宇宙生活に将来必要な重力

 アメリカが主導する国際月探査プロジェクト「アルテミス計画」による宇宙船が日本時間の4月2日午前7時半すぎ、アメリカ南部のフロリダ州から打ち上げ成功した。

 宇宙船は10日間の日程で月を周回して地球に戻る計画で、人類が月に向かうのはアポロ計画以来およそ半世紀ぶりとなる。

 人類は将来、火星まで宇宙飛行をする時代を想定している。火星の重力は地球より小さい。地球の40%しかない。月ではさらに低く地球の1/6(16%)しかない。そのため生物が長時間火星や月で生活するとその影響を受ける。

 例えば人の場合、無重力では筋力が低下するため健康に大きな影響を与える。生物が問題なく暮らせるかどうか知るための基礎研究は、地上では作れない、小さな重力を作り出す宇宙の人工重力発生装置を使って進められている。

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 国際宇宙ステーションでの実験で、マウスを、ほぼ無重力の状態から地球と同じ重力までの環境に分けて飼育したところ、筋肉の維持に必要な重力が分かったとJAXAなどの研究グループが発表した。必要な重力は、火星より重く、地球より軽い環境だということで、研究グループは、宇宙で人が暮らすために必要な重力を考えるヒントになるとしている。

 宇宙ステーション「きぼう」で重力実験

 グループは、国際宇宙ステーションにある日本の実験棟「きぼう」を使い、マウスを、4つの重力が異なる環境でそれぞれ1か月間飼育し、姿勢を保つのに重要なふくらはぎの「ヒラメ筋」の変化を調べた。

 この結果、 ・ほぼ無重力と、地球の3分の1程度にあたる火星と同じ重力の環境で飼育したマウスは、筋肉量の減少や性質の変化、それに握力の低下が見られた一方、 ・火星と地球の中間程度の重力では、筋肉の量や機能が、ともに維持されたという。

 JAXA宇宙環境利用推進センターの芝大研究開発マネージャは「今回は動物実験だが、少なくとも人間にも筋肉の低下に重力が影響する範囲があると分かった。宇宙で人が住むために必要な重力を人工で作る装置の開発などにもつながるのではないか」と話した。

 人口重力発生装置とは

 人工重力は、宇宙空間や低重力環境で、主に物体(宇宙船など)の回転による遠心力を利用して、疑似的に地球上の重力(1G)を再現する技術。宇宙飛行士の筋肉減少や視力低下などの健康被害を抑え、長期的な宇宙滞在や将来の火星移住を実現するための不可欠な技術として、鹿島建設と京都大学が共同研究を行うなど開発が進められている。  発生原理は、構造物を高速回転させ、中心から離れる方向にかかる「遠心力」を重力として利用する。宇宙飛行士の筋力維持、骨密度の減少防止、長期間の宇宙旅行における健康管理が主な目的である。

 JAXAの実験棟「きぼう」にある細胞培養実験装置(CBEF)などで、小型の重力発生装置で植物や生物への影響が試験されている。

 鹿島建設と京都大学が月面や火星での生活を見据え、回転式居住施設などの具体的な構築方法を研究している。

 課題としては、人工重力を生み出すには巨大な構造物を回転させる必要があり、膨大な建設・運用のエネルギーコストがかかる。

 適正な重力については、マウスを使った研究で、筋機能の維持には火星(0.33G)よりも高い約0.67Gが必要であることが判明した。健康維持に最適な重力レベルの解明が続いている。

 この技術が確立されれば、SF映画のような宇宙での生活や、長期の惑星間旅行が可能になると期待されている。

 重力とは何か・惑星の重力比較

 重力は質量を持つ物質どうしが持つ引き合う力である。小さい物体では重力は小さいが惑星ぐらい大きくなると、大きな影響を持つようになる。

 惑星の重力は、その質量(重さ)に比例し、半径(大きさ)の2乗に反比例する。質量が大きく半径が小さいほど重力は強くなるが、太陽系の木星のように巨大でもガス惑星なら密度が低いため、地球の約2.5倍の重力に留まる場合もある。

 太陽系の惑星ごとの表面重力(地球を1とした場合)は次のようになる。太陽系の惑星や月における表面重力は、地球と比較して大きく異なる。

 太陽 (恒星): 28.02  木星 (最大): 2.53 (24.79𝑚/𝑠2)  地球: 1.00 (9.8𝑚/𝑠2)  海王星: 1.14 (11.15𝑚/𝑠2)  土星: 1.06 (10.44𝑚/𝑠2)  金星: 0.91  天王星: 0.89 (8.69𝑚/𝑠2)  火星: 0.38  水星: 0.38  月: 約0.16(約1/6)

 重力と大きさ・密度の関係

 質量と大きさ: 一般的に質量が大きく、半径が小さいほど、その表面の重力は強くなる。

 ガス惑星と岩石惑星ではどのような違いがあるのだろうか。木星や土星は巨大だが、主にガスで構成されているため密度が低く、大きさの割には重力はそれほど高くない。地球は岩石主体の高密度な惑星で、重力は太陽系の中で、海王星に次いで2番目に大きい。

 もし、地球の1.5倍以上の半径を持つ岩石惑星(スーパーアース)があるとすると、地球よりも強い重力を持つ可能性が高い。

 例えば、土星は地球の700倍以上の体積があるが、密度が低いため、表面の重力は地球とほぼ同じ(約0.95倍)である。



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