日本にとって原子力は欠かせない

 ホルムズ海峡が封鎖された途端に、エネルギー価格や物価が上昇している。エネルギー資源のない日本にとっては、さまざまなエネルギー資源が必要である。原子力もその一つであるが、原子力発電所で最後に残る高レベル放射線廃棄物の最終処分地の問題が残っている。

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、東京都小笠原村に対し南鳥島での文献調査を申し入れた経済産業省などは4月14日、村内の父島で初めて住民説明会を開いた。説明会は非公開で行われた。参加者らによると、文献調査の受け入れに賛成する声の一方、「なぜごみの処分を島が引き受けないといけないのか」「村は観光中心だから核のごみというのは印象が悪すぎる」など風評被害や環境への影響を懸念する意見が出た。

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 核最終処分場(高レベル放射性廃棄物処分場)は、原発の使用済み燃料からプルトニウム等を取り出した後に残る放射性廃棄物を、ガラスで固めた物を地下300m以深に埋設・封印する施設。数万年以上にわたり人間と環境を隔離する必要があり、日本は現在、北海道寿都町・神恵内村、佐賀県玄海町で文献調査中ですが、最終的な処分地は未定である。

 2025年3月時点で、青森県にある日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場と茨城県にある日本原子力研究開発機構の再処理施設で、あわせておよそ2500本の「ガラス固化体」が一時的に保管されている。ガラス固化体から放出される放射線は致死量に当たる。だから地中深くに保管することが決められているが、そんな危険物をどこに埋めたら良いのだろうか。

 「核のごみ」処分場選定

 原子力発電で出る、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定をめぐり、東京 小笠原村は、国から申し入れのあった南鳥島での「文献調査」について、4月13日に母島と父島でそれぞれ住民説明会を開催し、村長の考えを説明すると発表しました。関係者によると、文献調査の実施の判断を国に委ねる方向で調整しているという。

「核のごみ」の最終処分地をめぐり、経済産業省は3月、小笠原村の南鳥島について、活断層が近くにないなど好ましい科学的特性が期待できることや、全島が国有地であることなどを理由に、調査の第1段階となる「文献調査」の実施を村に申し入れた。

 これを受けて、小笠原村は4月1日、ホームページを更新し、4月13日の正午から母島で、午後7時から父島で、それぞれ住民説明会を開催し、渋谷正昭村長が自身の考えを直接説明すると発表した。

 関係者によると、小笠原村は、これまでの説明会で出た住民の意見は国側に伝え、配慮を求めたうえで、南鳥島での実施は「国が判断すべき」として、国に判断を委ねる方向で調整しているという。

「核のごみ」の処分地の選定に向けた文献調査は、これまでに北海道の寿都町と神恵内村、それに佐賀県の玄海町で実施されているが、議会での請願の採択などを経ずに国から申し入れる形で実施されれば、初めて。

 東京都心から南東に約2000キロ 南鳥島とは

 東京の小笠原諸島の南鳥島は、サンゴ礁で形成された都心から南東におよそ2000キロ離れた日本で最も東にある国境離島。小笠原諸島の父島からも約1,200km〜1,300km離れた、太平洋上の「絶海の孤島」である。

 一辺が約2キロメートルの三角形の平坦な島であり、国土地理院が公表する全国都道府県市区町村別面積調によれば、2024年7月1日時点の面積は1.47平方キロメートルで、最高地点の標高は9メートル。島の周囲はサンゴ礁で浅くなっているが、潮流が速い。

 この海域は北西太平洋海盆に含まれ、島の周囲は深い海に囲まれており、他のどの陸地からも1,000キロメートル以上離れている。サンゴ礁の外側は水深1,000メートルの断崖となる。

 東京都によると島内には滑走路や波止場、防衛省や国土交通省の駐在施設があるという。島には海上自衛隊や気象庁の職員が常駐しているが、一般の住民はおらず、港湾施設の整備や気象観測などが行われているという。

