イラン戦争の影響で物価が上がる

 石油の供給が絶たれた途端、物価が上がっている。ガソリン、軽油、重油、LPG、などの燃料だけでなく、プラスチック、合成繊維、塗料、合成ゴム、界面活性剤など様々な石油化学製品にも影響が出ている。石油は燃料に80%、石油化学製品に20%使われるという。

 あらためて我々の生活が石油に依存していたことがわかる。石油はありがたい。アメリカのイラン攻撃に大義はあるだろう。しかし、イランや日本、世界の一般市民には難しい政治判断は理解できない。生活を守ることが大切であり、戦争は直ちにやめてほしい。

 現代生活に欠かすことのできない石油。日本は資源のない国と思われているが、石油非生物起源説によると実は資源大国だという。石油はいったいどうやってできるのだろうか?(写真はメタンハイドレート)

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 石油の成因については、昔から様々な説が唱えられてきた。現在も正確なところはわかっていない。これらの説は、「生物起源説(有機成因説)」と「非生物起源説(無機成因説)」の2つに大別されるが、今日では「生物起源説」が主流となっている。

 石油の生物起源説(有機成因説)

 生物起源説は、石油が大昔の生物の遺骸から作られたとする説。石油の中にはポルフィリン系化合物(ヘモグロビンやクロロフィルなどが持っている環状構造)のような生物由来と考えられる成分が含まれており、生物起源説を支持する有力な証拠とされている。

 生物起源説の中でも、現在最も支持されているのは「ケロジェン根源説」。「ケロジェン」とは、堆積岩中に存在する不溶性の(有機溶媒に溶けない)固体有機物のことを指し、生物の遺骸が海底や湖底に堆積した後、ケロジェンを経て石油になったというのがケロジェン根源説。以下、ケロジェン根源説に従って石油の生成を見ていこう。

 地表面が沈降して海や湖ができると、そこには水中に生息する生物や陸上から運ばれてきた生物の遺骸、泥や砂などが堆積する。生体を構成する炭水化物、タンパク質、脂質、リグニンなどの高分子物質は、生物の遺骸が堆積していく過程で、分解、重縮合、還元、環化などの反応によってケロジェンとなる。

 この過程は、主に微生物の作用によって行われると考えられている。埋没が進んで深度が深くなると、ケロジェンは地熱の影響を受けるようになる。地下の温度は深度とともに上昇し、100m下がるごとに約3℃上昇する。地下深くに埋没したケロジェンは、長い年月の間に地熱によって熱分解され、その過程で石油が生成されるようになる。

 石油の素となった生物は、主に海洋性プランクトンや藻類だと考えられている。

 石油の非生物起源説(無機成因説)

 一方、非生物起源説では、生物の遺骸ではなく地球内部に存在する物質に石油の起源を求めている。石油の起源物質は、地球創生時に、地球の材料となった小惑星から持ち込まれて地球深部に蓄えられており、今も地球深部で石油の生成が続いているとしている。

 この石油非生物起説については、1870年代に元素の周期律表で有名なロシアの化学者メンデレーエフが提唱したことが始まりで、旧東欧諸国では古くから定説とされていた学説。

 その後、東西の対立もあり、この学説はあまり顧みられることもなかったが、有名な米国の宇宙物理学者であるトーマス・ゴールド(Thomas Gold)が、2003年にScientific American誌に発表したことで、西側諸国でも注目を浴びることになった。

 彼の説く非生物起説は、地球が最初から貯蔵しているメタン(CH4)から地球内部の高温・高圧の環境下で放射線の作用(放射線分解や触媒として作用)等により石油が生成された…というもの。

 現に太陽系では土星、木星、天王星、海王星などの大気に数%のメタンが含まれている。これらの炭素は非生物由来であると考えられている。炭素は太陽系誕生時からあったものだ。

 また、非生物起説の学者は、生物が存在しない地層から石油が採れることや、石油にヘリウム、ウラン、水銀等が含まれていることなど、生物起源説では説明できない点を指摘している。

 石油は今も地球内部で作られている

 石油の起源については、長らく生物起源説が主流だった。ここでは、無機起源質について掘り下げて考えてみたい。資源のないといわれる日本で資源を得ることができるようになるかもしれない。

