世界の嫌われ者アメリカのトランプ大統領

 1973年、第一次オイルショックが起きた。原因は、第4次中東戦争(1973年10月)だった。アラブ石油輸出国機構(OAPEC)がイスラエル支援国への石油禁輸と減産を実施し、OPEC(石油輸出国機構)が原油価格を約4倍に引き上げたことが直接的な原因だった。

 第4次中東戦争はイスラエルとアラブ諸国の紛争で、アラブ産油国が「石油」を対抗手段(武器)として使用した。

 サウジアラビアやイランなどの産油国が原油価格を70%引き上げた。イスラエル支持国(米国やオランダなど)への禁輸と、全体的な生産削減が実施された。当時の日本はエネルギーの約8割を中東からの輸入に頼っており、このショックで直接的な供給不足と狂乱物価(トイレットペーパー騒動など)を引き起こった。

 そして今回、ホルムズ海峡が封鎖されただけで、原油価格は高騰、日本や東南アジアは悲鳴をあげている。今後、日本政府は石油、天然ガスに代わる次世代エネルギーを開発しないと、本当に後進国になってしまう。現在、水素エネルギーなどの開発に必死になっている。だが、もう間に合わないかもしれない瀬戸際だと思う。

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 一方、トランプ大統領はベネゼエラを攻撃、大統領を捕捉した。さらにホルムズ海峡を封鎖され、世界を敵に回してもイラン戦争に突入した。そして5月に、中国に有利な国力を示しながら中国訪問を迎える。いったいなぜ、そこまで世界に嫌われてもAMGAを突き進めようとするのか考えたい。

 これをトランプ大統領の狂気、変人と決めつけるのは簡単だが、世界はそれほど簡単ではない。世界の脅威は、宇宙からやって来る時代に突入したからだ。中国は宇宙進出を果たし、宇宙からも核兵器を撃ち込める体制をつくろうとしている。

 トランプが描くゴールデン・エイジ 

「アメリカは再び、自らを成長国家とみなすだろう」「我々は星を目指す明白な運命を追求し、星条旗を火星に立てるため、アメリカ人宇宙飛行士を送り込む」

 トランプ米大統領は1月の就任演説で、19世紀に白人がフロンティアを目指して移住した西部開拓時代と重ねて「アメリカの黄金時代(ゴールデン・エイジ)が今始まる」と高らかに宣言した。

 トランプ氏は昨年の大統領選で「ゴールデン・エイジ」を連呼し、新時代への突入を全米に予感させた。政府効率化省トップのイーロン・マスク氏も、「アメリカの宇宙飛行士が初めて他の惑星に国旗を立てたらどんなに素晴らしいか想像できますか? 私たちはゴールデン・エイジを迎えるでしょう」と興奮した様子でスピーチし、冒頭の言葉を聴いて親指を立てて喜んだ。

 マスク氏は自動車など6つの事業に携わっているが、すべては「地球が危機に瀕した際の火星への入植」のためだ。約60兆円に上る資産についても「火星に自律的な都市を建設するには莫大な資源が必要になる」と語っている。

 トランプ氏とマスク氏の夢は「火星への入植」

 人類が最後に月に降り立ったのは、1972年、アメリカの「アポロ17号」である。この計画が中断して以降、「人類の科学技術のイノベーションは停滞している」と一部では問題視されてきた。

 トランプ第一次政権は、縮み志向だった宇宙政策を劇的に変え(規制緩和など)、その流れで、マスク氏率いる航空宇宙メーカー「スペースX」も急成長を遂げる。

 特に評価が高いのが、約50年ぶりに人類を月に送る「アルテミス計画」を始動させたことだ。52カ国が参加し、日本人も月に行く予定であるなど、西側諸国の総力を結集。トランプ氏はバイデン前政権下で遅れた計画を早め、火星への入植を急ぐ構えだ。

 トランプ氏とマスク氏は「火星に行く夢」でつながっており、宇宙を開拓する新時代を「ゴールデン・エイジ」と呼んでいると見ていい。

 トランプ第一次政権はNASA(航空宇宙局)の官僚主義を改革し、規制緩和で民間の宇宙ビジネスを活性化。安いロケットの製造に成功したマスク氏率いるスペースXは、その流れに乗って急成長する。いずれかが欠けていれば、中国は圧勝していただろう。

 舞台は地球内紛争から宇宙競争時代へ

 これに激しい火花を散らすのが中国である──。

 習近平国家主席が目の黒いうちに達成したいことは、「台湾統一」以外にもう一つある。 それは2045年までにアメリカを超える「宇宙強国」になる中間目標として、「30年までに中国人飛行士を月へと送り、月面基地を建設する」ことだ。

 習近平政権下では、探査機「嫦娥4号」が19年に世界で初めて「月の裏側」に着陸。「嫦娥6号」が24年に、月の裏側で岩石などのサンプルを回収するという離れ業をやってのけ、世界に衝撃が走った。月面探査ではアメリカの先を行っており、いずれ、月にガソリンスタンドのような補給基地もつくり、「月を経由して火星に向かおう」としている。

 並行して、地上の10倍以上の発電効率を持つ「宇宙太陽光発電」も試験中で、宇宙で発電した電力をマイクロ波に変換して地球に送電する計画を進め、そのシステムを載せる超重量級ロケットを30年に打ち上げ予定である。

