再び月へ!アルテミス計画始動
アメリカが主導する国際月探査プロジェクト「アルテミス計画」では初めて宇宙飛行士を乗せた宇宙船が日本時間の2日午前7時半すぎ、アメリカ南部のフロリダ州から打ち上げられ、月に向けた予定の軌道に投入されて打ち上げは成功した。
宇宙船は10日間の日程で月を周回して地球に戻る計画で、人類が月に向かうのはアポロ計画以来およそ半世紀ぶりとなる。
「アルテミス計画」はアメリカが主導し、日本やヨーロッパも参加する月の探査に向けた国際的なプロジェクトで、NASA=アメリカ航空宇宙局は2028年を目標にアポロ計画以来となる宇宙飛行士による月面着陸を目指している。
これに向けて日本時間の2日午前7時半すぎ、今回の計画では初めて宇宙飛行士を乗せた宇宙船がアメリカ南部のフロリダ州にあるケネディ宇宙センターから大型ロケットによって打ち上げられた。
宇宙船にはアメリカとカナダの宇宙飛行士4人が乗っていて、予定された軌道でロケットから分離され、打ち上げは成功した。
宇宙船は10日間の日程で月を周回し地球に戻る計画で、5日後の7日に月に最も接近して月面の様子を撮影するほか、地球との通信環境や宇宙船の生命維持装置の作動状況を確認します。
当初この宇宙船の打ち上げはことし2月に予定されていましたが、燃料漏れなどのトラブルで2回にわたって延期となっていました。
人類が月に向かうのは最後に月面着陸を行った1972年のアポロ17号以来で、月の裏側を飛行する際、人類が地球から最も離れた距離の記録を更新する見込みだ。
月面開発をめぐってはアメリカと中国の間で競争が激しくなっていて、成果に注目が集まっている。
大型ロケットの先端に搭載 宇宙船「オリオン」
宇宙船「オリオン」はNASA=アメリカ航空宇宙局が中心となって開発している宇宙船で、大型ロケット「SLS」の先端に搭載されて打ち上げられる。
宇宙船は宇宙飛行士が乗り込む「クルーモジュール」と、エンジンなどを搭載する「サービスモジュール」、それに打ち上げ時に緊急事態が発生した場合にロケットと宇宙船を引き離す緊急脱出システムで構成されている。
「クルーモジュール」は4人の宇宙飛行士が活動できるように作られていて、トイレや寝袋、それに軽い運動ができる機器などを備えている。
「サービスモジュール」は宇宙船が月へ向かう軌道に乗るためのエンジンや、電力を供給するための太陽電池パネルを備えているほか、酸素や飲料水などの消耗品を保管する役割も担っている。
宇宙船の飛行は基本的に自動で行われるが、船内にある3つのディスプレーや手動操縦用のコントローラーなどを使って宇宙飛行士が姿勢の制御などを行うこともできる。
地球に帰還する際は宇宙飛行士が乗り込むクルーモジュールが大気圏に突入し、パラシュートで減速しながら太平洋の沖合に着水し、船で回収されることになっている。
10日間の飛行計画
<1日目:地球周回軌道> オリオンは打ち上げのおよそ3時間半後にロケットから切り離され、地球を周回する軌道に入る。この軌道上でオリオンの操縦が手動モードに切り替えられ宇宙飛行士による手動操縦試験が行われるほか、生命維持システムの性能評価や通信システムの試験など点検作業が続く。
<2~5日目:月へ向かう> 2日目には地球を周回していたオリオンが月へ向かうためにエンジンの燃焼を開始。3日目から5日目にかけて、軌道を修正するための小規模な燃焼を繰り返す。その間、オリオンに搭乗する4人の宇宙飛行士は飛行中のトラブルに備えて心肺蘇生法の確認や、宇宙服の迅速な着用のデモンストレーションなどを行う。
<6日目:月の裏側に> そして打ち上げから6日目、オリオンは月に最も接近し、月の裏側を回り込むように飛行する。月の裏側を飛行する際、地球との通信が一時途切れ、この間、宇宙飛行士は月の裏側の写真や動画を撮影し観測を行う。
<7日目~9日目:帰還へ> 7日目にはオリオンが月の重力圏を離脱して地球帰還に向けた軌道修正を始める。地球へ向かう間、宇宙飛行士は観測データの報告や、宇宙船の手動操縦のデモンストレーションなどを行いながら帰還に備える。
<10日目:地球に帰還> そして10日目。オリオンはエンジンなどを搭載する部分を切り離して大気圏への突入を開始。オリオンは大気圏突入時の高温に耐えてパラシュートを開いて減速し、太平洋の沖合に着水して地球に帰還することになっている。
