イランとの核交渉、合意に至らず

 イランの核開発をめぐり、アメリカとイランを仲介するオマーンの外相が、「イランは貯蔵する高濃縮ウランの貯蔵をやめ、保有するウランを希釈することに同意した」と明かし、交渉が部分的に進展していることを示した。しかし、トランプ米政権はイラン側とは合意に至らなかったことを受け、イスラエルとともに攻撃を開始した。

 アメリカのトランプ大統領は2月28日、SNSに投稿し、イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したと明らかにした。イランの国営メディアも、1日、最高指導者ハメネイ師について「殉教した」として死亡したと伝えた。

 トランプ大統領は「歴史上、最も邪悪な人物の1人であるハメネイが死亡した」とした上で、「イランの人々だけでなく、アメリカ、そして世界の人々にとっての正義の実現だ」としている。(写真はオマーン外相と交渉するアメリカ側の特使 ネクタイがない)

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 また、ハメネイ師の殺害はアメリカとイスラエルの緊密な連携により実行されたとした上で、「これはイラン国民が祖国を取り戻す唯一にして最大の機会だ。革命防衛隊と警察がイランの愛国者たちと一体となって国に本来の偉大さを取り戻すことを願う」としている。

 不透明なシナリオ

 しかし、空爆したことで体制を滅ぼすのはよいが、彼らが自主的にイスラエルを攻撃しなくなるような政府をイランに樹立できるのだろうか。

 1941年に米国政府が昭和天皇働きかけて陸軍を粛清させようというような話で、外国勢力にできることではない。体制転換見しても、米国やイスラエルに宥和的でイラン国民に支持されるような政府をつくる、というのが一番難しい。

 もし米軍が長期に渡ってイランに駐留しても極めて難しい。すでにアフガニスタンやイラクで莫大なコストをかけたうえですでに失敗した試みだ。

 一方、「大量かつ精密な爆撃は中東全域、さらには世界全体の平和というわれわれの目的の達成に向け、1週間を通してあるいは必要な限り中断することなく続く」として作戦の継続を予告している。

 アメリカとイスラエルはイランの最高指導者ハメネイ師を殺害したあとも攻撃を続けているのに対し、イランは報復としてアメリカ軍を攻撃したなどと主張して応酬が激しくなっている。

 トランプ大統領は作戦が計画より順調に進んでいるとして対話にも言及したが、4週間続く可能性も示唆し「目標がすべて達成されるまで続く」と強調していて、衝突のさらなる拡大が懸念されている。

 アメリカとイスラエルはイランへの再攻撃に踏み切り、最高指導者ハメネイ師を殺害したあと、2日目に入った1日も各地で攻勢を強めている。

 トランプ大統領は1日、イラン海軍の艦艇9隻を沈め司令部を破壊したと主張し、イスラエル軍も首都テヘランをはじめ、各地で防空やミサイルシステム、司令部などを攻撃したとしている。

 これに対しイランは報復を訴えて、アメリカとイスラエルの標的にミサイルと無人機による大規模な攻撃を実施したと主張した。

 イランでは200名以上、米軍 3名イスラエルは9名死亡

 イランでは首都テヘランなど各地で爆発が確認され、イランのメディアは赤新月社の話として、国内にある31の州のうち24の州が攻撃され、これまでに201人が死亡し、740人以上がけがをしたと伝えた。

 このうち南部の州では小学校が攻撃を受け、これまでに子どもを含む108人が死亡したほか、別の州では住宅や体育館などが攻撃され、市民15人以上が死亡したという。

 攻撃を受けて、イラン革命防衛隊はミサイルや無人機による報復攻撃を開始し、バーレーンにあるアメリカ海軍の第5艦隊の司令部など中東各国のアメリカ軍の基地やイスラエルの軍事拠点などを標的にしているという。

 アメリカ軍は今回の軍事作戦で隊員3人が死亡したと発表し、イスラエルでは住宅街にミサイルが落下して9人が死亡したと報じられている。

 さらに一連の攻撃でアメリカ軍の施設がある湾岸諸国では各地で無人機による攻撃などによって被害が出ていて、攻撃の応酬が激しくなっている。

 また、イランはアメリカの原子力空母を弾道ミサイルで攻撃したと主張したが、アメリカは空母は被害は受けておらず、作戦を続けている。

 こうした中、トランプ大統領はメディアのインタビューで作戦が計画より順調に進んでいるという認識を示し、別のインタビューではイラン側は話し合いを望んでいると主張して「私は話し合いに同意した」と対話にも言及した。

 ただ別のメディアのインタビューでは作戦について「4週間くらいになるだろうと見積もっていた。強力で大きな国だ。4週間かかるかそれより短いかもしれない」と述べたという。

 さらにSNSに演説の動画を投稿し「現在も軍事作戦はすべての力をもって継続しており、われわれの目標がすべて達成されるまで続く」と強調した。

 イラン 革命防衛隊トップや軍の参謀総長なども死亡か

 一方のイランではハメネイ師だけでなく軍事精鋭部隊、革命防衛隊のトップや軍の参謀総長なども死亡したと伝えられ、ペゼシュキアン大統領は1日、次の最高指導者が選出されるまでの国政運営を担う「臨時評議会が任務を開始する」と述べた。

 アメリカとイランの協議を仲介してきたオマーンは1日、イランのアラグチ外相から電話を受けたと発表し、アラグチ外相が「エスカレーションの阻止と安定の回復のためのあらゆる努力にイランは前向きだと強調した」としている。