 1902年(明治35年) - アメリカ人A・A・ローズヒル(Andrew Ambrose Rosehill)がアメリカ合衆国による領有権を主張して開拓を試みるが、それを察知した大日本帝国も軍艦笠置を派遣し、先に上陸して牽制した(南鳥島事件)。この事件の後、日本領として認められた。

 最近、南鳥島沖の海底からレアアースを含んだ泥を採掘することに成功している。内閣府のプロジェクトは、探査船「ちきゅう」によって水深およそ5700メートルの海底から泥を引き上げることに成功した(2月2日に発表)。

 現在は人口の少ない南鳥島ではあるが、将来的には核のゴミ処分場やレアアースの採掘基地やそれに伴う産業施設が設置され、人口が増えることが考えられる。

 NUMO「きめ細かい説明と対応を行っていきたい」

 原子力発電所で出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分や処分地の選定に向けた調査を行う国の認可法人、NUMO=原子力発電環境整備機構は「小笠原村の渋谷正昭村長から村民説明会の開催を要請された。小笠原村で文献調査を受け入れてもらえるように、きめ細かい説明と対応を行っていきたい」とコメントしている。

 小笠原村 渋谷村長「村民や村議会の意見 踏まえながら判断」

 申し入れを受けた小笠原村の渋谷正昭村長は村のホームページでコメントを発表した。

 この中で渋谷村長は、「今回の受領に先立ち、最終処分の必要性や文献調査の内容について事前の相談を受けた際、国とNUMO=原子力発電環境整備機構には速やかに村民向けの説明会を開催し、地層処分や文献調査の内容などについて村民に丁寧な説明を行うようお願いした」としている。

 その上で、「私としては説明会などでの村民や村議会の意見などを踏まえながら判断していく」とコメントした。

 東京 小池知事「村長がどう対応するか注視」

 東京都の小池知事は、都庁で記者団に対し「午後に国から小笠原村に対して文献調査についての問い合わせがあったということについては伺っている。小笠原村の渋谷村長がどのような対応をするのかについて東京都として注視していきたい」と述べた。

 また、文献調査から先の調査が対象の自治体の長に加えて都知事の同意も必要になることについて、現時点での考えを問われたのに対し「国からの申し出があったという段階なので注視していきたい」と述べるにとどめた。

 専門家「問題ないか科学的視点からしっかり見る必要」

 原子力と社会の関わりに詳しい東京電機大学の寿楽浩太教授は、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定に向け、今回、国が主体的に「文献調査」の申し入れを行ったことについて、「非常に踏み込んだ対応という印象だ。原子力発電所を積極的に活用しようという国の動きがある中で、廃棄物の処分という問題についても、しっかり取り組む必要があるという姿勢があるのではないか」と指摘しました。

 そして今回の調査の対象とされた小笠原村の南鳥島について、「離島で一般の住民がいない国有地で、国はこうした点も考慮したと考えられる。住民の生活空間から離れたエリアでこうした場所で調査することになれば新しい取り組みだといえる。ただ、こうした場所で最終処分を行うことに問題がないか、科学的な視点からしっかり見る必要があり、国の説明が求められる」と話した。

「核のごみ」とは

 原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、原発から出る廃棄物のうち放射能レベルが最も高い部類のものを指す。

 国内で処分する高レベル放射性廃棄物は、使用済み核燃料から再び燃料として使えるウランやプルトニウムを取り出す過程で出る廃液と、溶かしたガラスを混ぜ合わせて固めたもので「ガラス固化体」とも呼ばれる。

 2025年3月時点で、青森県にある日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場と茨城県にある日本原子力研究開発機構の再処理施設で、あわせておよそ2500本の「ガラス固化体」が一時的に保管されている。

「ガラス固化体」そのものの放射線量は1時間あたり1500シーベルトと、人が防護なしに近づけば10数秒で死に至るレベルの極めて強い放射線を出している。

 日本では2000年にできた「最終処分法」で地下300メートルより深くに処分施設を建設し、放射能レベルが下がるまで、数万年にわたって人の生活環境から隔離することが定められている。