 中国は2050年までに「地球外生命体の探査」や、宇宙に存在する未知の物質「ダークマター(暗黒物質)」、「重力波」などを調査すると、昨年10月に発表した。

 宇宙は資源が無限、月には1万年分以上のエネルギーが眠る

 今や米中はどちらが先に、月や火星に降りるかをめぐり、デッドヒートを繰り広げている。なぜ両国は、それほど宇宙への進出を急ぐのか。

 端的に言えば、「宇宙に遍満する富(資源)を採掘し、次の覇権国家の座を確実に射止める」ためである。

 かつてスペインは、コロンブスの航海を援助し、新大陸(アメリカ大陸)を発見した。そしてアステカなどを征服し、未開の鉱脈(ポトシ銀山など)を開発した結果、莫大な富をヨーロッパにもたらし、スペインは16世紀に世界帝国に上り詰めた。世に言う「大航海時代」だ。

 さらに今、「宇宙版・大航海時代」の到来が近づき、アメリカ、中国、ロシア、インドなどの大国と富豪は、宇宙に莫大な投資をかけている。

 有望視される資源は、地球には微量しかないが、月には相当あると推定されている「ヘリウム3」である。ヘリウム3は核融合反応の材料で、原子力発電所の核分裂の4倍のエネルギーを生むとされ、放射能も少ない「理想の燃料」と期待されている。将来的に小型原発を月で組み立て、ヘリウム3を燃料源に活用できれば、エネルギー問題を解消し、「月に定住する道」が大きく前進する。

 中国の月探査プロジェクトの第一人者である欧陽自遠氏は、「ヘリウム3は核融合の材料で、月の埋蔵量は約100万トンに達し、人類社会の1万年以上のエネルギー需要を満たせる」と鼻息が荒い。

 宇宙は宝の山、たった1つの小惑星が1000京ドル

「宇宙は宝の山」と言われている象徴が、火星と木星の間に位置し、鉄やニッケルの塊である「小惑星プシケ」。「プシケに眠る金属は1000京ドル(京は兆の1万倍で、15垓円)の価値がある」と発表され、世界は驚いた。

 これが事実なら、たった1つの惑星から、人類の歴史で採掘したすべての金属よりも多く採掘できる。現段階ではその試みはまだ実現できないものの、NASAは将来に期待して2023年に探査機を送り、29年に到着させる予定だ。

 どこかの国が採掘・輸送に成功すれば、それだけで、累計110兆ドル(1京6700兆円)に上る世界の国内総生産(GDP)を一瞬で抜き去り、頂点に立つ。

 日本の探査機「はやぶさ2」が着陸した「小惑星リュウグウ」も、米企業から12兆円近い価値が付けられている。安い小惑星で数千億円、大きいものは1000兆円以上値付けされており、まさにゴールドラッシュを彷彿とさせる。

 トランプ氏の「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って掘って掘りまくれ)」というエネルギー増産計画は、宇宙にも広がるだろう。

 宇宙の戦いは次の覇権国家を決める

 では、米中が宇宙の富を手にすればどうなるのか。アメリカ衰退論や中国衰退論といった議論は雲散霧消。かつてのスペインのように、世界の覇権を握ることになる。

「宇宙の戦いは次の覇権国家を決める戦場である」がゆえに、米中のどちらも、宇宙から手を引くことはあり得ない。

 そのためトランプ政権は、宇宙開発に必須となる人工知能(AI)やロボット、半導体などの対中規制を続々導入。米中経済を分離(デカップリング)し、中国の科学技術の進歩を阻止する気でいる。

 同時に、宇宙産業の足腰となる「強い製造業」を復活させるべく、中国などに流出した企業の国内回帰を後押ししている。というのも、アメリカが旧ソ連との熾烈な宇宙競争に勝利した要因は、「アメリカが世界の工場」だったことと関係しているからで、中国を世界の工場の座から追い落とす必要があると言える。

 中国は宇宙でも領土を広げる!

「月は尖閣、火星は南シナ海」と衝撃発言

「私たちは宇宙競争に参加している。彼ら(中国)が科学研究を装って月面に到達しないよう用心した方がいい」

 バイデン政権時代のネルソンNASA長官が米メディアの取材でこう語ったように、米専門家の多くは「中国が宇宙に行くことを許してはならない」と強く警戒している。

 これは単に、中国への意地の張り合いで啖呵を切っているのではない。実は中国は「宇宙を支配する」と恐ろしい野心を公言しているのである。

 2019年に、月探査機の設計責任者である葉培建氏が国営テレビの取材に対し、次のような衝撃的な内容を口にした。

「宇宙は海、月は釣魚島(尖閣諸島)、そして火星は黄岩島だ。行ける時に行っておかなければ、将来の世代に責められることになる。他の者たちに先に行かれて乗っ取られれば、行きたくても行けなくなってしまう」

 つまり、「月は尖閣」「火星は中国が実効支配する南シナ海のスカボロー礁」になぞらえ、中国は「無人の惑星を領有する」と宣言しているのだ。

 中国は宇宙の国際法を100%破る

 一応、中国も加入している国際法の宇宙条約では、「全ての国の利益のための宇宙探査の自由」「国家が月などの領有権を主張してはならない」などと定められており、中国の試みは明らかに「違法行為」に当たる。

 だが中国が国際法を守るはずがないことは、南シナ海の傍若無人ぶりを見れば明らかであり、それと同じことを宇宙でもやる気でいるようだ。

 そのためネルソン長官は前述の言葉を話した後に、「彼ら(中国)は、『ここに入るな。ここは私たちの縄張りだ』と主張するだろう」と警鐘を鳴らしているのである。



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