 しかしアメリカ、イスラエル、そしてイランはいずれも攻撃を続ける構えで、衝突のさらなる拡大が懸念されている。

 米軍「壮絶な怒り」作戦 24時間で1000か所以上攻撃

 アメリカ中央軍は1日、今回の「壮絶な怒り」と名付けたイランに対する軍事作戦の最初の24時間の概要を明らかにした。

 それによると作戦はアメリカ東部時間の2月28日午前1時15分に開始され、イランの安全保障体制を解体するため脅威をもたらす対象を優先しながら標的を攻撃したとしている。

 具体的な攻撃対象はイランの指揮統制センターやイラン革命防衛隊の統合司令部と航空宇宙軍司令部、防空システム、弾道ミサイル施設、イラン海軍の艦艇や潜水艦、対艦ミサイル施設、軍事通信施設で、1000か所以上を攻撃したとしていう。

 作戦にはB2ステルス戦略爆撃機に自爆型の無人機、F22戦闘機やF35ステルス戦闘機、電子攻撃機、パトリオットなどの迎撃ミサイル、原子力空母、ミサイル駆逐艦、対無人機システムなどのほか、公表できない特殊な能力を持った兵力を投入したとしている。

 イランへの攻撃を続けているイスラエル軍は1日、予備役の兵士およそ10万人を動員する準備を進めていると発表した。現地メディアはシリアやレバノンとの国境やパレスチナのガザ地区との境界で地上部隊が増強されたなどと伝えている。

 イラン、高濃縮ウランの引き渡しを拒否

 オマーンのバドル外相は米CBSテレビの番組に出演し、「イランが核兵器製造につながる高濃縮ウランの貯蔵を放棄し、国際原子力機関(IAEA)の検証を受け入れる意向を示した」と明かした。そして保有する濃縮ウランについては、大幅に希釈することで合意したという。

 スイスで2月26日に開かれた協議では、アメリカ側は3つの核施設(フォルドゥ、ナタンズ、イスファハン)の解体や全ての高濃縮ウランの引き渡しを要求し、イラン側はそれらを拒否したと、一斉に報道された。交渉は決裂したものの、オマーン外相が新たに明かしたのは、それらを除き、イランが同意できる部分と見られている。

 核問題については両者の主張に隔たりはあるものの、アメリカは「イラン国内のウラン濃縮停止」に加えて、「弾道ミサイル計画の制限」「代理勢力への支援停止」を要求していたと報道された(2月3日付ロイター通信)。ただしイランは、「核問題以外は議論しない」としており、その他の課題についても交渉が進んでいるかが注視されている(特に弾道ミサイル計画の制限は難航)。

 トランプ米大統領は、イランが核兵器及び、アメリカを射程に入れる弾道ミサイルを開発していると警告(イランは否定)。米軍は、イラク戦争以降では最大規模となる戦力を中東周辺に展開し、譲歩を迫っている。

 トランプ氏は「我々が必要だとしているものをイランが示さなかったことに私は不満だ。気に入らない。どうなるかを見よう。この後も話し合う予定だ」と述べた。その後、米軍とイスラエル軍が28日にイランに「先制攻撃」を実施し、圧力のギアを格段に引き上げた。

 昨年6月に米軍がイランの核施設を攻撃して以来、すでに濃縮したウランは依然として「地中」に埋まっており、イランがそれを掘り返して、短期間で兵器を製造することは「不可能」と見られていた(2月26日付米紙ニューヨーク・タイムズ)。そのため突然のイラン圧力強化は、驚きをもって受け止められている。

 背後の中国に揺さぶりをかける

 またトランプ政権が圧力を強化する背景には、さらなる要素として、「中国とイランの急速な関係強化」が無視できない状況にあることも関係していると言える。

 アメリカが年初にベネズエラに軍事介入し、「中国への原油輸出をコントロール」しようとしたように、イランも原油の約9割を中国に輸出している。トランプ氏は中国との貿易交渉で「休戦」していると見せかけて、その実、中国のエネルギー供給を圧迫し、「兵糧攻めを行っている」という意味で、非常に巧妙な手に出ている。

 ここでイランを骨抜きにすれば、4月のトランプ氏の訪中では、より多くのカードを持って、中国と交渉できるはず。

 幸福の科学の見解「現代の十字軍」 

 なお、イランへの介入の正当性については、トス神が「今、イスラエルと組んでアメリカの共和党側が十字軍をやろうとしていると思いますよ。ある程度までは、私はしかたがないと思っています。ただ、みんなが話し合って、もうちょっと同じような土俵で仕事ができるような改造は(イランに)必要だと思っています。イランの宗教的指導者らは追い出されないからね。これは、他国から攻撃でもされないかぎり」

「イランは『全体主義ではない』といっても、やはりそういうところはありますよ」としつつ、2019年末時点ではあるものの、「多少、変革を迫られていると思います。その意味で、私は少し、何らかの戦争が起きる可能性はあるなとは思っています。それは近代化のためには必要なものです。」と指摘している(『イエス ヤイドロン トス神の霊言』所収)。

 一方、イランと包括的戦略パートナーシップを締結している中国は、超音速の対艦巡航ミサイルをイランに売却しようとしているほか、中東周辺に艦艇を送り、米軍の電子情報を常時イラン側に提供し、奇襲攻撃に備えられるようにするなどして、イランを支援している。

 アメリカは、中国とイランが急速に関係を強化し、将来的な脅威が増大することを警戒していると思われる。特に、貿易戦争の「休戦期間」を利用して、中国が手を打つ前に、トランプ政権はイランを孤立させようとしているのではないか。

陰謀国家アメリカの石油戦争: イラン戦争は勃発するか!?
スティーブン ペレティエ
ビジネス社
2006-03-01