えた。
ミッチェル氏はその後、論文の筆頭著者で研究を率いた中国科学院の地球化学者カイ・ルー氏とリャンジュン・フェン氏に協力を求め、より重い鉄の存在を説明できる海水温を計算した。結果はマイナス15℃という超低温だった。
「彼らの手法は気に入りました」と語るのは米サウスフロリダ大学の地球化学者ティモシー・コンウェイ氏だ。「実験データと仮定に基づく理論モデルがベースになっていますが、理にかなっているように見えます」。なお氏は今回の研究に参加していない。
チームはこの異常値が氷河による侵食や熱水噴出孔による可能性も検討したが、分析の結果、その可能性は低いことがわかった。
また計算の結果、氷の縁に接する海が凍結しないよう氷点を下げるには、4倍以上も塩分濃度が高かったと判明した。
クライオジェニアン紀という極端な時代
科学者たちは、生命がどのようにスノーボールアースの時代を含む「クライオジェニアン紀」(8億5000万~6億3500万年前)を生き延びたのかを研究してきた。
ある説では、生命は酸素が限られ、光がほとんどまたは全くない極限環境に適応していたか、食料源となるほかの物質を供給する熱水噴出孔で生き延びていたとされている。
南極のマクマード氷棚に生息する藍藻(シアノバクテリア)のように、氷の上の融解した池で生命は生き延びていたという説もある。
「こうした地表の環境が、氷の時代を通じて多様な生命が存続し、進化を続けることを可能にしたのかもしれません」と米マサチューセッツ工科大学の地球化学者ファティマ・フセイン氏は言う。フセイン氏は今回の研究に関与していないが、2025年、このテーマに関する研究を主導した。
生物が氷の縁で暮らしたり、そこに移動したりすることで、氷床の底にある融解水に含まれる酸素を利用していた可能性もある。しかしその場合、今回の研究が予測する極限環境に対処しなければならなかった。
この説を裏付ける証拠として、南極のビイダ湖の氷床下で発見された細菌が挙げられる。これらの細菌も低温で塩分濃度の高い超塩湖で暮らしている。
「クライオジェニアン紀がどれほど極端だったかについて、私たちは今も学び続けています」とフセイン氏は言う。「だからこそ、生命がこの極端な環境で生き延び、その後、劇的に多様化したことが、なおさら驚くべきことなのです」
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