大型ロケット「SLS」とは
オリオンを打ち上げる大型ロケット「SLS」は全長およそ98メートル、直径8.4メートルの2段式のロケット。「コアステージ」と呼ばれる1段目のロケットは液体水素と液体酸素を使ったメインエンジンを4基搭載していて、1段目の両脇には固体燃料式の補助ロケットが2本取り付けられている。
メインエンジンや補助ロケットには2011年に退役したスペースシャトルの技術が数多く転用されていて、実績のある技術を使うことで新規開発にかかる時間とコストを削減している。
また、「アッパーステージ」と呼ばれる2段目のロケットにも液体水素と液体酸素を使ったエンジンが搭載され、コアステージを切り離したあと、このエンジンを噴射して軌道を変更する。
SLSは打ち上げ時、アポロ計画で使われた大型ロケット「サターンV」よりも大きな推進力を出すことができ、月へ向かう軌道に27トンを打ち上げる能力がある。
4人の宇宙飛行士
宇宙船にはアメリカ人3人とカナダ人1人の合わせて4人の宇宙飛行士が乗り込んでいる。
船長を務めるリード・ワイズマン飛行士はアメリカ海軍のテストパイロット出身で、2014年に国際宇宙ステーションに165日間滞在したほか、NASAの宇宙飛行士室長も務めたことがある。
ビクター・グローバー飛行士は宇宙船の操縦を担うパイロットで、アメリカ海軍のテストパイロット出身。日本の米軍基地での勤務経験もある。
クリスティーナ・コック飛行士は今回のメンバーでは唯一の女性で、女性としては歴代最長の328日間の宇宙滞在記録を持ち船外活動の経験も豊富。
ジェレミー・ハンセン飛行士はカナダ宇宙庁に所属し、カナダ空軍の戦闘機のパイロット出身だ。
日本の役割は
アルテミス計画はアメリカが主導し、日本やヨーロッパなどが参加する国際月探査プロジェクトで、日本はおととし4月、アメリカ側と月面探査に関する取り決めに署名している。
この中で、NASAが日本人宇宙飛行士に2回にわたり月面に着陸する機会を提供する一方で、日本側はJAXA=宇宙航空研究開発機構がトヨタ自動車などとともに有人月面探査車を開発し、その開発や運用にかかる費用などを負担することが盛り込まれた。
日本人宇宙飛行士の中のどの飛行士が月面に着陸するかは決まっていないが、月面探査への意欲を見せる人もいて、去年、国際宇宙ステーションの船長を務めた大西卓哉さんは地球帰還後の会見で「国際宇宙ステーションから月を見ながら、次はあそこに行きたいと思っていました。自分のこれまでの経験をすべてぶつけるつもりでアルテミス計画に貢献したい」などと述べている。
専門家「成功すれば月面着陸へ大きな1歩を踏み出す」
今回、宇宙飛行士を乗せた宇宙船が月に向かう意義について、惑星科学が専門の東京大学大学院の宮本英昭教授は「およそ50年ぶりに人間が月に行くという意義は大きい。アルテミス計画では月の先にある火星も見据え、アポロ計画よりもっと大きな新時代の飛行システムを開発していて、そのシステムがきちんと機能するかが確認されることになる。今回は月の裏側を通過して地球に帰ってくるだけだが、成功すれば、月面着陸に向けて大きな1歩を踏み出すことができる」と述べた。
そのうえで、地球から月まではおよそ38万キロ離れていて、宇宙船が月に近づくためには複数の軌道をいわば“乗り継いで”いく必要があるとして「まず地球を回る軌道に乗り、そこから加速して地球から離れる軌道に乗って月に到達しなければならない。ねらった軌道で月までいかないと地球に戻ってくることもできないので、精密な制御が必要となり非常に難しい」と話している。
月探査にアメリカが注力する背景には中国との競争
アメリカがアポロ計画から半世紀を経て再び月の探査に力を注ぐ背景には、資源開発をめぐる中国との競争がある。
月面ではここ15年ほどの間に氷の存在が確認されたことから、水から酸素やロケットの燃料となる水素が得られる可能性があり、今後の資源開発への注目が高まっている。また、月面での金属資源などのさらなる開発につながるほか、火星などさらに遠い惑星に向かう拠点となる可能性もある。
この月に強い関心を示しているのが中国。中国は2030年に有人による月面着陸を目指していて、ロシアなどの国々と月面基地を作る構想も打ち出している。
