麻薬はなぜ必要とされるか
2026年1月3日、米トランプ政権はベネズエラへの軍事行動に踏み切り、同国のマドゥロ大統領を拘束した。同氏は即時に米国へ輸送され、5日には麻薬密輸に関連する罪を巡りニューヨーク連邦地裁に初出廷した。
しかし、米国の違法薬物の多くはメキシコと接する南西部国境(陸路)から流入しているとみられ、麻薬関連組織は複数国にわたり活動しているとみられる。今回の件で麻薬組織そのものへの効果がどの程度であったか不明である。
なぜ、世界的に問題が大きい麻薬が必要とされているのだろうか?
麻薬が必要とされる主な理由は、現代社会において医療上の不可欠な役割を担っているからである。現代医学において、麻薬(特に医療用麻薬)は代えがたい治療薬として活用されている。

ガンなどの末期症状や手術後の激痛を抑えるために使用される。厚生労働省の医療用麻薬適正使用ガイダンスによると、主な効能は鎮痛、鎮静、鎮痙であり、特にがん患者の苦痛を和らげるために不可欠だ。
痛み止めには、炎症を鎮める「NSAIDs(ロキソニンなど)」や胃への負担が少ない「アセトアミノフェン(カロナールなど)」が代表的。頭痛や歯痛には即効性の高いロキソニン、発熱や高齢者には安全性の高いアセトアミノフェンが選ばれることが多い。
しかし、これらの薬では効かない痛みもある。ガンや結石などの痛みだ。私も尿路結石を起こした時には入院し、激痛に苦しんだ時がある。その時に打ってもらった「モルヒネ」の効果は抜群だった。
これは痛み止めとして、なくてはならない医薬品だ…と感じた。痛みがコントロールされることで、患者が日常生活を送ったり、治療を継続したりすることが可能になる。
現在、幻覚作用のあるキノコ(マジックマッシュルーム)に含まれる「シロシビン」という精神活性物質に、末期がん患者の精神的苦痛を軽減する可能性が示されている。
マジックマッシュルームの成分シロシビン
数年前、カナダのバンクーバー島に住む32歳の母親は、進行した転移がんの激しい痛みと死への恐怖に苛(さいな)まれ、ベッドで泣き続けていた。
彼女は、カナダ政府の特別なプログラムを通じて、マジックマッシュルームの主な幻覚成分であるシロシビン(サイロシビン)を摂取した。翌日には彼女の痛みは消えていて、家族と冗談を交わしたり、旧友と再会したりすることができた。そして翌週、息を引き取った。
SATAセンター・フォー・コンシャス・リビングの緩和ケア医であるバロリー・マスダ氏にとって、彼女は印象深い患者だった。氏はこのときの経験がきっかけとなって、終末期と診断された患者に対する幻覚剤の威力を初めて理解した。
「痛みのうち精神的あるいは心理的な経験に由来する部分」については、従来の医療では対処する手段がほとんどないが、幻覚剤はこの部分に効果があるとマスダ氏は語る。以来、氏は同様の患者のために数十回の幻覚剤投与セッションを実施してきた。
カナダでは合法の麻酔薬物「シロシピン」
カナダでは過去5年間に約400人の終末期患者が特別プログラムを通じて合法的にシロシビンを摂取しており、既に数カ国で同様の使用が認められている。だが米国では、薬物を規制する連邦法の関係で、現在はごく少数の臨床試験を除き、終末期患者へのシロシビンの投与は許されていない(編注:日本では、シロシビンまたはシロシンを含むマジックマッシュルームは麻薬及び向精神薬取締法により所持や使用が禁じられている。研究目的の利用には別途免許、許可が必要)。
そんな状況が、ついに変わるかもしれない。医師たちの圧力と長年の研究が実り、米国の政府機関が終末期医療(ターミナルケア)にシロシビンの使用を許可するかどうかを検討しているのだ。米国の多くの緩和ケア医が、できるだけ早く状況が変化することを望んでいる。
専門家によれば、幻覚剤療法は、終末期の転移がんや腎疾患、肺疾患などを治療することはないものの、多くの場合、それに伴う抑うつや不安や恐怖を軽くするという。
「終末期であること自体は変わりませんが、その解釈が変わります。もはや病気をメインテーマにすることなく、その人の人生全体の物語を語れるようになるのです」と話すのは、医師にして哲学者でもあるマニッシュ・アグラワル氏だ。
氏は幻覚剤を利用した緩和ケアの臨床試験を行っている米メリーランド州のクリニック、サンストーン・セラピーズの最高経営責任者(CEO)でもあり、100人以上のがん患者を対象とする幻覚剤療法の研究を監督してきた。
米国でも緩和ケアに幻覚剤として研究中
緩和ケアに幻覚剤を使う研究の大半はがん患者を対象としている。通常、患者は幻覚剤を投与する数週間前に体と心理の状態を調べる。投与した後は、数回の「統合」心理療法セッションを受ける(幻覚剤の体験から得られた洞察や感情を日常生活に取り入れてゆくプロセス)。たった1回のシロシビン投与でメンタルヘルスへの持続的な効果が得られる患者も多い。
米ジョンズ・ホプキンス大学の幻覚剤研究者マシュー・ジョンソン氏は、うつ病や依存症に苦しむ患者にマジックマッシュルームの有効成分であるシロシビンを投与する治療法を研究している。
2022年2月15日付けで医学誌「Journal of Psychopharmacology」に発表された研究では、重いうつ病の患者24人に対して、心理療法と併用してシロシビンを2回投与したところ、1年後の寛解率は58%だった(心理療法のみによる寛解率は3分の1程度とする研究結果がある)。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。

��潟�<�潟��