 無機起源説は、地球のマントル内において、高温・高圧の条件下で石油の起源物質であるメタン(CH4)等が化学変化を起こし、より重い炭化水素(石油の成分)が生成されたとする考え方である。

 その炭化水素は、現在も地球のマントル内で自然に生成され、地殻を通じて上昇し、断層や割れ目を通って多孔質の岩石に吸収されて、油田やガス田が形成されると考えられている。地質学的には中東は油田に原油が溜まるのに有利であったのは確かだ。

 地球上では、火山地帯や活断層からマントル由来のヘリウムや二酸化炭素が放出されることが観測され、地球内部のガス成分の放出経路となっている。

 この理論に基づけば、石油や天然ガスの蓄積は単なる地質現象であり、この地球内部からのガス放出プロセスの一環であるとの解釈。

 無機起源説では、従来の生物起源説とは異なり、石油資源が地球内部から供給されるため、より広範囲かつ深い場所にも存在する可能性があると考えられている。

 無機起源説を実験で証明

 無機起源説を支持する大きな理由の一つは、実験的な裏付けが成功したことにある。

 最近まで、石油の無機起源説を受け入れる上での障害は、地球の上部マントルの条件下で複雑な炭化水素系を合成できる可能性を裏付ける、信頼性が高く再現可能な実験結果が得られていなかった。

 この説では、炭化水素の合成には、「十分な高温・高圧」、「炭素と水素の供給源」、「熱力学的に好ましい反応環境」の各条件を必要としている。

 炭化水素は、地球のマントル内で高温・高圧の状態下で自然に作られることが確認されている。具体的には、600℃から1500℃の温度と、20〜70気圧という圧力の環境で、炭化水素の分子が結びついて石油の主要な成分が生成される。

 石油成分となる炭化水素を作るためには、起源物質であるメタン、炭素および水素が必要だが、これらの物質は地球のマントルに豊富に存在している。

 炭素は二酸化炭素や黒鉛、マグネサイト、カルサイトなどから供給され、水素は水や鉱物中の水酸基から得られる。

 また、この反応を進めるために必要な還元作用(触媒)は、マントルに含まれる酸化鉄(FeO)が担っている。

 実際の実験では、下図に示す大型の高圧装置を使い、メタン(または炭素と水素)を起源物質として50気圧と1200℃の条件下で重合させて、複雑な炭化水素の化合物が生成されることを確認する。

 この重合とは、小さな分子が化学反応によって繰り返し結合し、高分子と呼ばれる大きな分子を形成する反応を指す。

 実験の結果、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素など、自然の石油に含まれる成分が生成された。これにより、石油が無機的に作られるという仮説が検証されている。また、冷却速度を変えた実験では、速度が遅いほど重い炭化水素が多く生成されることが確認された。

 これは、冷却速度が遅いと、分子がゆっくりと再配置される時間が増えるため、単純な炭化水素が結合して複雑で重い液体状の炭化水素(石油に含まれる成分)が生成されると考えられる。

 これらの結果から、上部マントルの環境下では複雑な炭化水素が同時に作られる可能性が示されている。

 日本は世界第6位の海洋資源大国

 石油の無機起源説によれば、地球内部のマントルで生成され自然に湧き上がってくるものだ。中東のような地質的に湧き上がってくる石油を溜める仕組みがあるかどうかが問題なのかもしれない。

 近年日本の周辺海域の海底からは、レアアース泥が採取されたり、メタンハイドレートが検出され、その埋蔵量が相当数のものであることがわかってきた。日本は国土面積は世界で61位で小さいが、海洋面積は世界で6位、海洋体積は世界4位の海洋大国だ。

 日本近海のメタンハイドレート埋蔵量は、天然ガス換算で約12.6兆立方メートル以上と推定され、これは日本の年間天然ガス消費量の100年分以上に相当する。しかも石油非生物起源説によれば、メタンはマントルから無尽蔵に湧いてくる。

 メタンハイドレートは主に南海トラフ(太平洋側)や日本海側に分布し、「燃える氷」として次世代の国産資源として期待されているが、技術的・経済的課題により商業化の調査が続いている。

 これだけの資源が日本にある。日本は資源大国だ。あとは海洋から取り出す技術さえ、確立すればほぼ無尽蔵に湧いてくるエネルギー資源を手に入れることができる。科学技術立国日本の真価が問われている。



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