シャチはイルカのなかまだ。ハクジラ(歯のあるクジラ)の一種で、マイルカ科の中では最大の種である。白黒模様の体が特徴であり、北極から南極、熱帯海域まで、世界中のさまざまな海洋環境に生息する。雄の体長は通常 6–8 m で、体重は6トンを超える。雌はより小さく、体長 5–7 m、体重は3–4トン。
しかし、イルカといってもあなどるなかれ、シャチは頂点捕食者であり、自然界に天敵が存在しない。サメさえも捕食する。海洋系での食物連鎖の頂点に立ち、武器を使うヒトが唯一の天敵である。
しかも賢い。オオカミの群れのように集団で狩りをするため、「wolves of the sea (海のオオカミ)」と呼ばれることもある。魚、頭足類、哺乳類、海鳥、ウミガメなど、様々な獲物を狩る。
さらに、意図的に仲間に新たな行動を教える。動物の中で最も重たい脳を持つマッコウクジラに次いで、海洋哺乳類の中では二番目に重たい脳を持つ。人間を含むどの哺乳類よりも多くの灰白質と皮質ニューロンを持つ。
氷上の獲物を仕留める「波さらい戦術」
2023年10月、海の生態系の頂点に立つシャチが、水を武器にして狩りをする様子が記録された。
そのアザラシが気づいたときには、すでにシャチたちに取り囲まれていた。
南極の海峡に浮かぶ氷の上で、1頭のウェッデルアザラシが休んでいた。そこに、3頭のシャチが突然現れた。体重400キロほどになるウェッデルアザラシは海氷の上にいれば、海の捕食者の大半から身を守れる。しかし、この親子3代の雌シャチたちは、「波さらい戦術」と呼ばれる狩猟法を習得していた(100頭ほどが同戦術を使うことが知られている)。
シャチたちは標的を見つけると、戦線を形成し、海氷に向かって突進を開始した。そして氷の手前まで来ると、一斉に体を横にねじり、水中へと潜る。その勢いで起きた強い波が氷の上に押し寄せ、氷には亀裂が入り、アザラシを激しく揺さぶった。シャチたちはゆっくりと、そして執拗に突進を繰り返す。氷はさらに砕かれた。3度目の突進のときだ。波に襲われ、アザラシが海へと落ちた。慌てて氷の上に戻ろうとしたが、時すでに遅し。シャチに海中へ引きずり込まれていった。
親子3代の雌のシャチが、ウェッデルアザラシを狩る。3頭が起こす波によって、浮氷が砕けていき、とどめの波でアザラシは海へと投げ出された。

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