白亜紀の地層にクチバシを多数発見
白亜紀(Cretaceous period)は、約1億4,500万年前から6,600万年前にあたる中生代最後の時代である地質時代の一つ。温暖な気候と高海水準とで特徴付けられる時代である。
北海道大などの研究チームは2025年7月に、岩石内をCTのように輪切り状に撮影する新手法で、白亜紀後期(約1億~7000万年前)の岩石から軟体動物の化石を大量に発見した。硬い組織が少ないイカやタコの化石はほとんど発見例がなく、進化や繁栄の過程が不明だったが、成果は白亜紀の海がすでに、魚類やアンモナイト類をしのぐ「イカだらけの海」だったことがわかった。
軟体動物、特に頭足類(イカ、タコ、オウムガイ)が持つクチバシ状の口は、顎板(がくばん)と呼ばれ、その形が鳥の嘴に似ていることから、通称「カラストンビ」と呼ばれている。

イカやタコには殻はなく、硬い「くちばし」が残る可能性はあるものの、サイズが小さい上にもろいため、化石を取り出すのは難しかった。
アンモナイトより繁栄したイカ・タコ類
北大の伊庭靖弘准教授らは、ナノメートル単位で化石が含まれる岩石の研磨・撮影を繰り返し、内部構造を高解像度のフルカラーでデジタル化する「デジタル化石マイニング(採掘)」と呼ばれる手法を新たに開発。道内の白亜紀の地層から産出した岩石を調べた。
その結果、計1000個のくちばし化石を発見。うちイカ類が263個(平均3.8ミリ)で、全40種のうち39種は新種だった。最も古い化石は約1億年前のもので、それ以前の地層からは見つからないため、この時期にイカ類が発生し、約600万年の間に急速に多様化したことが明らかになった。
また、岩石に含まれる同時代の魚類やアンモナイト類の化石と比較し、個体数や大きさを推定したところ、白亜紀後期の海では、繁栄していたことが知られているアンモナイトを上回るイカ類が生息していたと分かった。
白亜紀のタコは巨大な捕食者だったか
恐竜がいた白亜紀後期の地層から見つかったタコの口の部分の化石から全長を推定したところ、もっとも大きいもので19メートルに達していた可能性があるとする研究結果を、2026年4月に北海道大学などの研究グループが発表した。当時の海では最大級の捕食者だった可能性があるとしている。
北海道大学などの研究グループは、北海道内のおよそ1億年から7200万年前の白亜紀後期の地層から採取した岩石を立体的なデジタル画像にし、AIで分析することで、タコの口の部分の化石12個を見つけた。
これまでに北海道などで見つかった同じ白亜紀後期のタコの口の部分の化石15個を含めて詳しく調べたところ、もっとも長いものは10センチほどで、欠けた部分などを補うと、元は15センチほどあったことが分かったという。
さらに、現在生息する12種類のタコのデータに基づいて、口の部分の長さから全長を推定したところ、白亜紀後期のタコは大きいもので19メートルに達し、現在の無脊椎動物では最大とされるダイオウイカよりも、大きかった可能性があることが分かった。
デジタル画像の解析から化石にはタコが獲物の貝の殻などをかみ砕いた際に生じたとみられる傷やひびがあり、白亜紀後期の海で最大級の捕食者だったと考えられる。
伝説のクラーケンはダイオウイカではなくオオダコだった
近世ノルウェーに伝わる海の怪物クラーケン。そのはっきりとした姿は不明だが、巨大な体に多数の腕(触手)を持つとされ、夏の凪の日に海面に浮上してその腕で獲物を(人や船すらも)捕らえるという。
小説家ヴィクトル・ユーゴーやジュール・ヴェルヌはクラーケンの研究に影響を受けて、危険な巨大頭足類を作品に登場させた。現代のファンタジー創作においても、クラーケンの名で頭足類の姿をした海の怪物がしばしば登場する。フランスの軟体動物学者モンフォール(英語版)がクラーケンの正体を巨大な蛸であるとしたことから蛸のイメージが定着し、通念となっていた。
近代の研究者は、クラーケンは実在のダイオウイカに由来するのではないか…と考えるようになっている。しかし、今回の発見で、タコだった可能性も再び高くなったといえる。
北海道大学大学院理学研究院の池上森学術研究員は「タコなどの無脊椎動物を含めた海洋生物の進化の歴史の解明につなげていきたい」と話している。
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