「カイロス3号機」打ち上げ失敗
東京のベンチャー企業が開発した小型ロケット「カイロス3号機」が3月5日午前、和歌山県にある発射場から打ち上げられたが、打ち上げは失敗した。企業は、ロケットの飛行自体は順調だったことから、自動で飛行を中断するシステムに問題があった可能性があるとしている。
日本では現在、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などが打ち上げる国の主力ロケットとして、H3ロケットとイプシロンSロケットが開発・運用されているが、打ち上げの失敗や開発中のトラブルが相次ぎ、いずれも打ち上げることができない状況となっている。
こうした中、カイロスロケットが今回の打ち上げに成功すれば、日本から人工衛星を打ち上げることができる新たな手段になると期待されていた。

「自律飛行安全システム」の誤作動か?
東京のベンチャー企業 スペースワンが開発した「カイロス3号機」は、5日午前11時10分に和歌山県串本町にある発射場から打ち上げられましたが、搭載している人工衛星を軌道に投入できず、打ち上げは失敗した。
これについて企業は記者会見を開き、打ち上げの68.8秒後に高度およそ29キロ付近で、コンピューターが自動で飛行を中断する「自律飛行安全システム」が働きロケットが破壊されたと説明しました。
今回失敗したカイロスロケットには「自律飛行安全システム」と呼ばれる、機体で何らかの異常を検知した場合、自動でロケットを破壊して飛行を中断する機能が備えられていた。
これは、従来のロケットで使用されていた地上から信号を送って破壊する「指令破壊」とは異なり、機体に搭載されたコンピューターが異常を検知すると自動で破壊する仕組みで、管制室の要員を減らし人件費を削減できるとして日本のロケットでは初めて導入されていた。
企業によると3号機には「自律飛行安全システム」が2系統搭載され、どちらかが異常を検知すると作動する仕組みとなっていた。
今回の打ち上げでは飛行中に片方の系統でシステムそのものの異常を示すようなデータが確認されたということで、企業はこのシステムが誤って作動し、ロケットを破壊した可能性もあるとしている。
カイロスロケットとは?
カイロス(KAIROS)は日本の衛星打ち上げ用ロケットである。民間企業スペースワンの開発した自社事業用のロケットで、小型衛星の打ち上げを目的とする。
「大型の衛星を少数打上げるのではなく小型の衛星を大量に打上げるという発想」をもとに、「契約から打上げまでの「世界最短」と打上げの「世界最高頻度」をめざす」小型軽量のロケットである。
動力に固体燃料を使うことで発射までの準備期間を短縮し、衛星の受け取りから4日で発射することを可能にした。また効率化のため、GO/NOGO判断などの管制手順を自動化したほか、異常発生時の指令破壊も機体に自動で判断させることで、打ち上げの省人化を実現している。
2024年3月13日に初号機、同年12月18日に2号機、2026年3月5日に3号機の打ち上げが試みられたが、いずれも失敗した。
カイロスはギリシャ神話に登場する「時間」および「機会」の神。同社は「世界で最も契約から最短で、頻繁にロケットを打ち上げる」宇宙輸送サービスを目指していて、「時間を味方に市場を制する」との意思を示したという。また、カイロスにはギリシャ語で「チャンス」の意味があり、好機をとらえて事業を成功に導くという思いも込めた。
打ち上げ失敗の原因
スペースワンは2024年8月25日の会見で初号機の失敗について、事前の固体燃料サンプルの分析を元にした推力の予測よりも実際の第1段ロケットの推力が数%不足しており、設定していた飛行正常範囲から外れたことをロケットが検知して自律破壊に至ったと説明した。また、自律破壊をしなければ正常に飛行した可能性が高いとしている。2号機では推進系等の機体側の設計変更はせず、飛行正常範囲の設定を見直すとしている。
スペースワンは2号機の失敗について、異常となったノズル部分は燃焼試験や単体試験でも異常は見られなかったとしている。第2段エンジンには、第1段の燃焼中に生じた飛行経路のズレを修正するほどの制御能力がなく飛行経路の逸脱に至った。打ち上げ後の記者会見では、ノズルが異常となった原因についてはこれから調査すると説明した。
その後2025年8月31日のオンライン会見にて、再現実験などにより原因は解明できたと発表した。打ち上げから約1分20秒後に、ロケットの進路となる「ノズルの角度」を決めるセンサーや周辺機器に不具合が生じ、誤った信号が発信されたことが原因で、機体が回転する状態に陥ったと明らかにした。なお3号機では、センサーの設計や設置方法を見直すほか、開発・製造のデータ確認や組み立てから点検工程などの総点検をした上で打ち上げに向けた準備を進めるとしている。
今回、スペースワン3号機は同日午前11時10分に打ち上げられ、順調に上昇したが、第1段エンジン燃焼中の高度約29キロで安全システムが働き自爆した。同社の関野展弘副社長は「機体には全く異常がみられず、飛行経路も適切だった。原因は今後究明するが、システムの誤作動と考えるのが妥当だろう」と話した。
安全システムは、機体に備えられたセンサーなどが飛行中に何らかの異常を検知した際に働く。安全な飛行の継続が困難とみられると自律的に機体を爆破し、想定外の地域への危険な落下を回避する。複数の系統があり、いずれかが誤作動した可能性が高いという。
カイロスは、全長約18メートル、重さ約23トンの固体燃料ロケット。初号機と2号機はともに打ち上げに失敗しており、今回で失敗は3機連続となった。3号機は超小型衛星5基を搭載し、民間単独では日本初の軌道投入を目指したが実現しなかった。
ベンチャー企業「スペースワン」
スペースワン株式会社(英: SPACE ONE CO., LTD.)は、東京都港区に本社を置く、宇宙関連企業。専用の射場から人工衛星搭載ロケットの打ち上げを行う日本初のベンチャー企業。
人工衛星を搭載する小型ロケットの開発から打上げまでを一貫して担う企業として、2018年7月にキヤノン電子、清水建設、IHIエアロスペース、日本政策投資銀行の4社の出資によって発足。
和歌山県串本町の自社運営のロケット打上げ射場「スペースポート紀伊」を整備し、打ち上げ事業を実施する。固体ロケットの特性を活かした高い即応性、低価格、高信頼性、機動性ある民間射場を強みとした小型衛星用の商業宇宙輸送サービスの事業化を目指す。
今回失敗したカイロスロケットは、スペースワンが開発した民間のロケットで、日本から人工衛星を打ち上げる機会を増やすロケットとして期待されている。
日本では現在、JAXA=宇宙航空研究開発機構などが打ち上げる国の主力ロケットとして、H3ロケットとイプシロンSロケットが開発・運用されているが、打ち上げの失敗や開発中のトラブルが相次ぎ、いずれも打ち上げることができない状況となっている。
こうした中、カイロスロケットが今回の打ち上げに成功すれば、日本から人工衛星を打ち上げることができる新たな手段になると期待されていた。
さらに、世界的に需要が急増している小型衛星の打ち上げ市場に日本の民間企業が参入する本格的な第一歩としても期待されていた。
内閣府によると、去年1年間に世界で打ち上げられた人工衛星の数はおよそ4500に上り、用途に応じて大きさが異なる衛星の中でも小型衛星の打ち上げ需要が急増している。しかし、小型衛星を低価格で打ち上げられる小型ロケットは限られていて、現状はアメリカのベンチャー企業などによる競争が激しくなっている。
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