カイヤドリウミグモ大量発生

 2007年7月、千葉県の小櫃川河口付近に広がる盤洲ではアサリ漁が休漁に追い込まれ、漁業に大きな被害が生じた。6月下旬漁業者から相談があった。今年の春から「死んでいるマテガイやアサリが妙に多い」という話が出ており、4月には潮干狩り客の指摘でアサリから寄生生のウミグモであるカイヤドリウミグモが発見されていた。

 そして6月下旬にアサリの大量斃死が発生し、また残ったアサリにもウミグモが寄生し、出荷できない状態とのことであった。

 漁協にとって、江戸前のアサリ漁は最大の収入源だったが、アサリに寄生して体液を吸う「カイヤドリウミグモ」が大量発生して壊滅的な打撃を受け、その後、漁獲量は回復しないまま激減が続いた。ウミグモの影響に加え、魚や鳥による食害などが指摘された。(写真はカイヤドリウミグモ)

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 カイヤドリウミグモ (Nymphonella tapetis) は、節足動物門皆脚(ウミグモ)綱皆脚目に属する。皆脚目はその名の通り全身が脚のような体型であり、実際に生殖巣が歩脚の中に至る特異な体制から、節足動物の中でもウミグモ亜門という独自のグループを形成している。もちろんクモではないので、糸を出したり咬毒を持っていたりはしない。

 この種は、幼生時にアサリやオニアサリ、シズクガイ、キヌマトイガイなどの二枚貝の外套腔に寄生し 、成体になると外に出て砂中に入るとされている。

 アサリは波に流されやすい

 2021年11月、船橋市漁業協同組合(船橋市湊町1-24-6)は、壊滅に瀕していた船橋のアサリが「砕石覆砂事業」により自然繁殖に成功したため、6月22日、報道関係者に向けてアサリ漁を公開した。

「砕石覆砂事業」とは、細かい砂利を海に撒いて海底を覆いアサリの繁殖を補助する事業。船橋三番瀬のアサリ漁は1950年代後半から1975(昭和50)年には漁獲高が年間1万トンを超えることが多かったという。

 かつてアサリは船橋の特産物として知られ、「ふなばし三番瀬海浜公園」(潮見町40)のマスコットキャラクター「アサリくん」も市民に親しまれていたが、青潮の影響で次第に漁獲高は減少。2006(平成18)年以降は激減し、ここ10年間の漁獲高はゼロに等しかった。

 千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所(富津市小久保)の元所長で、40年にわたり、東京湾の漁業とアサリの研究を続けている柿野純さんは、「アサリの漁獲高の激減の原因の一つには、海苔漁の激減が影響している。アサリは波に流されやすく、海苔養殖の支柱柵が、波で稚貝が流されるのを防いでいた。しかし今は、海苔の養殖も1989(平成元)年の5分の1となってしまった」と話す。

 さらに「もう一つは2011(平成23)年の東日本大震災で三番瀬にも津波が発生し、海底の40~50センチの砂が流され、水深が深くなったことで波が大きくなり、アサリも流されてしまった」と話した。

 砕石覆砂事業でアサリ復活

 アサリの繁殖を促すため、2017(平成29)年から2020(令和2年)年まで千葉県、船橋市と漁業協同組合、専門家らで組織する「船橋市漁協活動グループ」が水産庁「水産多面的機能発揮対策事業」(国・県・市が一体となり漁業者などの活動を支援)からの交付金を利用し、三番瀬の漁場4カ所に砕石覆砂区の造成を試験的に行った。その交付金額は4年間で約5,000万円となる。

「小さいアサリが留まりやすいように2~5ミリの砕石で海底を覆います。4年間で7,400平方メートル、厚さは5~10センチになります。今年になって、アサリが成貝(3~4センチ)に育った。長期的にみて結果が出れば」と船橋市役所の経済部農水産課の梅田新也さん。

 この日、貝漁師・小野尾祐司さんが砕石覆砂地区でアサリ漁を披露した。鋤簾(じょれん)で引き上げると東京湾のアサリ特有の白黒模様の「パンダアサリ」や青みがかった「三番瀬ブルー」と呼ばれるアサリが採れた。小野尾さんは「砕石をもっと広い範囲で撒いてもらいたい」と同事業に期待している。

「砕石覆砂は伊勢湾、有明海などで行われているが、かつては壊滅的だった天然のアサリが成貝まで成長したのは東京湾ではふなばし三番瀬が初めて。現在アサリは砕石覆砂を施した場所にしか生息していない。今後の漁場の改善や規模の拡大を検討している」と同事業の技術顧問を務める柿野さんは抱負を話した。

「船橋市漁業協同組合」専務理事の鈴木正俊さんは「ホンビノス貝は外来種だが、伝統的な江戸前のアサリの復活は喜ばしいこと」と笑顔を見せる。

 ふるさとの味復活に感謝を!新作フレンチに挑戦

 東京湾最大級の盤洲干潟で漁を行うのが、貝漁師歴30年の堤野利明さん。最盛期には年間1000トン以上のあさりが水揚げされていた木更津市だが20年ほど前に突然、大量死したそうだ。

 温暖化で大量発生したカイヤドリウミグモがあさりを襲った。そこから試行錯誤の日々が続いた。仲間の漁師と共にその駆除を開始。

 さらにあさりの稚貝を譲り受け育てるも、東京湾に馴染めずほとんどが死んでしまったことも。5年で回復する見立てだったが、10年経っても回復の兆しは訪れず…。次第に仲間たちも漁師をやめて去っていくなか、堤野さんは諦めずに復活を夢見て、挑戦を続けた…。

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 4月25日朝日テレビ「食彩の王国」で、日本フレンチ界を牽引する渡辺雄一郎シェフは地元・千葉県の故郷の味、江戸前あさりを復活させてくれた漁師たちへの感謝とエールを込め、新作メニューに挑戦。

 オイルで旨味を閉じ込めたあさりを合わせるのは、フレンチ風の酢飯。さらにあさりの出汁に今が旬の桜鯛、春野菜を合わせ、春の味覚を存分に味わう一皿に仕上げた。

 江戸前あさりの新たな一面を味わった、漁師の堤野さんが思うこととは…



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