差別撤廃が良識を駆逐する 

 米控訴裁判所が女性専用スパに「生物学的男性の入場も許可されるべき」と判断したことへの、判事の反論が話題になっている。「差別撤廃」を盾に良識が駆逐されてはならない。

 米ワシントン州の女性専用スパが「性自認が女性である生物学的男性」の入場を認めないのは州の差別禁止法に反するとして法廷論争が続く中、このほど、米控訴裁判所は「入場を認めるべき」との判断を下した。裁判は今後、最高裁判所に持ち込まれる可能性がある。

 米ワシントン州シアトル近郊の韓国式スパ「オリンパス・スパ」は、浴場、アカスリ、マッサージなどを脱衣して利用するため、入場は13歳以上の女性のみに制限されている。

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 2020年、トランスジェンダー活動家で性別適合手術を受けていないが女性を自認するヘイヴン・ウィルヴィッチ氏が、このスパから「手術後のトランスジェンダーでなければ利用できない」と言われ、ワシントン州人権委員会に差別だと訴えたことから法廷論争が始まった。

 人権委員会からの訴え

 州人権委員会は、州の「公共施設法」と「差別禁止法」に違反しているとして、スパのWebサイトから「生物学的な女性」のみに入場を制限する文言を削除するよう指示。スパ側は22年、これを覆すよう求め、州人権委員会の事務局長を相手に訴訟を起こした。

 スパ側は、顧客や従業員の安全、法的保護のために入場制限が不可欠であり、女性客、特に未成年者を男性器にさらすことは州の淫行に関する法律で刑事罰の対象になると主張。さらに、結婚していない男女が一緒に裸になることはキリスト教の信仰と相入れないとし、信教の自由と結社の自由に関する合衆国憲法修正第1条を侵害されたと、州地方裁判所に訴えていた。

 しかし、州地方裁判所はスパ側の訴えを却下。スパは、第9巡回区控訴裁判所に上訴したが、控訴裁判所は3月13日に再審理を却下し、入場を許可されるべきと判断。そこに、同控訴裁の判事の一人であるヴァンダイク氏が激しい反対意見を表明した。

 男性器に関する訴訟 

 ヴァンダイク氏は「これは男性器(swinging dicks)に関する訴訟です」と、英語では下品な表現とされるスラングを使用した上で、「判決文にこのような表現が出てくるべきではないと思うかもしれない。それは間違いではない」

「しかし、スパで何も知らずに無防備な女性たちが、視覚的に男性器で攻撃される方がはるかに衝撃的であることは誰もが同意できるはず」と主張。

「この裁判所にいる大人たちは、集団的に正気を失っている」「"意識の高い"規制当局や共犯関係にある裁判官たちは、自分たちの社会実験が現実の女性や少女に及ぼす影響を、積極的に無視しようとしている」と糾弾した。

 これに対し、同僚の判事が「裁判所は下品な酒場の会話をする場ではない」「尊厳と礼儀という通常の原則を無視し、この裁判所を貶めている」との反対声明を発表。するとヴァンダイク氏は「裁判所の多くの判事が、この訴訟は男性器以外の何物でもないかのように装うとしているから、この衝撃的な言葉遣いが必要なのだ」「時として、『品位があり礼儀正しい』言葉は、法的な不正を覆い隠すために用いられる」と反論している。

 ヴァンダイク氏の発言は確かに強烈かもしれませんが、「女湯に生物学的な男性が入ることを認める」という決定は、女性の側に恐怖心を与えるものであり、女性の安全や権利を侵害するものであることは間違いない。

  性犯罪者も多いLGBTQ問題

 すでに、同様に未手術のトランスジェンダーの女性が女性風呂に入ることが認められているカリフォルニア州でも、スパで客同士のトラブルが発生している。性自認が女性の生物学的男性が、スパの女性専用エリアで男性器を露出していたことにより女性5人が警察に通報。店舗側は顧客が施設を使用する権利を擁護していたものの、結局、公然わいせつ罪で逮捕されている。この男は過去もわいせつ行為を繰り返し、性犯罪者として登録されていたことが分かった。

 アメリカではトランプ政権により、行き過ぎたLGBTQの優遇政策が見直されていますが、ワシントン州やカリフォルニア州など、リベラルの強い州では依然としてこうした問題が続いている。

 日本では、性別変更の要件として、手術やホルモン投与による「外観要件」が必要とされてきた。これは、公衆浴場などでの混乱を避けることも目的とされていた。しかし23年には、最高裁が「身体の侵襲を受けない自由」を保証する憲法13条に違反するとして、違憲との判断を下し、その後も各地の裁判所が、手術なしでの性別変更を認めている。

 トランスジェンダーの公衆浴場の利用については、厚生労働省が「身体的特徴に従った浴場を利用すること」と通知しており、手術なしで性別を変更した場合も、「トランス男性が女性用の風呂に入る」ことは認められていない。

 ただ、女湯に「心は女」であるとして侵入する事件はこれまでも起きており、2023年11月には、三重県桑名市の施設で女湯で体を洗っていた男が逮捕された。男が女性の格好をしていたため、従業員が女湯の鍵を渡していたといい、愛知県温泉協会は、差別になってしまう懸念から、受付で「男性ですか、女性ですか」という確認は難しいとのコメントを出している。

 差別を防ぐため常識を変えるのは問題

 性自認が女性の男性であっても、共同浴場の利用については自主的な配慮をする例がほとんどだとされている。ただ、大川隆法・幸福の科学総裁はこうした事例について「『"変態"の場合もある』ことはある」とし、「メインリーな権利として確立するのは、後世に憂いを遺すことにはなるのではないかと思う」と指摘している。

 結局、「『自分は心が女だ』と言えば、女性」であることが法律で正式に認められれば、現実社会で線引きを行うことは極めて困難になってしまう。「差別を防ぐ」ための法制化により、常識が通用しなくなる社会をつくることは避けなくてはならない。

トランスジェンダー問題――議論は正義のために
ショーン・フェイ
明石書店
2022-10-09