単為生殖
単為生殖(parthenogenesis)とは、一般には有性生殖する生物が、雌単独で子を作ることを指す。有性生殖の一形態に含まれる。パーシナジェネシスとも呼ばれる。また、卵子が精子と受精することなく、新個体が発生することを単為発生と呼ぶ。
自然に単為生殖をすることが知られている動物の大半は、ミツバチ、スズメバチ、アリ、アブラムシといった小型の無脊椎動物であり、彼らは有性生殖と単為生殖を切り替えることができる。 脊椎動物でも80種以上で確認されており、その約半数が魚か爬虫類である。
哺乳類では単為生殖で繁殖する動物は知られていない。それは、哺乳類の特定の遺伝子にはゲノムインプリンティングという母親由来か父親由来かを示すラベルがあり、どちらの親のものが発現するかが決まっているからである。ただし、マウスなどのいくつかの哺乳類では人為的に単為生殖を誘発する実験に成功している。(写真は単為生殖する魚:アマゾンモーリー)

自然に単為生殖をすることが知られている動物の大半は、ミツバチ、スズメバチ、アリ、アブラムシといった小型の無脊椎動物であり、彼らは有性生殖と単為生殖を切り替えることができる。 脊椎動物でも80種以上で確認されており、その約半数が魚か爬虫類である。
単為生殖のメカニズムは、卵子ができる過程で形成され通常であれば消滅するはずの「極体」が、精子のように振る舞い卵子と結合することで起きる。
単為生殖はオスがいない場合に血筋を絶やさない方法として起こる進化上の珍しい現象と考えられていたが、アメリカの生物学者ウォーレン・ブースの調査ではオスが存在する自然環境下であっても単為生殖で妊娠していたヘビは驚くほど高い確率であった。
アマゾンモーリー
アマゾンモーリー(Poecilia formosa)はカダヤシ属に分類される淡水魚の一種。雌性発生による無性生殖で繁殖する。すなわち、雌は雄と配偶する必要はあるものの、母親はもともと二倍体の卵を作っており、交尾した雄の遺伝子が卵に取り込まれることがない。
そのため、母親のクローンが産まれることになる。この性質により、アマゾンモーリーは種の全個体が雌である。本種の一般名は、雌しかいないという特徴をギリシア神話に登場する女だけの部族アマゾーンになぞらえたものである。メキシコ北東部の暖かい淡水やテキサス州のリオ・グランデ川、ニュエセス川の原産である。
進化論によれば、種の遺伝的多様性を保ち、絶滅を避けるには、少なくともある程度の有性生殖が必要とされる。それでもなぜこの魚が長く繁栄し続けられたのかがついに判明し、3月11日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。
論文によれば、アマゾンモーリーは通常予測される無性生殖の悪影響を受けていない。そのうえ、無性生殖の欠点を打ち消す「秘密兵器」を備えていることがわかった。これはアマゾンモーリーをはじめ、無性生殖の種が絶滅を回避する仕組みについて新たな発見だ。
驚きのガールズパワー
アマゾンモーリーは親指ほどの魚で、小さな丸いひれを持つ。アマゾンという名前は、ギリシャ神話に登場する女性だけの部族に由来する。約10万年前にアトランティックモーリー(P. mexicana)のメスとセイルフィンモリー(P. latipinna)のオスが交雑して誕生した種だ。
通常、異なる種が交雑すると、不妊の子孫が生まれる。だが、この交雑は自分自身の完全な複製をつくる新種を生み出した。単為生殖を引き起こすのに、引き金として別種のオスの精子が必要ではあるものの、その子どもは決してオスのDNAを受け継がない。つまり自己複製、クローンだ。
アマゾンモーリーが1932年に発見されたとき、無性生殖が可能な唯一の脊椎動物だった。その後、コモドオオトカゲやシュモクザメなど、数十種の脊椎動物が同様の能力を持つと判明したが、無性生殖のみを行う脊椎動物は少ない。アマゾンモーリーはその一つだ。
アマゾンモーリーがどのようにそれを成し遂げているかは長年の謎だった。
無性生殖で遺伝的な変異が蓄積する仕組みを再現した最新モデルによれば、アマゾンモーリーは「1万年ほどで絶滅していたはずです」と、論文の筆頭著者でドイツ、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの計算生物学者のエドワード・ライスメイヤー氏は言う。「それよりもはるかに長く存在し続けている事実が矛盾を生み出しています」
ライスメイヤー氏が米ミズーリ大学の研究員としてアマゾンモーリーを研究し始めたのは2019年だった。その当時、自然選択によって有害な突然変異が排除されるわけでもないのに、特に脊椎動物のような複雑な種が無性生殖だけでなぜ有害な突然変異を蓄積しないのか、わかっていなかったという。
遺伝子変換・交差組み換え
その謎を解明するべく、ライスメイヤー氏らはアマゾンモーリーのゲノムを調べた。その結果、数万年にわたって独自の遺伝子管理を行ってきたことが判明した。
遺伝子解析によれば、アマゾンモーリーでも有害な突然変異は起こっている。しかし、こうした突然変異を除去または修正できる「遺伝子変換」というプロセスを利用していた。
このプロセスでアマゾンモーリーは、DNAの一部を別の染色体上の似た配列から複製されたものに置き換える。人を含む哺乳類はこの能力を持ち、主にDNA損傷を修復するために使われる。
一方、アマゾンモーリーの場合、遺伝子変換は有性生殖で母親と父親の遺伝子が組み合わされるときに起こる「交差組み換え」という現象と同じ役割を果たしている。
遺伝子変換も交差組み換えと同様、望ましくない突然変異を除去したり、修復したりして、アマゾンモーリーに遺伝的多様性をもたらしていた。無性生殖種にはそのような回避策があるかもしれないと考えられていたが、「実際にそれが起きていることが示されたのは今回が初めてです」とライスメイヤー氏は述べている。
がんの治療につながる可能性も
ライスメイヤー氏らがアマゾンモーリーのゲノムで見つけたものは「おそらく(ほかの無性生殖種でも)起きていることでしょう。単にまだ証明されていないだけです」とノルウェー、オスロ大学の教授を務める微生物学者マイカ・ダンソーン氏は言う。
ダンソーン氏は今回の研究に関与していないが、ほかの無性生殖種でも同様の研究が行われることを期待している。「ほかの動物、植物、菌類の間でこれがどれほど広く見られるか、そして真核生物や原生生物でも起こっているのかがわかれば面白いでしょう」
すべての無性生殖の種が同じような手段を用いているかはわからない。ライスメイヤー氏もダンソーン氏も、今後の研究でこの疑問が解明されるよう望んでいる。
クローンによる繁殖が確認されている数千種のうち、科学者がゲノムレベルで詳しく研究を行ったのはごく一部にすぎない。自然が無性生殖のコストに対処する方法をいくつか編み出した可能性はあるとライスメイヤー氏は考えているが、それらの研究に時間を割かない限り、本当のことはわからない。
これらの遺伝的な力学を解明できれば、遺伝子組み換え作物からがん治療まで、「多くのことに応用できます」とライスメイヤー氏は言う。
「がんとは、クローン細胞の系統が変異を蓄積し、変異をもたない系統を駆逐する疾患です」。アマゾンモーリーはそれ自体が興味深い存在だが、そのクローン能力は人の健康を脅かす重大な疾患との戦いについて、私たちに何かを教えてくれるかもしれない。
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