中国は今世紀に入って急速に宇宙開発を進めていて、自前の宇宙ステーションを2022年から運用しているほか、月の探査では2024年に世界で初めて月の裏側から岩石を持ち帰ることに成功した。
こうした中、アメリカでは人工衛星の打ち上げで旧ソビエト連邦に先を越された「スプートニク・ショック」になぞらえ、次のスプートニクは中国によるものになるのかという指摘が出たり、NASAの長官も「ここで負けると取り返しのつかないことになる」と発言したりするなど危機感が強まっている。
一方で、中国国営の中国中央テレビの国際放送CGTNは「『競争』と言っているのはアメリカだけで、資金獲得に利用されている。アメリカの計画はアメリカの主導権を受け入れることが求められるのに対し、中国はより開かれたモデルを推進している」とする当局者のコメントを伝えている。
各国による宇宙開発に詳しいCSIS=戦略国際問題研究所のクレイトン・スウォープ氏は、月面では宇宙条約によって領土の主権が認められていないため「アメリカや中国がどうふるまうかによって、各国に影響を及ぼす地政学的リスクが伴う可能性がある」と述べている。
また、中国の戦略について「世界に技術力を示すため有人での着陸を目指すものの探査はロボットを中心に進めようとしていて、アメリカとは異なる部分も見られる」と指摘している。
アルテミス計画とトランプ政権
アルテミス計画は2017年に1期目のトランプ大統領の指示をきっかけに始まった。しかしその後、ロケットや宇宙船の開発が遅れ費用が膨らんだことなどから、2期目のトランプ政権は去年、アルテミス計画について宇宙飛行士による月面着陸を果たしたあとは政府主導の体制を縮小し、民間に移行する案を示した。
これに対し連邦議会の上下両院では、与野党の議員から懸念や批判が相次ぎ、政府主導の体制が維持されることになった。
こうした中、月着陸船などの開発が遅れていることから、NASAは先月24日、計画の修正を発表した。
トランプ大統領の任期中の2028年に宇宙飛行士による月面着陸を果たしたあと、月面基地の建設に焦点を移すということで、当初予定していた月面基地建設に向けて人や物資を運ぶ中継拠点となる新たな宇宙ステーションの建設を一時中断するとしている。
アメリカの科学技術政策に詳しい専門家からは今回の打ち上げについて「技術実証の場であると同時に、野心的な探査プログラムを果たして持続させることができるのかを問う試金石でもある」との指摘も出ている。
トランプ大統領がSNS投稿
アメリカのトランプ大統領は宇宙船が打ち上げられるのを前に、SNSに「アメリカは50年以上ぶりに月に戻る。勇敢な宇宙飛行士たちを人類がこれまで到達したことのない宇宙の領域に送り出す」と投稿した。
そして「われわれは宇宙でも地球上でもその間のあらゆる場所で経済的にも、軍事的にも、勝利を収めている。そして今や星のかなたにおいてもだ。誰も匹敵する者はいない」などと述べ、宇宙空間におけるアメリカの存在感を強調した。
ESA長官「計画への貢献は大きな誇り」
アルテミス計画には、アメリカだけでなくさまざまな国や地域の宇宙機関が参加している。
このうち宇宙船を月に接近させるエンジンを搭載し、宇宙飛行士の生活に欠かせない水や酸素などを供給する「サービスモジュール」と呼ばれる機器を開発したESA=ヨーロッパ宇宙機関のアッシュバッハー長官がことし1月、NHKのインタビューに応じた。
この中でアッシュバッハー長官は「アルテミス計画への貢献は大きな誇りで、宇宙船はサービスモジュールなしに月に行って帰って来られない。確実に機能し、すべてが計画どおりに進むよう確認する」と述べ、今後の計画に向けて機器の性能を確かめる重要な機会になるという認識を示した。
また、多くの機関や国が参加していることについて「宇宙は厳しく挑戦的かつさまざまなパートナーの専門知識が必要で、私たちが何年も協力し合い、互いに助け合ってきたことの象徴だ」と意義を強調した。
そして「月面には資源や鉱物、おそらくレアアースも存在するだろう。時間はかかるだろうが、非常にエキサイティングな未来が待っている」と述べたうえで、今回の計画を足がかりに日本とも協力して月面の開発を進めたいという考えを示した。
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