 これは「地層処分」と呼ばれ、原子力を利用する世界各国でも最終処分の方法として採用されている。

 処分地の選定方法は

 核のごみの処分地の選定については「最終処分法」と呼ばれる法律で定められている。この法律では、選定に向けた調査は3段階に分けて、20年程度かけて行われることになっている。

 はじめに、論文などの資料をもとに火山や断層の活動などを調べる「文献調査」を2年程度かけて行い、次にボーリング調査などで地質や地下水の状況を調べる「概要調査」を4年程度行う。

 最後に、地下に調査用の施設を作って、岩盤や地下水の特性などが処分場に適しているかを調べる「精密調査」が14年程度かけて行われることになっている。

 はじめの「文献調査」は、自治体が公募に応じるか、または、国の申し入れを受け入れることで開始されるが、第2段階の「概要調査」から先の調査に進むには、対象の自治体の長に加えて都道府県知事の同意も必要になる。

 調査の対象となった自治体には、段階に応じて交付金が支払われることになっていて、交付額は、「文献調査」で最大20億円、「概要調査」では最大70億円となっている。

 全国では、2020年から、北海道の寿都町と神恵内村を対象に初めての「文献調査」が行われ、2024年11月に、寿都町と神恵内村、それに道に第2段階の「概要調査」に進むことができるとする報告書が提出された。

 また、2024年6月からは、原子力発電所が立地する自治体として初めて、佐賀県玄海町でも「文献調査」が始まっている。

 「文献調査」が行われるにあたっては、寿都町は公募に応じ、神恵内村と玄海町では、議会で受け入れを求める請願が採択されたあと、国からの申し入れを受ける形で調査の受け入れが決まった。

 これまでにこの3つの自治体が「文献調査」を受け入れている。

 一方、長崎県対馬市では2023年9月に市議会が調査の受け入れを求める請願を採択したが、その後、市長が調査を受け入れない意向を表明し、調査には至っていない。

 最終処分地をめぐっては調査を受け入れた自治体などから、一部の地域だけに限定された問題にならないよう、国民的な議論を求める声も上がっている。

 このため、政府は、少なくとも「文献調査」や次の「概要調査」までは、複数の自治体で行う方針を示していて、さらに調査地点を増やすことを目指している。

 政府 最終処分「避けては通れない国家的課題」

 原子力発電を最大限活用する方針を掲げる政府は、高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定を、長期的に利用する上での「重要な課題」と位置づけている。

 政府は、2025年、日本の電力政策の骨格となるエネルギー基本計画で、それまでは「依存度を低減する」としてきた原子力発電について最大限活用していく方針に転換した。

 あわせて基本計画では原発を長期的に利用する上で、「核のごみ」の最終処分地の選定を「重要な課題」と位置づけて「国が前面に立ち取り組む」と明記したが、これまでに調査の第1段階となる「文献調査」の対象は、北海道と佐賀県の3つの自治体にとどまっている。

 現状について全国で初めて文献調査が行われた北海道寿都町の町長は、自治体が調査に応募する方式をやめ、国の責任で複数の調査地を選ぶべきだという考えを示している。

 こうした声も踏まえ、政府はことし1月、最終処分について「避けては通れない国家的課題」とした上で、全国の都道府県知事に対して理解を求める文書を送り、赤澤経済産業大臣は「この問題に今まで以上に積極的に取り組んでいきたい」と述べた。

 これまでは自治体みずからが応募するか、受け入れを求める請願が議会で採択されたことを受けて文献調査が始まったが、こうした動きを経ずに国が主体的に申し入れを行ったのは今回が初めて。

 政府は、3月14日と15日の2日間、小笠原村で住民向けの説明会を開く予定で、最終的に村が調査の受け入れを判断するかが焦点。



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